ぼくの夏休み その2
8月15日 (金) 晴れ
今日は終戦記念日だ。
正午には甲子園でもサイレンが鳴って黙祷をささげる。
黙祷が終わった直後のプレーでは、
たいていバッターが空振りする。
それを見るのが僕の毎年の楽しみだ。
なんたって1年に1度しか見ることができないから。
僕はそれをしっかり見とどけようと思い、
家にある、チャンネル回す式の赤いテレビを
パキスタン人と一緒に見ていた。
正午。
サイレンが鳴り出すと、
パキスタン人は急に号泣しだした。
戦争で死んだお母さんのことを思い出したようだ。
それを見て僕も、
戦争で死んだ沢村栄治の素晴らしいピッチングを思いだし、
いっしょになって泣いた。
言うまでもないことだが沢村栄治は沢村賞投手だ。
高校野球ぐらいラッキーゾーンがあったらいいのに。
野球を見終わると、物事に影響されやすい僕は、
仕方がないので家の前で素振りをした。
8月16日(土) 晴れ
今日はパキスタン人といっしょに大阪城に行った。
僕はそこでスルッとKANSAIカードを拾った。
まだ1000円以上残っている。ラッキー。
通天閣にも行った。
2人でHEP−FIVEのエレベーターにも乗った。
楽しかった。
でもパキスタン人はエレベーターが気持ち悪いと言っていた。
パキスタン人は気分が悪いからしばらく休むと言って
近くにあったベンチに座り込んだ。
パキスタン人の気分はなかなかよくならず、
気付けば夜の11時半になっていた。
もう帰らなくちゃいけない、と思い、
僕らは青春18きっぷを買って、
電車で大阪から森ノ宮まで行った。
青春18きっぷはあと3回分残った。
どうやって使おうかと考えるととても楽しくなった。
8月17日(日) 大雨
今日は雨なので家でごろごろした。
いとし・こいしもそろそろ引退かな、とか考えていた。
メールをチェックしたけど
もちろん誰からもメールは来ない。
するとパキスタン人がやってきて、
ラッパとラッパーはどう違うのか
というようなことを聞いてきたので
ラッパは楽器でラッパーは人だと説明したら、
「ファンデンホーヘンバンド!!!」
と叫んで 雨の中、傘もささずに走って行ってしまった。
10分ほどすると帰ってきて、
僕のソデをつかみ、大内刈りをかけてきた。
僕は長い経験から、だいたいそうくることは分かっていたので
彼の技をヒラリとかわした。
すると彼は連続技で僕に体落としをかけた。
僕は見事に投げられてしまった。
僕は首を脱臼した。首が だらん と垂れた。
パキスタン人は一瞬驚いたような表情を見せたが、
「ああ、これオレはめれるねん、柔道やってるから」
といったそぶりで僕の首をつかみ、
「フンッ」
と首をはめた。
なんかまだ痛かったけど、
とりあえずハマったからまあいいやと思い、
そのままバイトに行った。
8月18日(月) くもり
脱臼はクセになる。
朝起きると首が動かなかった。
アラレちゃんやアンパンマンやルパンの気持ちが少しだけわかった。
あまり気分のいいものではない。
首がすわらないので起きあがることができなかった。
仕方がないのでそのまま寝ていた。
今日はパキスタン人も助けにこなかった。
そうして1日が終わった。