台湾人を自称する白人

まずは、おもしろい話からはじめよう。1740年に「台湾誌」という著書が出版されたことをみなさんはご存じだろうか?この本は、顔立ちは全く白人であるにもかかわらず、「台湾生まれの台湾人」を自称したジョルジュ・サルマナザール男爵によってかかれた。彼は故国(台湾のこと)でイエズズ会にはいりキリスト教に改宗した後ヨーロッパにやってきた台湾人だと自分を紹介し、たちまちロンドン社交界の有名人になった。当時のヨーロッパでは、極東で海賊行為を行う鄭芝龍、鄭成功父子の脅威のおかげで急に台湾という国が注目されはじめていた。台湾に関する情報はほとんどなかったため人々はサルマナザールの話を信じ、彼は台湾学の権威として数々の著名人と交流した。また、キリスト教に改宗した旨を記した日本発行のパスポートまで所有していた。彼は自分で作成した台湾語を完璧にマスターしており、台湾風の香辛料を使った料理と生肉を常食していた。
ちなみに日本については「東洋の島ジパングでは毎年、一万八千人の若者達が生け贄に捧げられます。台湾では日本語を元にした独特のアルファベットが用いられます。」と説明した。後に彼の嘘は暴露されることになるが、その瞬間まで大半の人々は男爵が台湾人であると信じていた。この話は、嘘の立ち振る舞いが外見としての身体までのみこんで新しい人物像を作り上げてしまったという本当にあった話である。愉快な逸話にもことかかない身体とはいったい何なのか。今回私は、絵画と視線というキーワードをヒントに身体について考えてみることにした。



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