ぼくの夏休み
ある友人から夏休みのプランニングを依頼されたので
彼のために考えてみました。
8月1日(金) 雨
今日は雨だ。
仕方ないので家でゴロゴロしかながら時々パキスタン人と遊ぶ。
2人でトランプの7並べをした。
こう見えてもパキスタン人は、
国に帰れば一族数十人を養っているお金持ちだ。
5時からはバイト。
今日もオタクや引きこもり相手に5時間。
帰ってきて風呂に入って寝るだけ。
明日はいい1日になりますように。
8月2日(土) くもり
今日はくもりだ。
土曜日なので友人の多くは休みだろう。
電話して遊んでもらおう。
と思って6人ぐらいに電話したが誰もかまってくれない。
家には誰もいない。
仕方がないので1人で逆立ちをした。
8月3日(日) 晴れ
晴れ。
世の中は今日も休みだ。
昨日は昼過ぎに電話をしたのでみんな断られた。
だから今日は朝いちばんで電話をしよう。
と思って6人ぐらいに電話したが誰もかまってくれない。
家には今日も誰もいない。
仕方がないので1人でなわとびをした。
8月4日(月) 晴れ
今日からまたウィークデーだ。
言い忘れたけれども僕の家は会社をやっているので、
住居はオフィスと兼用している。
それで、ほんとうの家は別にある。
平日は親が家にいるのだけれど
土日は親はほんとうの家に帰ってしまうので
この家は僕1人のものになる。
今日は月曜日。今日から家は会社になる。
さて、何をしようか。
と考えながらメロドラマをみてワイドショーをみて
はぐれ刑事純情派の再放送を見ていたら
バイトの時間になった。
今日もオタク相手に悪戦苦闘。
8月5日(火) 晴れときどきくもり
今日は朝から公園でハトにえさをやった。
食欲がなかったので朝食のパンを小さくちぎって
ハトに投げていたのだ。
ハトにもいろいろいる。
太ったハト、白いハト、目がつぶれているハト。
僕は太ったハトがもっと太って飛べなくなったらおもしろいなあ
と思って、太ったハトにたくさんパンくずを投げた。
公園ではホームレスと日雇い労働者の中間ぐらいの格好をした人が
空き缶を袋に詰めていたので
「手伝いましょうか」 と声をかけたところ、
「オンドグリャホニャヌベヌバ!!!」
と、訳のわからないことを言われたので
僕はとても悲しい気持ちになり、クツを片方だけ脱いで
歩いて家まで帰った。
それからバイトの時間まで昼寝をした。
心はやさしいんだけどとても不潔なおっさんの夢を見た。
バイトではオタクが変なキレ方をして店長とケンカしていた。
8月6日(水) くもり
今日もバイトだ。
朝早くから家を出て、地下鉄に乗り、森ノ宮駅で降りて
そこから環状線に乗った。
朝6時半ごろから夕方4時半ごろまで、
ずっと環状線に乗ってぐるぐる回っていた。
環状線といっても、朝から晩まで同じ電車でぐるぐる回っている
わけではないのだということが分かった。
3周か4周ぐらいしたところで、電車は回送になった。
僕は回送電車がどこに行くのか興味があったので
電車のどこかにかくれて僕もいっしょに回送されようと思ったけど、
駅員に見つかってつまみ出されてしまった。
もっと見つかりにくい場所を考えないといけない。
森ノ宮駅で買ってそこの自動改札を通ったキップで
同じ森ノ宮駅の自動改札を通って出ることができるのか、
ものすごく不安だったので
駅員のいる改札に行って、
「すいません、ちょっと忘れ物しました」
と言って外を指差しながらキップを見せると駅員は
「どうぞー」
と言って通してくれた。チョロいもんだぜ。
8月7日(木) 快晴
暑い日だ。
こんな日は家でクーラーにあたっているに限る。
バイトもないし、楽な1日だ。
内定先から出された宿題を片付けとこう。
読書感想文だ。業界について勉強しとけよ、ってことなんだろう。
僕は字数をかせぐために、すべて「ですます調」で通した。
字も大きく書いて、段落も変えまくった。
それでも字数がだいぶ余ったので
おいしいカレーの作り方を書いておいた。
完成。
これでもう夏休みは遊ぶだけだ。
