出張でストックホルムへ。北欧は初めてではないが、腰を据えての調査は初めて
である。ヘルシンキ空港で乗り換えて、ひらぺったい大地と海が入り組み、森と湖
が点在する風景を楽しみながら、スウェーデン・アーランダ空港に降り立った。
アーランダ空港からストックホルム中央駅までは、直通の特急電車で約20分。
週末は二人で480SK(スウェーデンクローナ)の特別切符があり、お得である。
同行者と共にこれを買い、中央駅まで車窓の景色を楽しんだ。

海に囲まれたストックホルム。 リッダーホルム教会を対岸から望む。 旧市街にそびえるのは、
主要施設も水辺に立つ。 ハンザ同盟の名残のドイツ教会
水産、鉱物資源にも恵まれ、青息吐息のEUにあって(もっともユーロは導入せず)
比較的経済好調なスウェーデン。かつてはヴァイキングが横行していた北の海も
ハンザ同盟設立以来、交易が盛んになり、海上輸送が重要な役割をはたした。
海に囲まれている点では、日本と似ている。魚や鯨を捕り、船を駆って生活をして
きた歴史が今も息づいており、市庁舎のデザインにもヴァイキング船の意匠がとり
いれられていた。まったくの生魚ではないが、美味しいスモークサーモンが食卓に
上ることも、日本人旅行客にとっては有難い。

市庁舎は、ノーベル賞受賞者を迎えて晩餐をすることで有名。
このきらびやかな部屋はダンスホールになる。ダンスは苦手とか
言ってた日本人受賞者がいましたっけ。
さて、今回の調査対象の一つは、スウェーデンの刑事施設。スウェーデンは、保安
の程度を基準に、最も厳重警備のレベル1から、開放的なレベル3までの刑務所
をもっている。レベル1の刑務所は、警備区画に入るまでに、(空港の身体検査な
んて目じゃないほどの)金属を帯びていないかを隈なくチェックを受けることが必要
で、方々に監視カメラが設置されている、まさに厳重警備施設である。しかし、作業
場までの地下道(各区画は地下道でつながっている)の壁は歴代の受刑者が描
いたという壁画、ポップアートで彩られ、明るい雰囲気も醸し出している。それも
そのはず。理論的には終身刑の受刑者もいるが、平均刑期が4年という日本とは
比べものにならない短期で(しかも、途中から開放的な施設に移ることもある)出ら
れる施設では、社会復帰は比較的身近なものと受け取られているようでもある。
実際、食事担当の受刑者が他の受刑者の意見も聞きつつ、予算の範囲でメニュー
を決めたり、洗濯工場で新たに導入された最新の機械がマティルダと名付けられて
いたり、杓子定規な日本の刑務所とはどこか違うように思われた。
開放的な刑務所になるとその傾向はさらに顕著である。まず監視カメラがない。
運動場を含む広い敷地内を、受刑者は足に腕時計大の電子監視をはめて行き来
することができる。階段や廊下で自由に歩いているすれ違う受刑者に挨拶される。
そのうち一人の受刑者の住む房を見せてもらえることになった。すっきり片づいた
ある意味殺風景な空間であるが、窓が広くとってあり、圧迫感はない。そして、ここ
にも(前の住人が描いたと言っていたが)女性の素描が。電子監視装置の装着感に
ついて聞いてみた。「軽いよ。つけてることを意識しない。」「でも、外せるなら外したく
ない?」「そりゃもちろん。」やはり・・・。
開放型刑務所で受刑者と共に昼食をとった。ビュッフェ形式で好きなものを好きなだけ
盛りつけられる。当日は木曜日でスウェーデンでは、伝統的に「パンケーキの日」。
巨大なパンケーキは魅力的だったが、「ハーフサイズにして」と盛りつけ担当の人
(この人も受刑者)にお願いした。来訪者があったから特別なのか、それとも木曜日が
デザートの出る日なのか、食後には巨大なマジパンケーキが出された。いずれも美味。
ここだけ体験すれば、刑務所に入りたがる人が大量に出るのではないか、とも思える。

厳重警備ながら写真を撮らせてく 食事はヴァイキング形式! パンケーキと豆のスープ
れるのは有難い。 合理的だ。

そして、デザート!珈琲と甘いも 刑務所の居室の壁にイラストが。 簡単に超えられそうな開放刑務所
のは絶対にはずさない 前の住人が残したという。 の塀。というより塀の体をなして
スウェーデン人。 日本では考えられない。 いない。
リベラルな雰囲気と思っていたら、スウェーデンは意外(!)に監視社会である。本場
イギリスほどでないにせよ、街のあちこちに監視カメラは据えてある。また、カード
社会のスウェーデンでは、現金払いよりもカードの使用が一般的で、スーパーや小売店
で小額の買い物をするのにもクレジットカードで支払う人が少なくない(その割に店頭や
駅の切符売場でカードを拒否されることが少なくなく、持ち合わせのない外国人旅行者は
パニックになる!)。カードの磁気情報は、どうやらすぐにどこかへ集積されて、いつの間
にか「誰がどこで何を買ったか」がすぐに当局に把握されているというから、ちょっと怖い
ではないか(まぁ、日本も既にそうかもしれないが)。しかし、スウェーデンの人は、個人
情報保護にさほどやっきになっているようにも見えない。全国民の居所、住所は明らかで、
電話帳を見れば有名人から無名な人まですべて載っているという。名簿業者の介入する
余地もないほどオープンな世界だ。そこまで徹底的に風通しをよくするというのも、一つの
政策かもしれない。
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