■MSc in Policy Studies のコース概要

 

McEwan Hall (University of Edinburgh)

 

 私の在籍するエディンバラ大学 Graduate School of Social and Political Science のMSc in Policy Studies についてご紹介します。ただし、卒業後どのようなキャリアアップに結びつくのかという質問には私もわかっていないのでお答えできません。悪しからず。

 

はじめに − エディンバラ大学はイングランド的か?

 スコットランドにおけるエディンバラ大学とSt. Andrews大学のイメージと言えば、「snobby place full of tweedy people with English accents」 (5 Oct, 2002のThe Independentの6面の記事) なのだそうです。確かに、法学部のあるOld College の正門の威厳を前にすると、そんなイメージが湧くのも少し頷けます。確かに大学生は訛りのない英語を話します(注参照)。

 しかし、ここはスコットランド。イングランドとは異なった視点が随所に見られます。

 

授業の雰囲気

 しかし、残念ながら、私の所属するMSc in Policy Studiesでは、あまりスコットランドらしさを感じることはありません。クラスメイトにScottish Executive に勤めているPart Time の人がいることぐらいでしょうか。どちらかといえば、留学生の多さ(1/3以上を占める)のため、国際性に富んだ雰囲気があります(アメリカ人、カナダ人、ギリシャ人、中国人、日本人)(いずれも2002/3年度時点)。

 授業は、少人数のため、大変うち解けた雰囲気です。選択科目によっては、受講者わずか4名などというものもあり、そうなると、授業全部がチュートリアルみたいなものです。また、自主性をとても重視してくれており、エッセイ(その履修科目の評点や合否が決まるレポート)は幅広い分野からかなり自由に選択できますし、こまめに期限を区切った小レポートを課されたりするようなこともありません(サボれるという意味ではないですが、体調を崩したりして授業の準備が十分できない時などには本当に助かります)。10週目(最後の週)の授業後には、先生が学生をパブやレストランに誘ってくれて、みんなで談話をするケースが多いです(ただし、10週目はエッセイの締め切りでもあるので、ここでリラックスしてお酒を飲みたければ、早めにエッセイを仕上げるべし。)。他の大学に留学している友人・知人から伝わってくる話と比較すると、かなりゆったりとしています。

 学生のバックグラウンドはさまざまで、「Politics」という人はなぜか一人もいません。スコットランド人学生やヨーロッパからの留学生は、キャリアアップの動機からこのコースを受講している人が多いように思えますが、全員がそうとも言えません。なお、社会人あるいは社会人経験者比率が大変高いのもこのコースの特色です。必修科目はほとんどが夕方のコマの開講ですので、夕暮れの早い冬は、夜学に通っているような感じです。

速報:2004/5年度から、1タームが12週となります。現行の10週1ターム制では、授業が詰め込みすぎ(1週目にイントロダクション、10週目にテストがある場合、実質8週しかありません。)の感がありましたが、かなり改善されると思います。

 

授業内容

(各科目の内容については、説明を順次、整備していく予定です。お急ぎの方はメール下さい。)

 

MSc in Policy Studiesは、一年間の修士課程で、以下のような内容を修めます。

必修科目

準必修科目(このうちの少なくとも1科目)

選択科目(準必修科目と合わせて4科目)(2003/4年度開講科目を記します。)

 

私の時間割(ご参考になるのかどうか……)

 

2002/3年度 秋学期

  Mon Tue Wed Thu Fri
9:00〜11:00 Data Collecion   Data Analysis
(9:30〜11:00)
  Data Analysis
(9:30〜11:00)
13:00〜14:00     Data Collection
14:00〜15:00 Data Analysis
14:00〜15:00    
16:00〜18:00 16:30〜18:00
English
Management and
Budgeting in the Public Sector
(2003/4は開講されません)
Principle and Politics
of Policies

 

2002/3年度 春学期

  Mon Tue Wed Thu Fri
9:00〜11:00          
11:00〜13:00 Survey Methods and Data
14:00〜16:00 Advanced Quantitative Methods
in Social Science
16:00〜18:00   Understanding Public Policy
in OECD Countries
Economics and Resourcing
of Public Policy
18:30〜20:30 Russian
(一般公開講座。お年寄りが多いです。)
   

(火曜日の3科目は任意で受講していて、アセスメントはありません。)

 

2003/4年度 秋学期 (MSc by Res)

