生活環境論レポート

天然酵母と国産小麦のパン屋さん

〜おいしくて安全なパンとは〜

 

 このレポートは,私たちが1年次のときに『生活環境論』という授業で、“環境にやさしい人,,企業”というタイトルで課されたレポートです。まだレポートの書き方も知らなかった私たちが,初めて自分の足で調査、インタビューし、試行錯誤しながら作成したとても思い出深いレポートです。また、今回ここに載せるにあたり、住所等少し修正してあります。では、拙い文章ですが、読んでみて下さい。

 

1.はじめに

 私は高校生のころ、毎日パン屋さんに通っていた。そこには「天然酵母と国産小麦のパン」と書かれていたが、とりあえず“からだによさそうだな”と思うくらいで何がいいのか全然分からなかった。2年以上も口にしていながら何も知らなかったことにショックを受け、今回のレポートを機に調べることにし、沖縄県那覇市首里儀保町にあるパン屋さん『らいぶら』を取材してきた。ここでは天然酵母と国産小麦を使用するパンが他のパンとどのように違い、また私たちの身体にどのようにいいのかを店主の平良(たいら)さんのお話と資料に基づき考えていくことにする。

 

2.天然酵母とは

 まず、天然酵母が普通の酵母とどのように違うのか。そもそも酵母というのは自分で作ることが出来るもので、例えばりんごを摺って放置しておくと出てくる泡は発酵している証拠である。そういった自然界に広く存在している食物の酵母菌を自然発生させたものが天然酵母だ。天然酵母の特徴は酵母に出来、不出来があり、いつも安定せず、添加物は一切使用していないことだ。それに比べ、イースト菌は、灰糖蜜を栄養源として培養したもので、扱いやすく、出来上がるパンがいつも安定しているのが特徴である。イースト菌を使用すると、せっかくいい粉を使っても、その味が生きてこない。そこで天然酵母が必要になってくるのだ。ゆっくりと発酵して粉の味を存分に引き出してくれる。歯ごたえがあり、噛めば噛むほど味が出、パン臭さがない。また、酵母はいろいろな食物から作ることが出来るので、発酵する材料によってまったく違った味のパンが焼けるのも魅力だ。らいぶらではお米から作っているそうで、発酵過程はお酒と一緒だが、自然のものなので、温度調節が難しいということだ。

写真1:米から作る天然酵母

天然酵母を使ったパン屋さんが少ないのは、生種から発酵させて酵母を増やし、食べられる状態にするのは難しく、熟成に時間がかかるからである。

 

3.国産小麦とは

 パン作りにおいて、小麦はその味を左右する重要な材料だ。だが、その小麦も他の食料の例に漏れず、そのほとんどをアメリカやカナダからの輸入に頼っている。これらの小麦は輸入するときに必ず農薬を大量に撒くので、身体には良くない(ポストハーベストという)。国産ではポストハーベストの心配がないので安全である。また、輸入品には味があまりないので、味がついている物を好む日本人にはあまり向かない味である。国産小麦は健康の面からいっても味の面からいってもパンに向いているのだ。だが、実状はほとんどが輸入小麦で占められている。なぜかというと、コストがかかる上に国産は量も少ないので店同士で取り合いになってしまうからだ。うどんやラーメンに使用する小麦はたくさんあるが、パン用はわずか数種類(はるゆたか、ナンブ小麦など)しかないというのも理由のひとつと思われる。

 

4.自然のものに対するこだわり

 いろいろ難点も多い天然酵母と国産小麦であるが、このふたつがうまく混ざり合うことでそれぞれの短所をなくし、互いの力を引き出すことになるのだ。例えば、国産小麦は上手く膨らまないためにパンには向かないと言われてきた。だがそれを発酵力のある天然酵母がフォローしてくれるのだ。つまり、発酵力があるので充分に捏ね上げなくてもよく膨らむ。そのため粉の味が生地に残り、味のあるパンに焼きあがるのである。また、このようにして作られたパンは卵を使わずに酵母のみの力で仕上げることが出来るので、アトピーやアレルギーの子供にも安心して食べさせることが出来るのだ(写真2参照)。

   

        写真2:卵、牛乳不使用のパンたち

同じく安心という事で言えば、お店で生産地表示をしていることも挙げられるだろう。どこの国から来たのかも、見えない所でどんな作り方をしているのかも分からないものよりも、自分たちの目の届く場所で無農薬で栽培されたものがいいと思うのではないだろうか。らいぶらでは6種類の小麦を用途によって使い分けている。

