授業で行なっていること

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2001年度、東京外国語大学で行なっている授業のあらましを参考のために述べておきましょう。このページは、学内用の資料にもとづいた内容のものとなっています。


img 担当教官名鈴木 聡(東京外国語大学外国語学部総合文化講座[欧米第一課程・英語])

img 教官の専門分野:批評理論・文化理論・アングロ=アイリッシュ文学

img 授業ではなにが行なわれるのか
 文化研究の方法の可能性を考察します。ひとつの手がかりとしては、既存の研究の理論的、方法論的枠組みを参照し、それに批判的検討を加えることが考えられるので、大衆文化にたいするアプローチのいくつかをひとまず見ておくことにします。これは主に講義のほうで押さえておくべき初歩的手順なので、その授業内容を例として取りあげることにしましょう。今年度前期においては、Jennifer Robertson, Takarazuka: Sexual Politics and Popular Culture in Modern Japan(邦訳題『踊る帝国主義――宝塚をめぐるセクシュアルポリティクスと大衆文化』)とPaul Willis, Learning to Labour: How Working Class Kids Get Working Class Jobs(邦訳題『ハマータウンの野郎ども――学校への反抗 労働への順応』)を中心的テクストとしました。
 前者が文化人類学という立脚点にもとづくものであり、後者がカルチュラル・スタディーズ的な問題意識に則したものであるという相違はあるものの、両者には民族誌的記述方法への着目という共通性を認めることができます。このような契機からさらに進んで、民族誌ならびに記述そのもののもつ問題性をめぐる省察へと発展させることが可能となるでしょう。また、主流派の文化にたいする反応として、またときには反撥として、サブカルチャーなり対抗文化なりが形成されてゆく経緯もある程度明らかになってきたのではないかと思われます。
 つぎの段階においては、受講者の関心に応じて、具体的な文化現象の記述ならびに説明・分析を行なうという実践的試みが考えられます。その場合にあっては、当然のことながら、既存の理論の限界性をじゅうぶんに把握したうえで、独自の理論の構築をめざすということが欠かせなくなることでしょう。取りあげてみたい研究対象としては、フットボール(サッカー)のファン、サポーター、フーリガンをめぐる言説があります。また、受講者各自がさらに研究を進めようとする場合には、この授業で重点をおいている大衆文化論から離れて、記述行為と記述者に必然的につきまとう危うさ、曖昧さをフィクションもしくは文学的テクストの分析に敷衍してみることも可能でしょう。
 授業においては、教官が概括的な説明・解説を行なういっぽうで、学生諸君には、テクストの一部を要約的に紹介し、コメントを加えてもらうことになります。その後、実り多いディスカッションを繰り広げることができれば幸いなのですが、そのさいに授業内容、授業であつかう研究対象そのものにたいする無関心(というよりも、あらゆる知的事象にたいする無関心)を平然と公言する学生がいることは、きわめて嘆かわしい事態といわなければなりません。あらゆる授業においてそうであるように、この授業においても、知的好奇心、探求心旺盛で、柔軟な思考を行なえる学生の受講を望みます。
 以上は講義の例ですが、演習においては受講者がさらに自主的かつ具体的に研究計画を呈示することが求められます。ある種のフィールドワークなども考慮に入れつつ、独創的な研究対象と調査方法を提案してくれることが望ましいのですが、あまりはかばかしい成果が挙げられていないのが現状です。

img 卒業論文・卒業研究題目の例
 学生が既存の学問的因襲にとらわれることないユニークかつオリジナルな研究テーマを呈示してくれることを期待しております。一例としては、『ワールド・カップと国際政治・国際文化』、『ファンの言説――テクストからサブテクストへ』、『比較の方法にもとづく階級意識の分析』、『1920年代、1930年代における大衆文化の諸相』といったものが考えられます。

img なにを学ぶことができるのか
 20世紀文化、微物研究(micrology)、大衆文化論

img 履修についての留意点
 受講者が大衆文化にかかわるさまざまの事象に貪欲な関心をもち、調査、知識獲得、情報検索といったことにかかわる能力を有していることを前提としつつ、授業は進められることになります。教官の興味の範囲は講義その他の場で示されていると思われるので、宝塚、フットボール(サッカー)、映画、ゲームなどについて、なんの知識もないとかなんの関心もないという学生が履修を申し出ることがないよう切に希望します。
 3年次以降の授業ではかなり理論的な議論が中心となってくるので、もっとも基本的な知識を得ておく必要のある学生、2年次まで担当教官の授業を受講したことのない学生は、単位と関係なく、1・2年生のために開講されている地域基礎の授業を聴講することが必要です。


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