外典・偽典を研究する目的
聖書は1600年にわたって書かれたと一言で言われますが、
ヘブライ語聖書がまず1100年間近くかかって書き終えられ、
450年以上の空白の後にギリシャ語の部分が50年ほどの間に
集中的に書き記された特異な本でもあります。
その空白期間にはたくさんのいわゆる外典、偽典といわれる
神の霊感を受けていない書物が書き記されました。
その内容から霊的な益を得ることはできないものも多いですが、1世紀に
生活していたユダヤ人がどんな歴史的環境のもとに置かれ
どんな見方や習慣を持っていたかを知る上でこれらの文書は
欠かせないものとなっています。そのようなわけでこのサイトでの
これらの書物の解説は1世紀の社会を理解するための助けとして
おもに執筆されています。
マカベア時代のユダヤ人に関連して
ギリシャ人の支配下に置かれていたユダヤ人はヘレニズム化による
大きな影響を受けていましたが、アンティオコス4世の時代には
異教の崇拝が強要され聖所が汚される事態にまで追い込まれ、こうして
マカベア家による反抗が始まりました。第一マカベア書、第二マカベア書は
その抗争を描いたものです。ユディト書などの幾つかの書はこの時期に
民族意識の高揚を願って記されたものと思われます。
エノク書の幻はこの時代の背教したユダヤ人に対する裁きへの期待が
背景にあると考えられています。
やがてユダヤ人は独立を果たし民族意識が高まっていく中でメシアの登場を
期待したものがシビュラの託宣3です。しかしながらこの独立運動の中で
祭司職は支配者たちによって奪われ腐敗していき、反対勢力としての
パリサイ人や、腐敗を避けて荒野で生活した人々も登場し、後者により
死海文書も編纂されていきます。1世紀の宗教指導者たちの様々なグループが
形成されていった時期という意味で、イエスの時代の背景を知るためには
この時代を理解しておくことも肝要といえるでしょう。やがてユダヤ人は独立を
失いローマに征服されていきますが、その時期にメシアへの期待を
うたったものにソロモンの詩編があります。
エジプトのユダヤ人に関連して
プトレマイオス王朝の時代から多くのユダヤ人はアレクサンドリアに住む
ようになりました。プトレマイオス2世のもとで聖書のギリシャ語セプトゥアギンタ訳が
編纂されていきます。この伝承を扱っているのがアリステアスの手紙です。
エジプトのユダヤ人はギリシャ哲学の影響を多いに受けていきましたが、そのことは
知恵の書や第四マカベア書などに明らかにみられ、ユダヤ人の中に魂の不滅の
思想などが取り入れられていきました。一方ギリシャ人やエジプト人の偶像の使用
に関してはユダヤ人は確固とした立場を取りつづけたことも同時に知ることができます。
上記の知恵の書に加え、エレミヤの手紙やダニエル書付記(ベルと竜)などは
そのことを明確に示しています。
西暦70年以降のユダヤ人
西暦70年にエルサレムが滅ぼされるとなぜ神はこのようなことを許されるのか
という疑問がユダヤ人にとっては生じ、また諸国民を滅ぼすメシアへの期待が
持たれます。このよような書物に第二バルク書や第四エズラ書(第二エスドラス書)
などがあげられます。すでに新約時代に入っているわけですが、内容の便宜上
これらの書物は旧約偽典に分類されています。