印象に残った本

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印象に残った本です.フランス関係を多めに選んでいます.20代初め頃までに読んだ本が多くを占めました.高校生や大学生だった頃には小説をよく読みましたが,その後,むしろ実体験に基づいた本を読むことが多くなりました.最近では,本よりも,実際に私が感動する体験をもっと持ちたいと思っています.2003年に少し変えて,ページの題名を「お気に入りの本」から「印象に残った本」としました.

目次: エッセイなど(2) 小説など(6) その他(2) 国際関係(2)

『朝永振一郎著作集別巻2 日記・書簡』みすず書房

物理学者の朝永氏は30代前半にドイツに留学しました.その当時の様子を,率直に綴った「滞独日記」が収められています.師である仁科氏から「先が見えない岐路に立っているのがわれわれです. ... ともかく気を長くして健康に注意して,せいぜい運がやってくるように努力するよりほかはありません」という手紙が来て,朝永氏が涙したという部分が印象に残っています.

Richard P. FeynmanSurely You're Joking, Mr. Feynman!』,『What Do You Care What Other People Think?Bantam

物理学者のファインマン氏が,ユーモアたっぷりに話す逸話の数々.ときに笑わせ,ときにホロっとさせ,ときに真面目な気持ちにさせてくれます.中学生のときに日本語訳で読んで以来,折にふれて何度も読み返しました.1999年にBBCで放映された「20世紀の20人(だったか)」での言葉:"Don't be afraid of anything. Go out and have a good time! -- Feynman"

2003年の追記:科学者の書いた本で,柳田充弘『生命科学者になるための10か条』羊土社を最近読みました.対象としている読者と私は随分違うのですが,よかったです.最後のエッセイ「わが心のホテル・ガウディ」も心にすっと入ってきました.

辻邦生『廻廊にて』新潮社

辻邦生氏の処女長編.ある女流画家の遍歴を描いた小説.辻文学のテーマは,一言で言えば,「生の根拠に美が存在する.文学によって,人々の心に大きな喜びを感じさせ,新鮮な再生感を味わせたい」ということでしょうか.私も,生の根拠に美があるというのに賛成です(もちろん,根拠は美以外にもいろいろあると思います).例えば,多くの人が,音楽や絵画などに深く感動して,言葉もなく陶然となったことがあるのではないでしょうか.

アレクサンドル・デュマ『三銃士』

ダルタニャンと三銃士が大活躍をする物語.「一人は皆のために,皆は一人のために」と四人が協力して,フランス王妃のためにイギリスのバッキンガム公爵に手紙を届ける話などが出てきます.『三銃士』とその続編は中学生のときに読みました.この本の仏語の抄本は,大学の仏語授業の外書講読の本でした.同じ作者の『モンテ・クリスト伯』も,内容はもうほとんど忘れてしまったのですが面白く読んだことを覚えています.

ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』岩波文庫

ベートーベンとロラン自身をモデルにした,天才的作曲家ジャン・クリストフの生涯を描いた大河小説.ドイツ・フランス・イタリアの三つの文化に触れ,幾多の恋愛を経験し,深い友情を得て,ジャン・クリストフは成長してゆきます.権威的なものを嫌い,失敗・誤り・挫折を繰り返して傷つきながらも闘い続けることをやめないジャン・クリストフの姿(ベートーベンの「悩みをつき抜けて歓喜に到れ」という言葉と重なり合う)に,大学に入り立てだった私は,いたく感激しました.

ロマン・ロラン『魅せられたる魂』岩波文庫

第1次大戦前後のパリに生きる,ある女性(アンネット・リヴィエール)の生涯を描いた大河小説.ロランは,その著書『ベートーベンの生涯』で,「思想もしくは力によって勝った人々を私は英雄とは呼ばない.私が英雄と呼ぶのは心に拠って偉大だった人々だけである」と述べています.自分の心情に真摯でありつづけたアンネットは,ジャン・クリストフのような創造力に必ずしも恵まれなくても,人は英雄たりうることを示しているのではないでしょうか.

