真弥の卒業旅行記
これは卒業旅行の記録的文章だ。忘れないうちに早く書いた方がいいだろう。2000年二月の九日から十日までの思い出せる限り全てを記録しておこう。もちろん、俺の主観で書く。それ以外書きようがねえし。
実は八日から俺の旅は始まっていた。長瀬に俺をひろってもらって、広瀬の家で一泊することになっっていた。その夜はひどい雪で、長瀬の車に乗ってるあいだ生きた心地がしなかった。国道二十一号は車線すら見えないほど雪が積もっていたし。
「そ…そんなにとばすなよ。」震えながら長瀬に言う。愛知県民は雪の恐ろしさがわかってねえ。
広瀬の家に無事について、ほっとした。
まあそんなこんなで広瀬んちの近くのコンビニにはいった俺は、迷わずレッドを買った。なぜって?だって俺アル中だもん。文句のある奴はかかってこい。
結局八日は広瀬と長瀬と飲み明かすことになった。馬鹿野郎だ。でも飲み明かしたって言っても四時ぐらいには寝た。俺は。 朝。昨日から降り続いてる雪は高速道路を通行止めにしていた。誰かとんでもない雨男なんじゃないか?とにかく、待ち合わせ場所の御在所のサービスエリアにはいけない。
「まあ、絶対俺達の方が早くつくだろ。ゆっくりしてこうぜ。」広瀬がそう言ったから俺と長瀬は安心してくつろいでいた。
しかし、大竹が予想外に早く富田ん家まで着いたことを電話で知らせてきた。そのころ広瀬は犬の散歩に行っていた。携帯も持たずに。これが遅れた理由だ。俺と長瀬は悪くない。 とりあえず大慌てで広瀬の家を出た。たしか十時くらいだったかな。急いでたけど、ガレージでフェラーリを見してもらった。どうしても見たかったからさ。やっぱかっこいいな。それにしても広瀬の親父はどんなあくどい商売をしてやがるんだろう。…サーフに乗り込むと御在所目指して突っ走った。
結局、俺達が御在所に着いたのは正午過ぎだった。 先に着いてたみんなは、俺の髭にびっくりしていた。
「それ何日位伸ばしたんだ?」みんなに聞かれた。どうだっていいじゃないかそんなこと。
御在所で昼飯を食った。慎太郎兄さんはごっつい高い寿司付きの定食を食ってたな。…腹も膨れて、俺達はいよいよ勝浦にむけ旅だった。 道中、暇で暇でしょうがなかった。サーフには岐阜勢三人と慎太郎兄さんが乗り込んだ。
「真弥、おもろい話無いの?」と聞かれアメリカンジョークを三つほど飛ばしたが、いまいちうけなかった。とっておきだったのに…。ど畜生。下ネタ限定しりとりは御在所迄の道程で俺と長瀬と広瀬でやってしまっていた。しかたないので俺は物語をつなげていく遊びを提案した。 これが予想外に盛り上がった。よく覚えてないけど北斗の拳とか、ガンダムとか、真弥ジョーンズとか黒乳首とか…いろいろ混じってえらいことになった。最初はジョニーとマリアンヌの話だったんだけどね。結局三時間位 やっていたなあ。
途中の道の駅で休憩をいれることにした。ここまできても結構寒かった。看板にある、紀伊半島の地図を見てうんざりした。まだ勝浦まで二百キロちかくありやがる。 さっきの物語を繋いでくのもあきてしまっていた。そりゃ三時間もやりゃあきるわな。しかし山道が終わると海が見えてきた。
…海だ。
俺の頭の中はウニでいっぱいになった。 その後獅子岩ってとこに寄った。俺にはどう見てもライオンには見えなかったが。脇にちっぽけな喫茶店があって、長瀬が言うには、ここらは自殺者が多くてその喫茶店に幽霊が出るそうだ。ほんとかよ。ここで撮った写 真になんか写ってたら信じるけどな。 写真をとると「撤収!!」と、すぐ車に乗り込んだ。君たちさあ…。もっと旅を楽しもうよ。寒かったからしょうがないけどさ。その後車内から地元の女子高生に破廉恥な言葉を浴びせかけるのに夢中になった。おい…捕まるぞ。
ウミガメ公園をこえ、ついに勝浦まで後少しとなってきた。みんなつかれて口数が減ってきた。窓の外を眺める時間が増える。その時……!!誰が見つけたか忘れたが「おい!!あれ!あれ!!」えらい剣幕で窓の外を指さす。見るとそこには!!!<スポットG>とおおきく書かれてるじゃあないか!!どうやらレンタルビデオ店の名前らしい。鼻血が出るほど笑わしてもらった。車内もおおいに盛り上がった。ありがとう、スポットG。
