『壊れた扇風機』



扇風機が動かなくなった。
スイッチを入れると「ウ、ゥゥゥ ・ ・ ・ 」という、
いかにも苦しそうな音が鳴るのだが、プロペラは回らない。
古い扇風機だからそろそろ壊れても仕方ないかな
とは思っていたけれど、いざ壊れてしまうととても不便だ。

それで、とりあえず古い機械は叩けば直るだろう、なんて思って
思い切り叩いてみた。
すると扇風機の「ふた」の部分の針金が、いくらか へし曲がった。
扇風機は動かない。
僕はもう一撃、今度は後ろから思いきり、グーで殴った。


「カン、カン、カカン、カンカカンカン ・ ・ ・ !」
プロペラが回り出した。まあ古い機械なんてこんなもんだろう。
しかしプロペラが、さっき曲がった針金部分に引っかかってうまく回らない。

僕は針金をもとの形に戻そうと思い、扇風機のスイッチを切った。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 今度は扇風機が止まらない。
「カンカンカン、カカカン、カン ・ ・ ・ 」 
回りつづけている。


僕はどうしていいか分からず、回る扇風機に顔を近づけて
「あーーーーーーー」
と言ってみた。
でも声は思ったようには震えない。
自分の、そのままの声が聞こえるだけだ。


・ ・ 突然、扇風機がしゃべりだした。
「なにやってんだお前、バカだなあ。カンカンカン ・ ・ ・ ・ 」

(僕)「!!?」

「『あ〜〜』って言って声が震えるのはなぁ、あれは電器メーカーが
  わざわざそういう機能を付けてくれてんだよ。
  壊れた扇風機で声が震えるかっつーの。カンカンカン ・ ・ ・ 」

扇風機はしゃべりつづける。

「だいたいオマエなあ、叩けば直るっていう発想がそもそも原始的な ・ ・ カンカン ・ ・ ・ 」

僕はあっけにとられながらも、
「なんで扇風機がしゃべるんだろう?」 と考えていた。


扇風機は なお しゃべり続ける。
「オレはそもそもオマエらごとき若僧に叩かれるような ・ ・ カンカン ・ ・ ・ 」


・ ・ ・ なんだかだんだん腹が立ってきた。

僕は針金の間に指を入れ、その指で回るプロペラを止めた。
プロペラは鉄製で、思ったよりずっと鋭利だった。
指からは血が流れた。


僕は流れる血を見ながら、
「あぁそうか、この扇風機は壊れているんだ。」 と思った。