リーダーに必要なものとは
丸山 では、まず池本さんの大学入学前までのお話を伺いたいと思います。
池本 僕は小中高と学級委員や生徒会をやっていました。その他に、サッカーでキャプテンをやっていて、それは今の自分にも深く関わっています。というのも、それまで僕は基本的に自分の好きなことをやってたし、やっていたい人だったんです。だけど、それじゃキャプテンは務まらないわけです。全体をまとめたり、チームメイトのいい所を見つけたり、上手くコミュニケーションをとったり、練習を工夫するようにしたりと、そういう経験を通して、自分だけでなく他のメンバーのことを考えたり、全体を見られるようになりました。あの時学んだことは、同じように今、団体の代表として活動していくのに生かされていると思います
丸山 SFCを選んだのは何故ですか。
池本 SFCにも興味を持ったきっかけというのが、ある予備校の先生が「日本で最先端の学問をしているのはSFCだ」という話をしてくれたことなんです。僕は、新しいことに興味があったので心に引っかかり、SFCを受験しました。
ボランティア=自発的におこなうこと
丸山 SFC入学後はどういうことをしていたんですか。
池本 もともと新しいことがしたくてSFCに入ったんですが、SFCが力を入れている語学やITはあんまり得意じゃなかったです。でも、その時もう一つ新しいことがあってそれをやってみたいと思いました。それは何かというと、「福祉」でした。その時言われていたことで、高齢化社会が高齢社会に、情報化社会が情報社会に、「化」という文字が抜けて移行しているという話にピンときて、その両方をやっ
てみたいと思いました。
丸山 具体的には何をやられたんですか。
池本 老人ホームにITを導入しようという活動に関わりました。また、それをきっかけにして、自分でボランティアや福祉の活動をやり始めました。そして、二年の頃には、障害者の国体の運営ボランティアを経験したんですが、その時に自分の中でボランティアというもののイメージが大きく変わりました。どういう風に変わったかというと、それまではボランティアってのは「健常者が障害者に対して何かをしてあげる」みたいなイメージを抱いていたんです。でもそうじゃない、と思うようになりました。ボランティアというのは、「自発的に何かを行う」ということであって、必ずしも健常者が障害者に対して行うものだけではないんです。障害者の方が健常者に何かしてあげる、そういうボランティアもあると思うんです。
自分のやりたいことを実現できない人が多い
丸山 鈴木寛さんのゼミに入った理由を教えてください。
池本 鈴木さんが複雑系という学問分野を扱っていたこと、彼が2002年のワールドカップの組織委員だったこともその理由なんですが、もう一つ、彼が抱く問題意識が自分に引っかかったことも大きな理由でした。どんな問題意識かと言うと、自分もそうなんですが、「自分が面白いと思うこと、やりたいと思うことを実現できない人が多い」というこ
とです。例えば、 自分がすごく会いたい人がいたとし
ます。その場合、大抵の人が行動する前に「それって難しいよね」と決め付けてあきらめてしまいます。でも、実はどんな人だって会おうと思えば会えるものなんです。
丸山 鈴木さんのところで学んだ一番のことは何だったんでしょうか?