そうこうしてるうちに、勝浦に到着した。 そっからバスに乗ってフェリー乗り場まで送迎してもらうことになっていた。俺はまっさきにシャーク号に目を付けた。あの邪悪な目が気に入ったぜ。しかしホテルの送迎用のフェリーはシャーク号では無かった。あたり前か。 やったぜ!!ついに俺達はたどり着いた。ホテルの客はじじいとばばあばっかで、場違いな感じだ。でもいいさ。とにかく着いたんだから。…しかしギャルの姿が見えないのは非常に気がかりだった。いやいや、きっとどこかに隠れてるんだろう。照れ屋さんなんだから。
チェックインして、少し部屋でくつろいだ後、俺達は釣りにむかった。俺と富田と大竹と慎太郎。コンパ仲間だな。それ以外は部屋でごろごろしてたみてーだ。 餌のエビはかちかちに凍っていて、なかなかうまく針につけることが出来なかった。しかし男はやっぱし釣りだよな。…それにしても寒い。凍えそうだ。岐阜に比べりゃ暖かいには違いないが寒いもんは寒い。しばらくして不意に携帯が鳴った。佐藤からだった。「おまえもっと前にでてやれよ。」上から様子を伺ってたらしい。俺はチキンだと思われたくない一心で海にぎりぎりまで近づいた。…突然の波で草履を履いていた俺の足はぐしょぐしょに海水で浸された。
「ふぁーっく!!」ど畜生。佐藤の野郎、いつかブチ殺す。
二十分位したろうか。当たりさえこない。俺はもう飽きていた。「おい、もう帰ろうぜ。」だが富田はかたくなに「もうちょっとやろうぜ。」と言って聞かなかった。この野郎、最初につってヒーローになるつもりだな。釣った魚は夕食に並ぶと聞いていた。 昌代と井村が降りてきた。「どう?つれた?」 「ぜーんぜんだめだ。」俺はふてくされて首を振った。
すると昌代が「ねえ、慎太郎君。」と俺に言った。…知ってのとうり、俺の名は真弥だ。四年も付き合ってってきたのに、それも卒業旅行だっていうのに名前を…名前を間違えやがった!! 「おいおい、まじかよおまえー…。」あまりのことに座り込んでしまった。昌代は慌てて「あっ、違うよ…」「そういうことってたまにあるよね。」井村もフォローを入れるが、深く傷ついた俺はこのまま真冬の太平洋に身を投げようかと思った。ちょっとおおげさやな。
まあとにかく魚は釣れなかった。あの餌じゃなあ。竿もたんなる竹だったし、時間も時間だったし。場所をフェリーの発着場付近に変えても結果 は一緒だった。ど畜生。 ようやく富田もあきらめて、俺達は温泉に向かった。迷わず露天風呂にはいることにした。やっぱ、露天だろ。
佐藤が加わり露天風呂につかる。「きっもちいーなー!!」冷え切った体が暖まる。「やっぱ釣りやってたから、よけい気持ちいいんじゃない?」慎太郎兄さんが言った。そのとうりだね。釣りやらなかった奴らは、俺達の半分しか温泉を楽しめてないね。坊主だった自分を慰めた。
すっかり満足して部屋に帰った。温泉は堪能したし、次は飯だ。これだよ。こいつを楽しみにしてきたんだよ。
飯は別室の宴会場で食うらしい。なんか小さいお膳が囲むようにあった。想像してたのと違うな…。でもまあ、とりあえず迷うことなく上座に腰を下ろした。王様だしね俺。日本で王様って言ったら、俺かムツゴロウ位 のもんだろう。…ムツゴロウって息子いんのかなあ?いたらさ、そいつって生まれながらにして王子様なんだぜ。…いいよなー。
刺身を期待していたんだけど、ちんまりしたのしかなかった。ちょっとがっかり…。そのかわり鮪の兜焼きが二つでてきた。「目玉 は俺が食う!!」目玉の取り合いになった。「おばちゃん、一番頭悪そうな奴に食わせてやってよ。」DHAの関係だろうか誰かがそう言った。 冗談だったんだけどな僕…。俺の皿にはでかい目玉がふたつものっていた。ちょっとさあ…。こんなの食えねえって。っていうか俺、目に見えて馬鹿?なんで四つしか無い目玉 が二つ、俺の皿に乗ってんのさ?
