聴覚障害学生の会発足理由

聴覚障害を持つ高校生・大学生は全て聴覚障害があるという点で共通している。一方で、彼らには家庭・教育・地域などの個別的な環境要因が付随している。よって一人ひとり両親への思い、友人関係、自分のこと、聴覚障害に対する見方、ことばに対する見方などが異なってくるのは当然であり、それはやがて青年期以降の生き方に影響していくことが考えられる。聴覚障害青年に話を伺うと、「どうして普通学校は耳が聞こえない子どもの立場をわかってくれないのだろう」「ろう学校では手話を使って教えてくれる先生がいない」「自分の親には手話をもう少し認めてもらいたかった」などの声が多い。皆はそれぞれ悩みを持ちながらも自分なりに解決の手立てを探したり挫折したりして成長している。しかし、彼ら、特にろう学校在籍生と普通学校在籍生が一度に同じ場で出会い、語り合う機会はあまりない。強いてあげれば、宮城県難聴児をもつ親の会主催の難聴児キャンプ、仙台市聴覚障害者協会主催の親子ふれあい教室があるだろうが、学生交流・学生活動の発展を考えるとまだ不十分と言わざるをえないと思う。また、(社)宮城県ろうあ協会では年齢18歳に満たない者は入会できないとされている。このように、宮城県では、高等教育機関に在籍する学生全員が集ってお互いの見解や立場を交わす機会が非常に限られている。

また、日本における聴覚障害学生の実態を見ていくと、現在、高等教育機関に入学する聴覚障害を持つ学生の割合が増加し(平成8年では少なくとも1000人ほどいたと言われている)、「門戸開放」の問題から「情報保障」の問題へと移行し、その解決に向けて日本各地でさまざまな組織が活動を行っている。一方で、「ろう者のアイデンティティ確立」ということばに象徴されるように、聴者への同一化や手話を使うろう者への乖離、そして自分はどこにおかれているのか、自分はどこへ向かおうとしているのか、のメンタルヘルス上の問題が近年議論されるようになった。「情報保障」の問題も含めて、まさに聴覚障害青年の発達プロセスに対する“理解” と“援助”の必要性、いわば「聴覚障害を持つ人間の発達保障」を考えることの意義が高まっているようである。

そして、聴覚障害学生も、その理解と援助を期待する傍観者としてではなく、その問題の当事者として、

自分の置かれている環境とうまく働きかけあうにはどうしたらいいのか?

自分の置かれている環境下で「情報保障」の実現に向けてできることは何なのか?

自分とは違う環境に置かれている聴覚障害学生とどのようにして仲良く真摯に語り合い、活動をともにするにはどうしたらいいのか?

などを主体的に考え、実際に行動で示して試みることが何よりも大事になってくるだろう。それは、単に「自分の人生をどう生きるか?」という生涯発達的なテーマとつながるだけでなく、21世紀の聴覚障害問題に真剣に取り組む人材の開発のきっかけにもなるのではないかと考えられる。それらのきっかけを与え、当事者としての姿勢を考えていくべく、学生団体の設立を目指した。そして、その団体名として「宮城県聴覚障害学生の会」と名付けた。