Ovid
               オウィディウス(前43−後17頃)

「変身物語」:創造、黄金時代、大洪水についての神話
「愛の技法」:ローマ時代の円形劇場は不道徳の温床となっていました。

創造神話:世界の神話には創世記の創造の記述を反映したものがいろいろありますが
オウィディウスが伝えるローマの神話もその1つです。それによれば最初
「地は固まっておらず・・・どのものにも固有の形が(ありませんでした
)」
また大気には最初光がなかったといいます。
やがて大地と海は引き離され、濃密な大気と澄んだ天空が分かたれました。
海は魚たちの、陸は獣たちの、大気は鳥たちの住まいとなり、それから人間がつくられます。
神プロメテウスは大地の土くれを雨水と混ぜ合わせ、神々の姿に似せて人を
こねあげたといいます。


最初の黄金時代について
:人類が最初は問題が何もない幸福な生活を送っていたことは
様々な神話によって伝えられていきました。ギリシャではヘシオドスがそのことについて
語っていましたが、そのローマ版がオウィディウスの「変身物語」において語られています。
それによると最初の時代には「懲罰者もいずに法律もなくおのずから信実と正義が
守られていた」といいます。兵士も不要で、大地はおのずから必要なものすべてを与えて
いました。人々はひとりでに出来る食べ物に満足していました。
これらは創世記に書かれたエデンの園の状態を思い起こさせるものとなっています。

大洪水について:しかしそれに続いた時代は銀の時代、銅の時代、鉄の時代と
しだいに悪くなっていったことをオウィディウスは述べています。その時代には
「あらゆる悪行が押し寄せ」「暴力と忌まわしい所有欲がやってきました」
これは創世記6章の暴虐に満ちたノアの時代を思わせるような記述です。
オウィディウスは巨人族が「神々をあなどり、野蛮な殺戮を好んで暴力を振るった」
ことについても言及しています。そしてやがて神は大洪水を起こしたので
一面が海になったといわれています。

ローマの不道徳について:オウィディウスは恋の詩人として知られ多くの都会風の恋愛詩を
残していますが、アウグストゥス治世下の道徳事情をよく知ることができます。
「愛の技法」によれば円形劇場はとりわけ不道徳の相手を探す格好の場所となっていました。
「特に円形劇場で獲物狩りをしてみることだ。」また「一度だけ感触を楽しんでみようという相手にも、
君は会うことができるだろう。」と言われています。ですからオウィディウスが
「あのような場所は、恥を知る貞淑な女性には害がある。」と述べるとおりクリスチャンにとって
円形劇場は行くべき場所ではなかったといえるでしょう。
また戦車競争などの見物の機会も女性の隣りに座って愛をもてあそぶ格好の機会となっていました。
ですから初期クリスチャンはそのような娯楽施設に行くことを警戒する必要がありました。

原典の抜粋

最初の黄金時代:良心が働いていた

The law of Man was written in his breast:
No suppliant crowds before the judge appear'd,
No court erected yet, nor cause was heard:
But all was safe, for conscience was their guard.

最初の黄金時代:犯罪がなかった

No walls were yet; nor fence, nor mote, nor mound,
Nor drum was heard, nor trumpet's angry sound:
Nor swords were forg'd; but void of care and crime,

終わりの日:家の者が敵となる

The son-in-law pursues the father's life;
The wife her husband murders, he the wife.
The step-dame poyson for the son prepares;
The son inquires into his father's years.