「真弥!真弥!」皿が俺の前におかれたとたんに俺コールが始まった。…えっ…?みんな僕に何を期待してるの…?仕方なくとりあえず目玉 にかじりついたみた。…苦いようママ。吐き出す。中途半端でブーイングがおこった。……いっきに食えるかよこんなもん!!やってみろっつーの猿畜生!!
仲居のおばはんが話し相手に飢えていたのか、若い男が久しぶりだったのか、やたら喋ってちょっとうざったかった。眼鏡をかけたおばはんね。「ところで、ここにギャルの宿泊客はおりますかな?」一番気になっていた事をそのおばはんに聞いた。「いるわよ、…四十、五十のギャルがね。」ふぁーーーっく!!!ビール瓶でおばはんの頭を割ってやろうかと思ったが、俺はじぇんとるめんなので思いとどまった。はーーー…。…ギャル無しか……。
鮪の兜焼きは、身の部分はみんなうまいといって食っていたが、俺には脂っこすぎてどうも好きになれなかった。ポン酢をかけたほうがよかったのかな?
飲み放題だったのもあってやけくそに飲んだ。飲み放題じゃなくっても俺は飲むけどさ。案の定広瀬は上半身裸になって、猪木をやり始めた。「いくぞおまえらあー!いち、にい、さん、だあーー!!」こればっか。ジャングルファイヤーをやられても困るけど。浩二は最近広瀬のプロレスネタについていけるようになってしまったみたいで、広瀬と絡んで素人には解りづらいネタをしていた。…なるべくはやくこっちに帰って来いよな、浩二…。長瀬はいつものように苛められていた。富田はおでこをピカピカ光らせていた…。
うーん、酔っぱらってたから、この先のことはあんまり思い出せねえなあ。なんかみんなで瓶ビールいっきしたり、プロレスやったりしたっけ。俺は乳輪について熱弁を振るったっけ。
部屋に戻らなければいけない時間になった。こっそりウイスキーを部屋に搬入しといた。サントリーニューオールドだ。もうちょっといい酒期待してたんだけどな。って、さっきから俺、不平ばっかだけど、あの宿泊費ならしゃあないよな。 部屋に帰ってからも俺は飲み続けた。狂ってる。みんなは麻雀やったり、UNOやったりしてた。そういや、麻雀は会話を英語限定という新しい試みをしたな。酔っぱらってるし、脳味噌腐ってるしで、みんな単語が全然でてこなかった。俺はほとんど「ふぁっく!」しか言わなかった。普段とそう変わらない。そういや、UNOの勝負で大竹が昌代との添い寝権ゲットしたのに、結局俺と添い寝したって次の日ぼやいてた。
みんないい感じに酔っぱらった後、俺と富田はみんなをとっておきの場所に連れていった。とっておきって言っても、今日ホテルを探険してた時に見つけた場所だったんだけど。…屋上から、すごく綺麗に星が見えた。もちろん寒かったけど、満天の星空を見て、みんなちょっと感動してたみたいだ。実は俺って、底なしのロマンチストなんだぜ。こん畜生。
いつ眠ったのか、気がつくともう朝だった。二日酔いで頭が痛い。ど畜生。広瀬と長瀬と浩二は先に朝風呂にいってしまっていた。俺達も朝風呂に向かった。 昨日は曇り空だったけど、今日はいい天気だ。露天風呂は海が目の前にあって、天気もいいし最高だった。「来て良かったなー。」ようやくそう思った。そういや、広瀬は海に入ったとか言ってたな。若いねー。
部屋に戻る途中マッサージ椅子があって、俺と大竹は心ゆくまで堪能した。微妙な動きをしやがる、テクニシャンな椅子だった。家に一個欲しい。 温泉からあがり朝飯を食うと、いよいよチェックアウトの時間が差し迫ってきた。そのとき、事件は起こった。井村のコンタクトがどっかいってしまったのだ。みんなで探しまくったが見つからなかった。
とりあえず、俺達の部屋には無いようだったので、ロビーに降りて大富豪をした。いや、こいつは何処でやってもおもしろいな。…ヤニ部屋で何時間もやったのを思い出すなあ。そういや、この旅では、うすのろばかはやらなかったな。あれ怪我すっからなあ。でもさあ、みんな三十歳位 になって集まっても、トランプしたりすんのかな。変わらないでいたいよな。…井村とかおばさんパーマして、ゴムのパンツぱっちん、ぱっちんってしながら「わはははー!」ってドリフのおばちゃんみてえに…ありえるよな。昌代なんかは、すげえ化粧濃くなって「…男は…もうこりごり…。」って鼻から煙草の煙はいたりするのかな。それはそれで面 白えけどさ。
