比較社会科学方法論研究会  2002/3/19

ハイデッガー「世界像の時代」

(ハイデッガー全集第5巻『杣径』創文社p97-134

報告者:大光寺

 

1938年の講演をもとにした短い論文.「技術論」と並んで,ハイデッガーの近代観が比較的まとまった形で読める論文である.

 

※小さめの字は,報告者による補足.

 

近世Neuzeitの本質的な現象

 

@ 学問

A 機械技術

B 芸術が人間の生の表現と見なされること

C 文化政策(人間の最高の財を保護すること)

D 神々の神性の剥奪

⇒これらの根底には,いかなる形而上学(特定の時代における存在者真理の把握)があるのか

 

@の近世的学の形而上学的根拠に話をしぼる.

それは,中世やギリシャの学とはまったく異なる存在者の解釈に依拠している.

 

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近世の学の本質 … 探究Forschung

 

探求の本質的な性格とは?

 

(A) 存在者のある境域,例えば自然なら自然のなかに,ある特定の平面図が下図を描かれる=投企される(Entwurf)

下図を描く ⇒ 認識の束縛 ⇒ 探求の厳密さ

 

例:物理学におけるEntwurf.運動とは位置の変化である.いかなる運動も運動方向も他のものに優ることはない.いずれの位置も他のいずれの位置とも等しい,等々.自然経過は,この下図のなかで初めて自然経過として見える.

「数学的自然探求は,正確に計算するが故に精確であるのではなく,数学的自然探求の対象領域への束縛が精確性という性格を有するが故に,精確に計算せざるを得ないのである」

 

(B) 平面図と多様な事実とを結びつける実験.近世的な探求実験は,事実をありのままに観察することではない.実験は,諸事実において恒常的なものを法則として設定し,その束縛のもとで経験を説明する.(未知のものを既知のものによって基礎づける)

  ×実験 → 近世の学

  ○探求 → 近世的な実験

 

(C) 近世の学は,企業Betriebの性格をもつ.学の成果は,引き続く探求を準備する.

(例:歴史学的探求では,資料は,それ自身が歴史学的諸説明に基づいて確保され,歴史学的に成型されているとき,はじめて利用可能となる.)

⇒ 個別科学の自律化・専門化.

  学識者の消失,大学の精神的な力というロマン主義の消失

⇒ 現実的なものは,技術家的な研究者と,企業的な専門学校.

 

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近世の学の形而上学的な根拠

 

自然と歴史は,説明しつつ表象することの対象となる.このような仕方で対象となるもののみが,有るものと見なされる.

表象 … Vor-stellung=直前に立てること.すべての有るものを,計算する人間の直前にもたらすこと.

近世形而上学(⊂デカルト形而上学)… 存在者:表象作用の対象 

                   真理 :表象作用の確信性

 

・近世の本質としての,主観主義客観主義との必然的な相互作用.

・近世において,人間が主体Subjekt, 主語・基体)となると同時に,世界がBildとして把握される.現象学は,その最たるものではなかろうか.

 全体としての存在者はいまや,vor-stellen(表象する,直前に立てる)しつつher-stellen(作成する,こちらへ向けて立てる)する人間によって立てられたものである.

人間は存在者の連繋中心として,主体となる.

 

世界が像として徹底的に意のままになるようになる(客観主義)

→ その像を表象する者としての人間中心主義(ヒューマニズム)

 

※中世的,ギリシャ的な世界観というようなものは存在しない.なぜなら世界は像でなかったから.

 

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近世の比類なさ

 

近世の根本経過=世界を像として征服すること.

近世は,諸世界観の闘いのために,一切の事物を算定し計画しする無制限な力を賭ける.

⇒ 巨大さdas Riesigeの出現.航空機,ラジオ.グローバリゼーション.

  計画,設備,保障の量的な巨大さは,質的な違いに転化する.

「外見上は徹頭徹尾,いつでも算定され得るものは,まさしくこのことによって,算定され得ないものとなる.」

⇒ 世界像の

 この影は,近世における,歴史的に比類ないものだが,それが何を暗示しているかを知ることは,われわれには拒まれている.