晩年のロランは,反戦反ファシズムの立場から共産主義への傾斜を深めていて,この本にも,ロシア革命を賛歌する部分があります.そこが少し残念ですが…… また,人は自分の信じていないことをするときもあるでしょうし,英雄には英雄の問題があるかもしれない,と今の私は思います.しかし,大学に入った頃にロマン・ロランの小説を読んで感銘を受けたことは記しておきたいと思います.

パール・バック『大地』新潮文庫

19世紀後半から20世紀初頭にかけて中国の大地に生きる王家3代を描いた小説.古い伝統の中国を捨てようと思っても捨てきれず,その伝統の中から中国を変えていこうとする王淵が登場人物の中で印象に残っています.

Rabindranath TagoreGitanjali

ベンガルの詩人タゴールによる英文散文詩集.訳者の森本達雄先生にサインして頂いた本を持っています.そのとき先生に,インド学をやっている人ですか,と間違えられてしまいました.古い言葉が舌の上で消えるとき,新しいメロディがあなたの御心によって心に湧き上がるという第37歌,心がかたくなに干からびるときは慈愛(めぐみ)の雨を降らして下さい,欲望で目がくらんでいるときには稲妻をたずさえて来て下さいという第39歌が印象に残っています.

2003年の追記:『ギタンジャリ』の入手しやすい文庫本を宗教系の出版社が刊行しているので,印象に残った本として挙げるときに少し躊躇われたのでした.

杉田敏『やさしいビジネス英語 ベスト・セレクション』NHK出版

NHKラジオの英語講座「やさしいビジネス英語」で放送された内容をまとめたもの.宮川輝行が化粧品会社レインフォレストの日本法人ついでアメリカ本社で広報担当として活躍する「宮川シリーズ」が編まれています.大学生のときに宮川シリーズが放送されていて,英語の学習にと一時期熱心に聞いていました.後のことですが,テキストの和文英訳コーナーに応募して,何度か佳作に選ばれたこともあります.

ヴァルター・シュルテ『精神療法研究』岩崎学術出版社

ドイツの精神科医シュルテの代表的な論文を集めたもの.訳者の中井久夫氏によれば,敬虔なプロテスタントであった著者は,病棟隣の狭い家に単身で住み日曜日も回診を怠らず,戦後荒廃したチュービンゲン大学精神科の臨床再建に尽くしたそうです.「私は,どんな人にもその人の持ち分の孤独と秘密とを残しておくべきであって,自ら明かさない限り,無理無体に秘密を取りあげようとするべきではないという考えが好みである」や,「安らぎは, ... 互いに相手のためにあり,相手とともにあるという体験に依拠している」など,多くの言葉が印象に残っています.

Amartya SenInequality ReexaminedHarvard

国際関係という言葉に興味を持っていた頃,背伸びして読んだ一冊.印象に残った本に挙げるほどに理解しているとは言えないのですが…… 先進国と途上国の不平等を比べるとき,一人当たりGDPなどの経済指標だけでなく,個人が人生を選択する自由の与えられた社会か,個人が個人なりの自尊心を持てるような社会かという指標も大切なのだと感じました.経済学の本というよりむしろ思想的な本だと思います.Robert ChambersMichael Todaroの本にも挑戦しようとしたのですが,こちらはほとんど買っただけなってしまいました.

西崎真理子ほか『国際協力を仕事として』彌生書房

1995年に刊行された,開発・人道援助に従事している(いた)30代の女性12人による体験記.国連難民高等弁務官の緒方貞子氏が序文を書いています.この分野でのキャリアを選んだ動機,仕事と家庭とのバランス,後進へのアドバイスなどを,著者らは生き生きと率直に語っています.夢と理想を掻き立てるだけでなく,厳しい現実も見つめている素晴らしい本だと思いました.

2000年4月に,私の大学時代のクラスメートが国際機関で働いていることを知りました.そのニュースを聞いたとき,「頑張っているんだなぁ」と思ってすごく嬉しかったです.彼女の益々のご活躍とご発展を心からお祈りします. 2003年の追記:日本に戻ってこられました.得がたい経験をたくさん積んできたことと想像しています.

(Uploaded: August 4, 2001)
(Last modified: October 26, 2003)
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