井村のコンタクトはシーツの間にあったそうだ。よかった、見つかって。 旅館内の土産屋でみんないろいろ買ってた。俺は缶ビールを買った。気持ち悪かったけど笑いをとるためだ。俺だって朝からは飲まねえんだぜ。 旅館の前で写真をとった。ホテルの人に撮ってもらった。みんなそろっての写真は稀少だよな。あの写 真をみるたび朝から缶ビールを持った俺を見て「ああ、こいつアル中だったよなあ。」と皆遠い目で呟くことだろう。 フェリーに乗るとまっさきに暴露部に向かった。船尾のところね。ここで佐藤のサングラスを借りて写 真を撮った。髭面にサングラスの俺は、まるでどこかから逃げてきたみたいだった。
フェリーを降りると土産屋に立ち寄った。ほとんどみんななにも買わなかったけど広瀬がするめなんかを買っていたっけ。…視線を感じて振り向くと、シャーク号が悲しげな目で俺を見ていた。「待ってろよ…。…いつか迎えに来るからな。」密かに誓いをたてた。
バスで駐車場に着く。これから何処によって帰るか何も決めてなかったので、とりあえず徒歩でその辺をうろついた。駅の方まで歩いたがびっくりするほど何もなかった。
仕方なく車に戻った。行き当たりばったりでどこかに寄ることにして出発する。こっから俺はエスティマに乗ることにした。サーフの後部座席は足の長すぎる俺には狭かったし、堅くて尻が痛くなるし、何よりも広瀬がマックスをエンドレスで流しやがって、来るときは気が狂いそうになったからだ。ラジオをかけてと言えば、AM流しやがるし。
俺達が先行して走り始めた。…スペシャル方向音痴の俺が助手席でいいんだろうか…?俺のナビではきっと死ぬ まで家にはたどり着けない。車のなかでは、浩二がもっとはしゃいでくれると思っていたが、一番後ろの座席が指定席で寝てることが多かった。車乗るとおとなしいんだね。
十分も行かないうちに、左折すると那智の滝と表示があった。俺達は迷うことなく左折した。本当に行き当たりばったりな旅だなあ。「やっぱ、ヒトラーとかいんのかな?」と言ったが、みんなあまり笑ってくれなかった。
山道を下っていくと滝が見えてきた。どうせしょぼい滝だろうと思っていたが、なかなかでかい滝だった。…後で知ったんだけど、相当有名な滝らしいぜ。誰か知ってろよ。
駐車場を探すのが大変だった。一番上まで行って、料金所があったんで引き返した。すると土産屋のおばちゃんが「ここあいてるよ!」とでかい声で誘導してくれた。「土産はうちで買っててね!!」…パワフルなおばちゃんやなー。那智黒までくれた。こいつは後で処分に困ったけど。
けっこう歩いて滝のすぐしたまで着く。なかなかの迫力だ。おみくじのおばけみたいのがあって、バズーカみてーだ。振り回して遊んでたら、なかから一本くじがでてしまった。しかたなく番号を告げておみくじを受け取る。吉だった。「おほっ、やったぜ。」漠然といいことが書かれてたので百円玉 を置いといた。凶だったら建物に火をつけようと思ってたけど。富田もおみくじを引くと…中吉だった。ど畜生。やっぱり火をつけようと思ったが、俺はじぇんとるめんなのでやめた。
木片を燃やして願い事をするのがあって、俺は木を買って放り込んだ。普段は迷信深くないんだけどさ、結構みんなやってたよな。熱心に手を合わせていると、大竹が「…卒業出来ますように…だろ。」と言った。むかっ!図星なのがよけいむかつく。
やはり写真をとることになった。みんなで一緒に写したかったので、おねいさんに撮ってもらうことになった。…ギャルだよ!!こんな山奥でギャルだよ!!!それもかなりかわいいぞ!年は俺達と同じ位 かもっと下だろう。真っ白いコートを着ていた。つまんないこと覚えてんな。
「…俺、おねいさんと写りてえ…。」しかし望みは叶わなかった。まあ全員集合の貴重な写 真だからね…。おねいさんにみとれて鼻の下を伸ばした俺。この写真を見る度に「ああ、こいつ、えらい女好きだったよなあ…。」と皆遠い目で呟くところだろう。
