Vergil
ウェルギリウス(前70〜前19)
「アエネーイス」:トロイアの武将アエネーイスが旅をしてイタリアに達しローマを建国する話
「牧歌],「農耕詩」:田園生活をうたった詩集と農事詩
ローマによる黄金時代について:「アエネーイス」はローマがギリシャの正当な後継者である
ことを示すためにつくられた物語で、ローマ人こそ「世界の支配者」で「限りのない支配を
与えられた」ことを宣言しています。(Aened1.278ff)
アウグストゥスは「神の子」であるとされ「黄金に輝く世紀を復活させる」と期待されました。
(6.793)それまで戦乱が続いてきましたが、アウグストゥスにより「戦乱はおさまり」、
戦時に開かれるヤヌスの門が閉じられるであろうと期待されました。(1.280)
「農耕詩」の第2巻の中でもあり余るほどの果実を産出する理想的な時代への
期待が述べられています。(2.517-527)アウグストゥスによってもたらされたローマの平和は
キリスト教が広まる上でも重要な要素となりました。
メシアの預言?:「牧歌」の第4歌は最良の時代が「天から遣わされる新たな血筋」によって
もたらされ、「過去の罪過が消し去られる」ことや、「牛馬がライオンを恐れない」といった
預言までなされているために、メシアの預言ではないかといわれることがあります。
(Isa11:6-9)しかしこの歌が「シチリアの女神」に宛てられていることや、その王国が
「サトゥルヌスの王国」といわれ、産まれてくる男子が「ユピテルの裔」といわれていることは
そのような説明に無理があることをはっきり示しているといえるでしょう。これが誰のことを
預言して述べたものであれ、ここでもやはりウェルギリウスはローマによる最良の時代の
到来を願っているといえるでしょう。
カエサルの神格化について:西暦前44年に暗殺されたカエサルは元老院によって神であると
宣言されて祭られますが、「農耕詩」第1巻は「おおカエサルよ、やがてあなたが神々の集い
でいかなる席に着かれるのかは知らぬ」と述べて、その神格化に言及しています。(1.24)
「牧歌」第5歌の「天国の入り口に立つダフニス」も実はカエサルを意識してつくられたと
考えられています。
天災について:天災(Acts of God)とは神の業であるというのが古来からの通念ですが
「農耕詩」第1巻はカエサルの暗殺後の日蝕に言及しつつそのような自然現象を神々の
怒りとして捉えています。太陽は暴動が迫っていることや、戦争が勃発しようとしていることを
人間に教えるといいます。シチリアのエトナ山の噴火やゲルマニアの大地震、
イタリアのボー川の氾濫などもカエサルの暗殺に対する神々の怒りとみなされました。
(1.463-496)