知恵の書
             The Wisdom of Solomon

1−6  :不滅性という賜物
7−9  :知恵を願うソロモンの祈り
10−12:イスラエルの歴史にみる知恵
13−15:自然崇拝、動物崇拝の愚かさ
16−19:十の災い・結び

この書は前1世紀頃にエジプトで書かれたものと考えられますが、
当時のユダヤ人がいかにギリシャ思想の影響を強く受けていたかを
はっきりと示すものとなっています。一方でエジプト人の動物崇拝は激しく
非難されており、偶像崇拝を非とする点ではユダヤ人が確固とした
立場を取りつづけたことを明確に裏付けています。

魂の不滅について:知恵の書によれば神に従う人の魂は神によって
守られ、「不滅への大いなる希望」があるとされています。(3:4)
エノクの魂は天に取り去られたことになっています。(4:11−14)
「神の掟を守ることは不滅を保証する」とされており(6:18)、
魂の不滅に関するギリシャ思想が取り入れられていることをはっきりと
観察できます。また神を信じない者は死者の中で永遠に恥を受け
断罪されることになるとされており、地獄についての教えもみられます。
(4:16−20)

四元徳について:プラトンは知恵、勇気、節制、公正を徳であるとみなしましたが、
この4つ(四元徳)がギリシャ人にとっての基本的な徳となりました。
この4つの徳という考え方はギリシャ支配下に入ったユダヤ人にも大きな影響を与え
外典の知恵の書でも言及されています。「知恵こそ働いて徳を得させるのだ。
すなわち節制と賢明、正義と勇気の徳を、知恵は教えるのである。」(8:7)という
部分には明らかなプラトンの思想の影響がみられます。

自然崇拝を否とした:上記のようにユダヤ人は多くのギリシャ思想を取り入れて
いったことがわかりますが、しかしそれに反対の立場をはっきりと表明した分野も
あります。ストア派の教えは自然そのものをいわば神として崇拝していましたが
その愚かさが13章で糾弾されています。
神を知らない人は、目に見えるものを通して神を知ることができず、
作品を前にして作者を知ることができていないといわれます。(13:1)
かえって彼らは火、空気、水などを神々とみなしているのです。(13:2)
(四元素説がここで意識されているかもしれません。)
造られたものの偉大さをみれば造った方を認めることができるはずですから
(13:5)彼らは弁解できません。(13:8)(Ro1:20 と比較)

動物崇拝の愚かさ:「最も忌まわしい動物を彼らは拝む」(15:18)
エジプト人の行なってきた偶像崇拝の特徴である動物崇拝の愚かさが
糾弾されています。職人が燃えるに過ぎない材料を用いて像をつくって
いく様子がイザヤ書同様に語られていきます。(Isa44:9-20)
偶像崇拝の結果は流血、盗み、堕落、性の倒錯、姦淫であるといい
ローマ人への手紙に述べられているのと同様な結果が描写されています。
Ro1:26-31)