エノク書
| 1−36 | Watchers (1−5 神の裁き:導入部) (6−16:脱天使の物語) (17−36:エノクの旅) |
前3世紀 |
| 72−82 | Astronomical Book (天体の動きについて) |
前3世紀 |
| 83−90 | Dreams (動物の幻) |
前2世紀 |
| 91−105 | エノクの説話 (91,93:十週にわたる人類の歴史) |
前1世紀 |
| 37−71 | 人の子の登場 | 後1世紀 |
エノク書はおもに前3世紀から前1世紀にかけての書物が集まったものであるが
共通する主題として神が(マカベア期のような)背教を裁かれることや
義人が報われることをエノクが語るという形式となっています。なおエノクが天に
上ったという伝承は聖書自体が述べているものではありません。(Jn3:13)
神の裁きについて:神が邪悪な世を裁かれるという主題が冒頭の1章で語られ
ますが、ユダは「見よ、彼は1万人の聖者を引き連れてこられた。それは彼らに
裁きを行なうためである。彼は不敬虔な者たちを滅ぼし、すべての肉なる者、
すなわち罪人たちと不敬虔な者たちが彼に対して働いたいっさいの不義を
告発されるであろう。」というエノクによる断罪の言葉を引用しています。(Jude14,15)
83−90章のかけての幻において白い羊(イスラエル)から生え出てくる角は
忠実なユダス・マカバイオスを表わすと考えられています。
神はやがてその時代にヘレニズム化により背教していった人々を裁かれる
ことが予期されています。また91,93章では人類の歴史を10週に分けて
いますが、背教の時代が終わり神が悪を裁かれる時代が語られています。
91−105章ではエノクの名によってそのような罪人たちへの訓戒が
なされています。
ゲヘナについて:17−36章にかけてエノクが見て回った事柄の中には死者は
3つに類別され、悪人がゲヘナで苦しむというものもあり(22,26−27章)、
邪悪な人の死後の責め苦に関する教えを一部のユダヤ人は形成していった
ことがわかるでしょう。22章では死者が3つに分類され悪人には「悲痛が永遠に
ふりかかり、彼らの魂には復讐がふりかかる」とされています。(22:11)
彼らは「義人たちに対する永遠の見世物」なのです。(27:3)(Ro6:23 と比較)
(罪を犯したみ使いたちも「荒涼としたものすごいところ」(18:12)にいて
将来断ち滅ぼされる日を待っているといいます。(19章)(Jude6 と比較))
102−104章では最終的な裁きのときが描写され、罪人たちは「燃えさかる炎の
裁き」にはいりそれは永遠に続くとされています。(103:8)
ギリシャ語聖書中のはゲヘナという語が12回登場しますが
それが何を意味するかはこのような外典文書ではなく、正典自体が 何と述べて
いるかにしたがって注意深く考慮されなければならないといえるでしょう。
悪の原因について:エノク書の6−16章ではノアの洪水の際不忠実になっていった
み使いたちのことが詳しく語られていますが、それが人間と結婚して巨人たちを
生み出していった者たちであることが明確に語られています。
人間の罪や悪の原因が悪霊にあることをユダヤ人たちは理解していたといえるかも
しれません。
(参考文献)Dictionary of New Testament Background, IVP、313-317