|
|
|
・一 般にはマネーサプライが安定的に伸びていれば物価の下落が続くことはない はずであるが、日本では資産価格下落や金融システム問題があって、金融政策 でマネーサプライを制御しにくい状況にある。日本経済の現状は単純なフロー の「デフレ」モデルでは説明できず、さらに金融システムの機能低下を組み込 んだモデルでも不十分であり、資産デフレ、債務デフレ、信用デフレ、さらに 構造変化に伴うコンフィデンス欠如などが組み合わさった状況にある。こうし た状況は、「流動性のわな」の状態とは言えないにしても、通常の金融緩和政 策の波及メカニズムは働きにくい。こうした状況で、調整インフレ論、実質金 利低下を目指すクルーグマンの提案、そしてデフレ下におけるインフレ・ター ゲティング論などが提案されている。いずれも金融政策によってインフレ期待 を作り出すことによってデフレ的状況からの脱却を狙う戦略である。しかし現 状で安定的なインフレ期待をつくろうとしても、金融政策当局が本当にそうし た政策スタンスを採り続けると、国民が信ずるようになることは難しい。中央 銀行にとっても、せいぜい長期的将来にわたっての不確実性の高いインフレ・ リスクをもたらすだけでは、そうした政策を採用することは困難である。従っ て、政策対応としても、金融緩和努力の継続は引き続き重要であるが、金融政 策のみによって対応することは適当でない。日本経済の現在の困難が多様な問 題に起因している限り、政策目的に対応した他の政策手段との組み合わせるこ とにより、経済収縮のスパイラルに陥らないような戦略をとることが不可欠で ある。 |
|
|
|
・12月4日の閣議に今年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。 白書は日本経済が緩やかなデフレの状態にあり、企業の債務負担増など経済全 体にマイナスの影響を与えていると分析。日銀に一段の金融緩和や物価安定の 数値目標設定を求めた。経済成長の足を引っ張る不良債権問題の解決や、規制 緩和など構造改革を進めれば、2%程度の経済成長が可能との展望を示した。 多額の財政赤字を続けるのは難しいと財政運営に警鐘を鳴らしている。 ・白書はデフレについて企業の債務負担を増加させ、実質金利の上昇などを通じ て経済全体にマイナスの影響を与えると指摘。デフレ圧力緩和のため、日銀に 対し一段の量的緩和や物価安定数値目標の設置などを積極的に検討すべきだと 求めた。 |
|
|
|
・日本経済は緩やかなデフレの状態にある。企業の実質債務残高の増加や実質金 利や実質賃金の上昇を通じて、経済全体にマイナスの影響を与えている。現在 は一般物価水準の下落であり、「良いデフレ論」には問題がある。 ・今後検討すべき金融政策は、 (1)長期国債買い切りオペの増額によるさらなる量的緩和 (2)中長期的な物価上昇率の目標を定める「物価安定数値目標」。日銀はデフレ 圧力を和らげるために、さらなる施策を積極的に検討すべき段階にある。 ・輸出の回復、在庫調整の終了などの自律的な回復力、構造改革の効果によっ て、日本経済は2002年度後半にかけて回復への動きがみられるようになる。 企業や消費者の期待成長率が低迷を脱するまでには時間がかかり、当面の回復 力は弱い。 ・米同時テロ事件などにより米国経済の回復が2002年後半以降に遅れる可能性 もある。その影響が世界経済の一層の減速を招く場合、日本の輸出はさらに減 少し、生産・収益・設備投資に悪影響を与えることが懸念される。 ・最近4年間、銀行は巨額の不良債権を最終処理しているが、ほぼ同額の不良債 権が新規に発生している。その結果、不良債権の総額は約30兆円に高止まって いる。不良債権処分損による銀行収益の下押し圧力は今後も続く。 ・不良債権残高は不動産、卸小売り、建設の3業種で約54%を占める。付加価値 額に対する金融債務の比率を1980年代前半の水準まで圧縮するには、3業種 合計で現在196兆円あるネットの金融債務を67兆円程度削減する必要がある。 全産業では70兆円の金融債務の圧縮が必要となり、過剰債務の多くが3業種に 集中している。 ・財政赤字を「循環的」部分と「構造的」部分に分けると8割以上が構造的赤字 財政再建を果たすためには構造的赤字の削減へ積極的な取り組みが必要になる プライマリーバランスで大幅な赤字になっているうえ、現状では名目金利が名 目成長率を上回っている。現在の状態がこのまま続けば、債務残高は拡大し続 け、将来的に我が国財政は破たんする。 |
|
|
|
|
|
|