第三章 何のための<還元>か (1)

参照:「ブリタニカ草稿・最終稿」

 

1. 何のための<還元>?

現象学的還元 現象学の方法の核心。

I.                   「自然的態度のなす一般定立」の指摘

一般定立=世界信念: 私たちは普通、ひとつの現実世界が確かに存在しており、そのなかに私も他人も事物も属している、という信念。

II.                一般定立をエポケー(判断停止)する

世界信念について、それが真であるか偽であるか判断を停止する=カッコに入れる

III.             エポケーの後も「意識」が残ることを示す

   「世界がまずあって、そのなかに意識がある」 ×

「一切の事物は、意識体験のなかで意味を獲得する」

IV.              哲学的判断の地盤としての「純粋意識」

「世界の一部」ではなく、「世界を定立するもの」としての意識 純粋意識

 

l         なぜ、このような還元をおこなうのか?独我論では?

フッサールの弟子たちも離反していった…。

 

2. 純粋心理学の立場

l         純粋意識を研究する純粋心理学の方法

  どういう種類の経験が心的なものを私たちに経験させるのか?

  なにかを想起したり、他者に自分の体験を伝達したり、激しい情動に捉えられて振り払うことができないとき

自分の体験を見つめなおす 反省

 

3. 志向性と総合

l         志向性 反省によって与えられる心的体験のもっとも本質的な性格

意識はつねに「〜についての意識」であり「〜に向かっている」という性格をもつ。

意識は、焦点を持たないスクリーンのようなものではなく、何かを「めがける」。

l         総合 サイコロをぐるりと回すと、見え方は連続的に変わるが、それは同じ「このサイコロ」のさまざまな見え方であると意識される

意識対象 ノエシス、  意識作用 ノエマ

l         読書体験の例。読者の意識(ノエシス)は、著者の言いたいこと(ノエマ)に向けられている。読書は、事物経験とは異なって重層的な総合であり、語が文へ、文が段落へ、段落が文章全体へ統合されていく。

「志向性にもとづく総合」の類型論という研究プログラムが可能。

 

4. 心理学的-現象学的還元

l         心理学的-現象学的還元 真に純粋な自己経験を取り出すための方法

“客観的に見たとき対象は何であるか”をカッコに入れ、事物や世界を体験の相関項として捉える

「まずサイコロがあり、 それが意識にいろいろな見え方をする」 ×

「サイコロを意識する志向性は、そのつど本来的に見られている前面と、ともに思念されている背面を志向している。そして異なる角度からの見え姿は、変化していきながら、そのつど一つのサイコロという対象へと総合されている。」

l         形相的還元 純粋な心的領野の本質構造を取り出すこと 本質看取

事物知覚の本質構造、数の本質構造、文字の本質構造、etc.

 

5. 純粋心理学の課題

I.                   志向的体験一般の本質に属する諸特性の記述。総合・反省・自我など。

II.                心の内で本質必然性をもって現われる諸体験の個別的所形態の探求。事物知覚・想像・想起など。

III.             心的生活一般の総体形式の挙示と本質記述、また「意識流」の本質的なあり方。意識はどのようにまとまっているか。

IV.              「自我」は、「習慣性」の本質諸形式という面から見るならば、新たな研究方向を示す。もろもろの習慣や整然とした知識や性格諸特性を備えた人格的主体としての自我の探求。

 

6. 体験に“内在”することの意味

l         たとえば理念的存在者と事物的存在者の違いも、それらを認識する仕方の違いも、私たちの体験の現場そのものをよく見ることによってはじめて答えられる。

あらゆる方面に応用できる「考え方の方法」として当時の若い研究者たちにおおきく影響。意志・心情・美学・倫理・法などの現象学的探求がなされた。

動機として、客観的な自然科学万能主義に対する対抗意識。

 

…なぜ、フッサールは超越論的現象学へと進んだのか?