読書感想文に半日かかって、楽な1日ではなくなったけど、
やることを先にやって、とてもすっきりした。
寝るまでの時間はパキスタン人と英語でしりとりをした。
英語には「n」はあっても「ん」はないので
しりとりに終わりはない。
パキスタン人は、僕より先にそのことに気付き、
バカにするな、といったジェスチャーで首を左右に振り、
突然、ものすごく怒ったような表情になって、
「パス」の数を数えるためのマッチ棒をへし折った。
あんな恐いパキスタン人を見たのは初めてだ。
僕は彼に「ごめん」という手振りをして、
彼が折ったマッチ棒を、吸い殻だらけの灰皿に入れた。
涙が出た。
8月8日(金) 晴れ
今日はバイトの時間までヒマだったので、
朝からタバコの空き箱と接着剤を使ってロボットを作った。
ほとんどがセイラムの箱だけど、
胸のコクピットの部分だけは「JPS(ジョン・プレイヤー・スペシャル)」
にしたいなあと思い、近所の自販機でJPSを買ってきて、
急いで20本全部を吸った。のどが痛い。
そしてその空き箱を胸の部分にくっつけた。
自販機ではJPSのボックスが売ってなかったので
大事な胸の部分がフニャフニャして
強度的には心もとないけど、
べつに誰と戦うわけでもないのでまあいいや。
でもそれだったら中身は吸わないで
未開封のまま接着したらよかったなあ。
完成したロボットをパキスタン人に見せた。
パキスタン人はそれを見るや、
「バーミヤン!!」
と叫んで、ロボットの首をつかもうとした。
僕はそれを体を張って止めたが、
代わりにパキスタン人に殴られてしまった。
パキスタン人は背が高いわりにはあまり力は強くない。
そう思った。
バイトに言ったらオタクが来てなかった。
店長に聞いたら、
「アイツこないだ無断欠勤してなー、家に電話したらお母さんが出て、
泣きながら『もういいですぅ(泣)』って言うてはったわ。
だから今日はオレとお前、2人だけや。」
ボクはうれしくなって、その日は張り切って働いた。
8月10日(土) 天気不明
目を覚ますと体が動かなかった。
頭が痛いような気もするし、熱があるような気もする。
とにかく全身が動かない。
声は出るようだ。
「アァァァァーーー!!!」
うん、出る。
でも家には誰もいない。
夢かもしれないし、考えても仕方ないので
とりあえずもう1度寝ることにした。
目を覚ました。
やはり体は動かない。
何かネズミの鳴き声のような音が聞こえる。
鳴き声はだんだん大きくなり、耳元で止まる。
「チュチュチュウチュウ」
一瞬、ネズミって本当にチューチュー鳴くんだなあ、と感心するも、
耳かじられたりしたらどうすんねん、と現実に気付く。
ネズミは鳴きつづける。体は動かない。
「チュウチュウチュウ・・・」
しばらくするとネズミはどこかに消えた。
でも僕の体は動かない。
目は見えるし耳も聞こえる。声も出る。
体だけが動かない。
仕方がないので僕は天井の模様を眺めていた。
天井は、何枚もの 模様の付いた板をすき間なく敷きつめて作ってある。
30分もすると、ただ眺めていることには飽きてしまったので
今度は天井の模様であみだくじをはじめた。
でも何が当たりで、当たったらどうなるのか、
1人でやって何が楽しいのか、ということに
不覚にも気付いてしまい、バカバカしくなってやめた。
お腹がすいてきた。
でも体は動かない。
全然眠くないけど、起きていても仕方ないので
もう1度寝ることにした。
なかなか寝つけなくて、寝つくまでに1時間ほどかかった。
8月11日(日) 天気不明
目が覚めた。
お腹がすいて目が覚めたのだ。
外はまだ薄暗い。
よく考えたら、おとついの夜から何も食べていない。
そして何も飲んでいない。
暑いのでたくさん汗をかいている。
水が飲みたい・・・
遠くで電話が鳴っている・・・
今日は日曜日。
今日も家には誰もいない・・・
明日になるまで待たないといけない・・・
それまで持つかな・・・
そう思っていると、「カチャ」 と玄関の鍵が開く音がした。
「助かった!」 と僕は思った。
誰でもいい、とにかく助けてくれ!
