この本は、神的存在のジョナという人物が、信者的存在のアレック スに少しずつヒントを与え工場の建て直しを行なうという話である 。このように少しずつヒントを与えることにより、自分自身で考え 理解する必要が生じる。また、難しい部分を子供たちのハイキング やジュリーとの会話を用いることで説明されていたので、分かりや すかった。
「企業の目標はお金を儲けることである。」(p95,l3)と言われてみ ればあたりまえのようなことだが、結構見失いがちなことであり、 お金を儲けることと言われても一見その目標に向かっているように 見えて実はまったく逆に事をしているということがある。
例えば、工場では、たえず機械が動いていれば効率が良いように錯 覚しがちだが、目標に沿っていないものを作っても、つまり在庫を 増やしたとしても、それは倉庫を埋めるだけであり、会社の目標で あるお金を儲けることにはつながらないということである。
この本の中では「ボトルネック」という効率がもっとも悪い箇所が 、会社全体の効率を下げていると指摘しボトルネックがどこなのか を探しだし、どのように改善し全体効率を高めるのか、それらを乗 り越えていくプロセスが書いてあった。
工場で行われている生産状況が好ましいものかそうでないかは次の
3つの指標「スループット」「在庫」「作業経費」で把握できる
(p96,l16)とあった。ここでの言葉は従来の概念とは全く違うもの
であり、「スループット」とは生産を通じてお金を生み出す割合で
はなく、販売を通じてお金を生み出す割合だという。(p97)
生産の
効率が向上しても、その販売が順次、生産の割合に対応していなけ
れば、それは単なる在庫でしかないという意味だ。
「在庫」とは販
売しようとする物を購入するために投資した全てのお金を言い、単
なる商品在庫を差すものではない。
「作業経費」は在庫をスループ
ットに変えるために費やすお金のことをいい、単に労働経費を意味
するものではない。
本の中では工場にロボットを導入し生産性が上
がったと言っていたが、現実には部品の在庫が過剰にストックされ
ただけで工場全体の生産生が上がったわけではなかった。しかもロ
ボットの導入コストが作業経費として増えている。つまり、ロボッ
トを導入したことによって売り上げが上がったのか、人件費が削減
できたのか、在庫が減少したのかという現象が伴わなければ、ロボ
ット導入の意味はないのである。
つまり部分的な最適化によって1
部品のコストが下がったとしても、その前後の生産ラインとの効率
が合わなければ、単なる過剰在庫のストックのために在庫管理のた
の人件費と、ロボット導入のためのコストが増えただけで全体的な
生産効率の向上には役立っていないことになるというのだ。
重要な
ことは「スループット」「在庫」「作業経費」の3つの指標には全
てお金が絡んでいるということだ。(p115,l15) 工場の生産がお
金儲けを目的としているのであれば、この3つは常に収益向上のた
めに費やされるべきである。各生産部署の生産効率が最も適正に準
備されたときに在庫がなくなり、納期が守られ、利益が得られる訳
である。生産性向上のポイントは「改善」だけではなく「プロセス
の管理」の中にある。現状の生産管理のボトルネックを発見したと
きその具体的な対策が明確に見えてくる。従来の部分的なコストダ
ウンだけを評価する指標にはすでに意味がなく、全体的なスループ
ットの向上を優先し、最適化したシステムから在庫が減少し、経費
が削減でき、営業的な納期の短縮すらも可能にする手法である。
現実に起こっていることは一つであるのに、それを数字で表すと計 算方法によりまったく違ったように見えてしまうことである。つま り、数字だけで現状を把握することは危険だということである。
このように工場の効率を上げるために行なった一つ一つのこともと ても大切なことであるが、それと同時に従業員たちが一丸となり、 チームの一員だという事を実感したことにより得られたものもかな り大きいと思う。この会社の雰囲気が一番大切だと思った。
この本の後半の方では、今回行なってきたことをステップだてよう としているが、この事はもともと無理なことであり、意味のないこ となのだと思う。そもそもステップだてられるぐらいならばそんな に苦労なく簡単にできてしまうことであり、それは問題にはならな いことのはずである。理論付けようとするのならば、それよりも『 何を変える』、『何に変える』、『どうやって変える』といったよ うな概念を持っていることが必要だと思う。一度改善できたもので も、それは永遠の仕組みではなく、環境や状況によってそのたびに 変わるからである。今回がそうであっても、次回も同じ方法で解決 することがほとんどの場合でできないからである。ここにマネージ ャーの質が問われるのだと思う。