写真3:強力粉『はるゆたか』

はるゆたか→食パン、菓子パン、デニッシュ、フランスパンなど多くのパンに使用されている。精製されていて真っ白なパンが出来る。北海道産。

写真4:薄力粉『チホク』

チホク→ケーキ、スコーン等に使用。北海道産。

写真5:全粒粉『はるゆたか』

はるゆたか(全粒粉)ミニ全粒粉、黒パン、スコーン等に使用。強力粉とは違って精製されていないため、健康には一番いいと言われる。北海道産。

写真6:ライ麦粉

ライ麦粉→他の粉のようにさらさらではなく、少し粗い。黒パン、ライ麦パンに使用。北海道産。

写真7:強力粉『ことしゃ豊作』

ことしゃ豊作→ながの産40%、群馬産30%、北海道産30%のブレンド

写真8:薄力粉『シラネ』

シラネ→長野産で、無農薬の小麦。

 そして、お店のパンだけでなく、酵母から自分で作るパンを食べてみたいというお客さんには、平良さんご本人が天然酵母の作り方を教えてくれるそうだ。粉も販売しているので、わざわざ業者に問い合わせなくても粉が手に入るのもうれしい。そうしていちから自分で作るパンは、味や品質は勿論のことだが、買ったパンとはまた違った思い入れがあるだろう。ちなみに平良さんのお話によれば、らいぶらのパンを食べるようになってからお通じが良くなったという方が大分いらっしゃるそうなので、便秘の方にも良いと思われる。

 また、らいぶらではマイバッグ運動も行っている。袋の要らないお客さんには専用のカードにスタンプを押してくれる。一杯になったカードを2枚集めるとらいぶらのオリジナルグッズがもらえるというシステムだ。パンの種類によっては個別包装をしているものもある。衛生面の問題もあるだろうが、ゴミの事を考えるともう少し減らせないものか考える必要がある。

写真9:らいぶらのオリジナルグッズ

 

5.実験

 食パンのよしあしは焼きいろ、味、香り、水分量などのほかに、持った時の重量感によって見分けられる。パンの製造過程では、適正な発酵が行われ、中心部まで充分火がとおったパンは手にしたとき不自然でない軽さになるからである。この実験ではらいぶらの食パンを使って、下図に示す実験をすることにする。

図1:テスト方法

 テストからの判定:パンの容積重を計算する。パンの容積100mlあたりの重さが22〜25g程になっていれば、適正な発酵が行われ、中心部まで充分火の通った良いパンだといえる。実験の結果、

 パンの重さ=50g、容積218ml

となった。そして、

 218ml:50g=100ml:x

の公式が成り立つ。故にx=23gとなり、この事からもらいぶらのパンは良いパンであると言える。

 

6.まとめ

 今回、取材や資料を調べてみて初めて、自分たちの食べている物の怖さを知った。そして私たちが外国から安く大量に食べ物を調達することが、現地の人々の生活や環境を破壊する原因の一つにもなっていることを改めて知らされた。私たちは消費者であり、自分が使うものがどういう物であるかを知る必要があるし、知る権利も持っている。だが、ほとんどがその権利を行使することもなく、高校時代の私のように何も知らずに食べ物を口にしている。平良さんのお話によれば、人間は一生のうちに防腐剤を40kgも食べている計算になるそうだ。その防腐剤を使わないのはいいことなのに、何故大々的に宣伝しないのかという私の問いに平良さんは、「お客さんによっては別にそんな無農薬にこだわらなくてもいいから安いのがいいという人もいる訳で、どれを選ぶかはお客さんの自由だから自分たちはそうやってうちの店を選んでくれたお客さんのためにいい物を作るんです」とおっしゃった。確かにそれは正論である。だが、そのお客さんの中で、いったい何人の人がパンを取り巻く実態について知っているのだろうか。選択の自由は消費者にあるが、何も知らないが故に誤った選択をしていることも多いだろう。そうならないためにもやはり、私たち一人一人がもっと自分の周りのものに対して確かな目をもつことが必要となってくる。今回らいぶらでは店頭で天然酵母や国産小麦について書かれたペーパーを数種類おいていた。店側がこうした消費者教育のために資料を提供してくれるのはとても喜ばしいことである。お客さんがそれを手に取ってみることで、少しでも消費者としての自覚が出てくるのではなかろうかと私は期待している。

 

7.引用・参考文献

 矢野さき子・1987・天然酵母の健康パン・文化出版局

 矢野さき子・1990・おいしくて安全・天然酵母で国産小麦・農山漁村文化協会

 増尾清・西崎慶子・1990・安全をためそう―絵で見る食品テスト・芽ばえ社

 中道順子・1994・天然酵母で作る健康手作りパン・グラフ社

 矢野さき子・1995・天然酵母で作るおやつパン・文化出版局

ある野ある三・1998・発掘! あるある大辞典・関西テレビ出版

 

8.取材先

 天然酵母と国産小麦のパン屋さん『らいぶら』

 営業時間/AM10:00〜PM9:00 定休日/日曜日