理学療法とは

 理学療法とは,英語でPhysiotheapy(英国)またはPhysical Therapy(アメリカ合衆国)と書きます.Physio-またはPhysicalとは,「物理的」と「身体(肉体)的」という2つの意味をもっています.

 ここでいう「物理的」とは,自然界に存在する物理的資源を医学・医療で利用することを意味します.それらは,水(水泳プールや温泉などを利用する水治療),光(赤外線やレーザー線などを利用する光線治療),温熱(温水や極超短波などを利用する温熱療法),寒冷(アイスパックや冷却装置などを利用する寒冷療法),電気(電気刺激装置などを利用する電気療法),外力(手や機械器具などを利用するマッサージや徒手療法)などです.それらの物理的刺激を用いた理学療法を物理療法ともいいます.

 また,ここでいう「身体(肉体)的」とは,身体運動のことであり,寝返りをしたり,膝立ちをしたり,立ち上がったり,歩いたり,走ったり,腕を使いものを作ったり,などのすべての日常生活に必要な動作のことをいいます.それらの身体運動を用いた理学療法を運動療法ともいいます.


 物理療法と運動療法の対象は身体の異常を訴える患者さんです.どのような理学療法を行うかを決定する前に,患者さんが訴える異常をしらべる必要があります.つまり,理学療法的検査を行い,それらの結果を基に,それぞれの患者さんの身体機能の評価を行います.ここでは筋肉の力がどの程度あるかをしらべる徒手筋力テストや,関節の可動性がどの程度あるかをしらべる関節可動域テスト,などを行います.小児であれば発達段階をしらべますし,脳卒中のような中枢神経系疾患であれば反射などの神経学的テストも行います.喘息のような呼吸器疾患であれば肺機能テストを行います.このように,対象疾患により異なった検査を行い,それぞれの患者さんを個々に評価します.その結果,どのような物理療法や運動療法を施行すればよいのかを決定していきます.

 対象疾患は,骨折やスポーツ傷害などの筋骨格系疾患,脳卒中や神経麻痺などの神経系疾患,喘息や肺気腫などの呼吸器疾患,心筋梗塞などの心臓疾患,脳性麻痺や小児喘息などの小児疾患,皮膚炎や皮膚感染などの皮膚疾患,その他術後の呼吸管理や産前産後の呼吸訓練と筋の再教育なども理学療法の対象となります.

 理学療法では,物理的刺激や身体運動を治療手段として用います.物理的刺激や身体運動というと,「力任せに押したり,引いたり,動かしたり」というようなイメージが浮かびますが,それらの刺激は体の中に入って化学的物質の信号として働きます.例えば,皮膚や筋を外から指などで押すこと(マッサージなど)によって神経が働きます.その神経は特定の化学物質(神経ペプチド)を放出し,その近辺の細胞に情報を送ります.その情報を受けた標的細胞が例えば筋であれば,それは収縮します.物理療法や運動療法により影響を受ける細胞は神経系細胞だけではなく,ホルモンを放出する内分泌細胞や細胞性因子(サイトカイン)を放出する免疫細胞もその影響を受けます.ですから,理学療法を行うには物理的な思考過程だけではうまくいきません.生き物の理ごとを扱う生理学が必要となります.その他,身体の構造を知るために解剖学が,病気を勉強するために病理学が,さまざまな疾患を知るために整形外科学や神経内科学などが,保健・医療・福祉とリハビリテーションの理念を知るためにリハビリテーション概論・医学が専門の理学療法学を学ぶためには必要となります.専門の理学療法学では,身体運動の分析を行う運動学や,その応用分野としての運動療法治療技術学,あるいは物理的資源を医療に応用した物理療法,などを学習することが要求されます.


2001年7月11日 Y.tsujii

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