そんな気持ちでいっぱいだった。
と、僕の部屋のドアが開いた。
そこに立っていたのはパキスタン人だった。
パキスタン人は僕を見るや、表情が一変し、
「バーミヤン!!」
と叫んで僕の頭を殴った。
そして彼は、僕にロメロスペシャルをかけようとしたが失敗し、
仕方がないのでパイルドライバーをかけた。
僕はアワを吹いて気を失った。
さすがにヤバイと思ったのか、パキスタン人はオロオロしながら
オフィスの電話機でどこかに電話をかけ、
僕の部屋にもどってきた。
そして彼は僕が吹いたアワをティッシュで拭いた。
しばらくすると、家に救急車がやってきた。
僕は近くの病院に運ばれ、手当てを受けた。
ともあれ、僕は明日を待たずして助けられた。
ありがとう、パキスタン人。
僕はその夜は病院に泊まった。
まだ体をうまく動かせなかったからだ。
この日の病院代は3300円ということだった。
パキスタン人は僕のサイフから1万円札を抜き取り、
それで料金を支払った。
お釣りは帰ってこない。
8月12日(月) 晴れ
この日は病院のベッドの上で朝を迎えた。
腕には点滴の針が刺さったままだ。
体はちゃんと動く。
僕は看護婦さんに帰っていいか聞いた。
看護婦は「先生に聞いてきますねー」
と言って出ていったきり、全然帰ってこなかった。
仕方がないので僕は、夏休みにどこへ旅行しようか考えた。
どうしよう、
宝塚ファミリーランドにしようか、さやま遊園にしようか、
それとも大阪球場でアイススケートにしようか。
どこへ行くにしても とても楽しそうだ。
そうやって1日が終わった。
8月13日(火) 大雨
今日も病院のベッドの上で朝を迎えた。
看護婦が点滴の針を抜いてくれないので
自分で抜いたら血がたくさん出た。
退院の手続きをとって料金の精算をした。
窓口ではオバサンがソロバンをはじいている。
オバ「え〜と、1日目が3300円と入院代5000円、2日目が・・・」
僕「あの〜、1日目の料金はパキスタン人が払ってると思うんですが・・」
オバ「え?頂いてませんよ?」
僕「・・・・」
僕は仕方なく、請求された額をそのまま払い、家に帰った。
家ではパキスタン人が のほほんとお茶を飲んでいる。
僕は彼に、
「僕のサイフから病院代と称してお金を抜きとっておきながら
なぜ病院代が支払われていないのか。払ってないのなら1万円を返せ」
と詰め寄った。
すると彼はすごく怒った様子で、
『お前ら日本人はアメリカの味方をしているから
オレ達イスラムを目の敵にしているのか!!!』
という内容のことを言った。
僕は、決してそんなつもりはない、ということを彼に言った。
パキスタン人はとても悲しそうな顔をした。
それを見て僕もとても悲しくなった。
僕は彼に、「カレーでも食いに行こう」と言った。
彼は少しだけ嬉しそうな表情になった。
5時からバイトに行った。
なんだか仕事に身が入らなかった。
8月14日(水) くもり
今日は なまけもの君から電話がかかってきた。
キャッチボールしよう、ということだった。
友達と会うなんて、いったい何ヶ月ぶりだろう。
とても新鮮な気持ちだ。
なまけもの君、ありがとう。本当にありがとう。
ボールとグローブとバットを持って、近くの公園に行った。
最初少しキャッチボールをして、
しばらくすると なまけもの君が
「打撃練習しよう」と言ってきた。
僕は「いいよ」と言って、バットを構えた。
すると なまけもの君は
「デッドボールをよける練習だ!」と言って
僕めがけて次々にボールを投げてきた。
僕は最初はうまくよけていたものの、
そのうち よけきれなくなってボールが体に当たりだした。
何か、ボールだけじゃなくて石が混じっている気がする。痛い、痛い。
投げるボールがなくなると、なまけもの君は満足した様子で
「おもしろかったねえ」と言った。
僕は痛かったけど、「おもしろかったねえ」と言った。
キャッチボールが終わると、僕らは夏休みの計画について話した。
僕は
「夏休みどこ行こうか?宝塚ファミリーランド?
さやま遊園?それとも大阪球場でアイススケート?」
と聞いた。
するとなまけもの君は、
「あほやなあ、宝塚も、さやまも、大阪球場も、
もう全部つぶれて無いねんでー」
と言った。
僕は信じられなかった。
僕は信じなかった。
そんなはずはない。
つぶれるはずがないのだ。
決めた。
僕はそれらすべてがつぶれていないことを証明するために、
宝塚、さやま遊園、大阪球場、その全部に行こう。
ふふふ、夏休みの計画。
一気に3つもできたぞ。
楽しみになってきた。
僕はわくわくしながら、バイトに向かった。
バイトでは新人が入っていた。
今度はパソコンおたくだった。