池本 一番勉強になったのは、SCIXという平尾誠二と鈴木寛でNPOを作るという活動に関わったことでした。スポーツのチームメイキングを企業のチーム作りに、サッカーのコミュニティ作りを企業にと、いろいろと応用することを学びました。何でも大事なのは「見方を変える」ということなんです。例を挙げると、例えば普通の入れ物があったとして、それに鉛筆を立てれば鉛筆立てになり、花をさせば
花瓶になる、水を入れればコップになるんです。あるものをどうやって生かすのか、どうやって見方を変えていくのか、生かす知恵はどこにも転がっているんだ、そういうことを学びました。
新しいメディアを作りたい
丸山 大学三年の時に立ち上げた、創造支援工房FACEについて聞かせてください。
池本 様々な活動やイベントを経て、三年の終わりに創造支援工房FACEを自身で立ち上げました。その時思っていたことは、
自分がやるならずっと続くようなグループを作りたいというのがありました。自分の好きな言葉で「本物は続く、続けば本物になる」っていう言葉があるんですが、最近は物事を続けない人が多いと思います。もっと続ければいいのにもったいないなと思うこともあります。続ければ、初めの一歩の重要性にも気づくんじゃないかと思います。
池本 FACEに話を戻すと、FACEは「多様な価値観を認め合える社会の創造」を目指して立ち上げました。それを達成する手段として、自分はメディアを考えています。具体的には、新しいメディアを作りたいと考えています。現在のメディアは、スポンサーや視聴率といったことに縛られ、偏った情報が伝達されて公共性が失われていると思うんです。そういう既存のメディアを壊し、伝えたいことが伝え
られる新しいメディアを作りたいと考えています。でも、メディアを作るには、文章を書いたり、映像を編集したりという基本的なスキルが必要になってくるし、そもそもメディアとは何かというものを知らなければならないと思うんです。そこで、例えば、FACEでは、メディアプロデューサーズスクールI-mage(http://www.iface.ne.jp/i-mage)でそういったスキルを身に付けたり、メディア寺子屋で現在存在するメディアを知る場を提供したいと思っています。
I-mage
丸山 今春立ち上げる、メディアプロデューサーズスクールI-mageについてお聞かせください。
池本 さっき、FACEは多様な価値観が認め合える社会を目指していると言いました。そうなるためには、多くの人が多様な価値観を知る必要があり、その知る手段としてメディアは大きな役割を果たすと思います。現在、個人が情報を発信するためのツールは既に整っています。しかし、そのツールにコンテンツをのせている人は少ないのです。僕たちはこのI-mageで、自分でコンテンツを作り情報を発信していく人をもっと増やしたいと考えています。
丸山 具体的にはどういったことをやるのでしょうか。
池本 大きく分けて二つのことがあるのですが、それらを同時並行的に行います。一つ目がレクチャー、二つ目が実践プロジェクトです。一つ目のレクチャーでは、メディアの最先端で活躍しておられる方をお招きし、講演やディスカッションを通じて、現在のメディアの実際と新しいメディアの可能性を探ります。二つ目の実践プロジェクトでは、7つのプロジェクト(テレビ、映画、雑誌、新聞、WEB、
ラジオ、広告)がそれぞれ、「新しい時代に要求されるコンテンツは何か」ということを実践的なプロジェクトとして行いながら探っていきます。このI-mageを通して、参加者が各々の感じていることを社会に対して発信できるようにしていきます。
就職はしない
丸山 池本さんは来年で大学院の卒業を迎えるわけですが、今後はどうされるんでしょうか。
池本 就職はせずに、FACEをNPO化し、三年間はメディアをきちんとやりたいと思っています。メディアをきちんとやるというのを具体的に言うと、メディアをツールにどんどんコンテンツを社会に対して発信していき、さらに三年後の2005年に一度集大成的なものを作るというのを考えています。2008年くらいには海外に留学して、世界に自分たちの活動方法や人材を紹介していきたいです。
仏法僧
丸山 今までのお話を伺っていると、池本さんを衝き動かしているもの、行動の動機というのは「新しいこと、変わったこと、社会性のあるもの」ではないかと思ったのですがどうでしょうか。
池本 昨年の春頃に、ふと自分を振り返って、自分の行動指針・行動規範てのは何だろうと考えてみたことがあるんです。その時に、自分の行動指針というものが中高の校訓と同じ事に気づいたんですね。どういう校訓かというと、仏教用語で「仏法僧」というんです。仏は自己尊重、法は真理探究、僧は社会献身という意味です。僕は新しいことや社会的なことを追求してるんですが、その新しいことは「真理探究」、社会的なことは「社会献身」、そして自分がやりたいことをやるという意味で「自己尊重」。こう考えると自分はこの仏法僧にあてはまるなと思ったんです。
夢、発想、ネットワーク
丸山 最後に。何かお願いします。
池本 僕たちっていろいろなものを持ってないけど、夢、発想、ネットワークがあります。これだけあれば大丈夫だと思うんです。夢は意思を、発想は力を、ネットワークは広がりを生んでくれます。夢と発想、ネットワークがあれば、僕たちは生きていけるけど、でも逆に、これがなかったら他の何があってもダメなんじゃないかと思うんです。
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