  Mon Tue Wed Thu Fri
9:00〜10:00     ボランティア活動   Auditing
(学部開講科目)
10:00〜11:00 French
(語学学校)
11:00〜12:00  
12:00〜13:00  
13:15〜14:30 Doctoral Seminar / Research Workshop   14:00〜15:00
Seminars
15:00〜16:00 友人との自主勉強会  
16:00〜18:00 Law and Public Policy The Social Division of Welfare
18:30〜19:00 Russian Intermediate
(一般公開講座。お年寄りが多いです。)
 
19:00〜20:30 Latin Beginner
(一般公開講座)

(Law and Public Policy と The Social Division of Welfare 以外は任意で受講していてアセスメントはありません。道楽をしすぎかも?土・日すべてが、語学や月・火の予習につぶれちゃうんですよねぇ。)
注:通常は、Data Analysis か Data Collection の履修が必要ですが、昨年履修したのでExemptしてもらいました。

 

2003/4年度 春学期 (MSc by Res)

 

  Mon Tue Wed Thu Fri Sat
9:00〜10:00     Public Sector Accouting (学部開講科目。とはいえ4年生なのでとっても利発です。)   Auditing
(学部開講科目)Week 1〜5
9:00〜13:00
ボランティア活動
10:00〜11:00 French
(語学学校)Week 1〜5
11:00〜12:00   10:00〜
担当教官との meeting (隔週程度)
14:00〜15:30 Doctoral Seminar / Research Workshop 13:45〜14:45
Research Design
Seminars  
15:00〜16:00      
16:00〜17:00 Ethical and Political Issues in Social Research
(ただし研究日程上、Week 5 以降履修取りやめ)
Research Design Workshop
17:00〜18:00  
19:00〜20:30   Latin Beginner
(一般公開講座)

 

これらをご覧になって「スカスカの時間割ではないか?」とお感じになった方へ:
ご感想はごもっともです。自主性が重んじられたカリキュラムであることは事実です。とはいえ、予復習に平均1科目あたり半日を費やした上に、個人的に興味を持っているテーマを継続的に勉強していたら余暇はなかろうということもまた事実です。 


講義紹介(私見が不可避的に入っていますのでご了承下さい。)

●Principle and Politics of Policies

 イギリスの「Public Policy」を学ぶ入り口として非常によいカリキュラム構成になっていると思いました(他大学のカリキュラムは存じませんので比較できません。悪しからず)。各週の講義内容は以下のとおりです。

●Economics and Resourcing of Public Policy

 関心が薄かったため、肯定的なコメントを書くのが正直のところ難しいのですが、各週の内容は以下のとおりです。「Economics」という名称に反して、厚生経済学やマクロ経済学の細部に立ち入って授業が行われるわけではなく、あくまで概論です。とはいえ必修科目です。

●Research Skill - Data Collecion

 他学科との合同授業(大部屋での講義)です。社会学関係のフィールド調査をなさる方には非常に有用な授業と思いますが、文献調査を主とする分野の方には実利が少ないかと思います。Data Collection か Data Analysis の少なくとも一科目が必修です。いずれを取るかは、負の葛藤かも?

 関係分野の方にとっては有益な授業に違いありませんので、もしご興味があれば、個人的にReading List をメールでお送りします(さすがにホームページにアップロードするのは気が引けますので……)。ちなみに毎週の内容は:

 これに加え、数回の workshop (少人数のディスカッション)があります。

●Research skill - Data Analysis

 統計学の素養があれば、困難を感じることはおそらくありません(ただし一般的な基礎統計学とは異なった手法が見受けられます。)。この講義は、「SPSS」という統計ソフトを用いて、基礎的な分析を行うことができるようになるためのものです。授業は週2回、加えて、週一回の実習(統計ソフトを実際に操作して演習問題を解く)があります。

 ※理論面を含め、実用レベルまで学習するのであれば、Research コース向け開講科目「Advanced Quantitative Methods in Social Science」(春学期)に許可を得て参加するのも一考かと思われます。ただし、この科目は、格段に難易度が上がります(2002/3年度:受講者は10人程度。PhD CandidateやManagement Schoolのセンセイ方など……。)。これは相当にchallengingで素晴らしいカリキュラムだと思うのですが、そもそも Quantitative Method の後進国イギリスに来て学習する意義はと単刀直入に問われると返答に窮しますねぇ。

●The Social Division of Welfare

 コースのタイトルである「Social Division of Welfare」とは、Richard Titmuss (1955) の「The Social Division of Welfare: Some Reflections on the Search for Equity」 から採られています。イギリスのSocial Security を学ぶ上では、一般的な学習構成とは言えませんが、非常にお薦めできます。というのも、イギリスの「Social Security」の概念は、「現金給付」という考え方に傾斜しており、我々日本人の感覚からかなりずれているからです。その点、この授業は、イギリスの「Welfare」をわかりやすく再構成した形で、我々に提示してくれます。
 講師は、Prof. Adrian Sinfield。エディンバラ大学の教授を長年務められた方で、現在は退職なさり非常勤です。未だ若々しい感じを保っていらっしゃります。授業は大変わかりやすいです。予習に必須のマテリアルは親切に配布してもらえます。

●Law and Public Policy

 今まで受講した中で最も難解!「Lawの前提知識は不要」とは言われていたものの、さすがに、イギリス(に加えてスコットランド)の法体系・社会制度・司法制度のことを知らずして受講するのは骨が折れます。真面目に受講すると法学部図書館に日参する羽目になります。私は、2003/4 に MSc by Res の単位として受講して苦戦しています。「英語ならある程度聞き取れる」という方に:法律英語満載でよく分からず自信喪失すること請け合いです。

 授業構成をご覧になってお分かりのように、Socio-Legal study の科目です。リーディングリストが欲しい方は、ご連絡下さい。

 この授業を受講なさる方には、Scots Law のタームが分からず苦戦することがないよう、研究社リーダーズ英和辞典を持参なさることをお薦めします。最低でも、Concise Scots Dictionary (ISBN 1 902930-01-0 出版社 Polygon at Edinburgh £14.99) ぐらいは手元にあった方がストレスが減るでしょう。(この授業は特にLawの授業ではありませんが、ネイティブ(=スコットランド人)の日常常識レベルのScots Lawの法的センスが要求されるのです。念のため。)

●Research Design

 私にとっては久々の大教室でのマスプロ授業。とはいえ、これがなかなか面白い授業なのです。Prof. Adler と Prof. Anderson によるちょうど1時間の短時間講義です。うち、Adler 先生の講義は、上記の Law and Public Policy の知識があるか、 native 以上の語学力(&イギリス社会及びスコットランドに対する理解)がないと、100%の理解は困難です。2人の担当教官が対照的な30分づつの講義をしてくれますので、毎回、何らかの implication が得られることは間違いないでしょう。なお、このほかに、毎週1時間づつの workshop があります。

 Essay (評点対象の課題)は、「自分の dissertation の research design のstrengths / weaknesses について4,000 word で述べよ」というものです。この部分は、ある程度は dissertation の methodology のセクションに転用できます。
 (私のように、早くから担当教官と design を打ち合わせてしまって、その design がこの授業の内容と相容れず苦戦しそうな人もいるとは思いますが……。余談ですが、Policy Studies は、エディンバラ大学においてはマイナリティーに属します。Social Science 全体を対象しているため即効性はないものの、「長い研究人生のいつかはきっと役に立つだろう」ぐらいの大らかな気持ちで受講なさることをお薦めします。)


●Management and Budgeting in the Public Sector (隔年 2004/5年度開講科目)

 「budgeting」をタイトルに冠したコースは知る限り、ほとんどイギリス内にありません。私は日本からはるばるエディンバラまでこの科目を取りに来たといっても過言ではありません。ところが、上記の必修科目「Principles and Politics of Policy」と並行して注力するのはなかなか難しいのです。とはいえ、Public Management の研究をなさる方には非常によい科目と思いますので、ぜひチャレンジを。
 この科目については、詳説させて頂きます。

Week 1: The New Public Management

Week 2: Public Sector Management contributions and critiques

Week 3: Quality, Marketing and Business Planning in the Public Sector

Week 4: The budgetary process and Central Budget Agencies

Week 5: Budgeting and Policy Planning in Local Government

Week 6: Contractorisation and Best Value

Week 7: Personal Management and recruit in public services

Week 8: Devolved Budgeting and the imposition of managerial frameworks upon professionals

Week 9: Models of competence and executive leadership

Week 10: Seminar based upon student choice
 →The agency model as a solusion to public management
  (2002/3は私のリクエストでこの題材にしてもらいました。)

※もう一つの隔年開講科目(Public Policy in Scotland)でも、この科目のエスプリを感じることはできます。この科目が開講されない年度の場合、先生に reading list をもらって、自習するのもよいと思います。(私にメールを下さってもいいですが……。)Public Policy in Scotland は春学期開講科目なので、じっくり勉強できて却っていいかもしれませんね。


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