「いやあ、いい目の保養になったね。」と慎太郎兄さんと話してると大竹がトイレに行った。俺もつぎにいつトイレがあるかわからないので、念のため放尿しにトイレに向かった。…大竹の横には4、5歳の子供がいた。その子供がじーっと大竹のち○ぽを見ていた。
「おめー、そんなに見るなよー。」大竹が慌てる。
するとその子は「…ふんっ。」と鼻で笑って去っていった。
…おいおい、子供に完敗ですか、大竹君? かなり傷ついたみたいで帰りの坂道、大竹の足取りは弱々しかった。げ、元気出せよ…。
車を停めた土産屋でみんな那智黒を買った。何も買わずに帰ったらおばちゃんに殺されそうだったし。
那智の滝を満喫した俺達は次の目的地をウミガメ公園に決めた。 帰りも同じ道なので、当然<スポットG>の前をふたたび通 った。「しかし、店員さんも大変だよなあ。電話出るとき、はい、スポットGです、って毎回言わなきゃなんねえんだもんな。」こんな話で車内は盛り上がった。サーフの中も同様だったんじゃないかな。とにかくありがとう、スポットG。
それからしばらくして、ウミガメ公園に着いた。 「おい!みたかよ、チョップ馬場!」降りるとすぐサーフに乗ってたみんなが言った。なんでもここまでの道程でチョップ馬場っていう店があったそうだ。何の店か知らないが俺達は見逃していた。…チョップ馬場…。見たかった!!ど畜生。引き返してえ。
ウミガメ公園は一応ウミガメがいたんだけど…。「つまんねえぞ!」を連発してしまう所だった。だいたいちっとも公園じゃねえし。なんか小さいうさぎと亀の乗り物があるだけで、芝生さえない。井村と昌代はそれに乗って写 真を撮ってた。五歳以上は乗らないでくださいって書いてあったんだけど。…でも生きたウミガメに触るのは貴重な体験だった。小さいのから大きいのまでいっぱいいた。亀に触らないでくださいっておもいっきり書いてあったんだけど。おかまいなしに亀と戯れた。だって誰も咎めるヒトが居なかったし。というか俺達以外誰もいなかった。だってつまんねえ所だもんな。
ウミガメに飽きて俺達は道路を挟んで真向かいにある海に向かった。みんな走っていたよな、あんとき。どうして走ったんだろ?わけわかんねえけど、なぜかみんなで走った。んふー、青春だよなあ。
水平線が見える。何か叫びくなる景色だった。結構この辺の海はきれいなんだなって感心した。地面 は砂浜ではなく小石がごろごろしてたけど。誰から始めたのか、足下の石を拾って水平線に向かって水切りをする。むふー、青春だよなあ。 当然、太平洋をバックにして写真を撮った。何枚か撮った後、パノラマで撮ることになった。俺はカメラマンを名乗り出た。漁師に頼むわけにもいかねえし。
「ハーイ撮るぞ。」水平線の前にみんなずらーっとならんだ絵はなかなか良い感じだった。うん、いい絵だ。俺はこっそり右上にチャーリーのはいるスペースを作っておいた。いやほら、卒業アルバムとかで欠席した奴は、右上に顔だけ丸い囲いで載るじゃない。一枚写 したところでちょうどフィルムが切れた。え?俺は!?…一緒に…写れねえの…?ボクモマルイカコイナノ…? カメラマンを引き受けた事をちょっと後悔しながら車に戻った。一緒に写真を撮れなかった、ちょっと落ち込んだ俺に、大竹が「まあ、いうても卒業旅行やしな。」と追い打ちをかけた。…そりゃ、俺はさ…卒業できねえけどよお…。あんまりじゃねえか!!このまま真冬の太平洋の荒波にさらわれてしまおうかと思った。これはおおげさじゃないぜ。大竹のばーか!小さいおちーんちーんー!!!
車に戻った。「さあ、こっからどうするんだ?」ということで、とりあえずうまい昼飯を食うことになった。そりゃ寿司だろ。海の幸だろ。尾鷲まで行ってからうまい寿司を食おうということになった。
道中、やっぱり暇だった。古今東西ゲームをして罰ゲームを科す。昌代は寿司屋で寿司食いねえ(シブガキ隊)を歌うか、お子さまランチを頼むことに、大竹は赤福を頬張りながら寿司を食うことに、慎太郎兄さんは鼻から伊勢うどんを食うことになった。誰もやらなかったけどね。
とりあえず回転寿司屋を見つけて入った。もう、二時近くになっていて腹ぺこだった。しかし、ついに…ついにウニを食える。
…俺は回転寿司は初めてだった。浩二や富田に「食った皿はもとに戻さなきゃだめだぜ。」「入るときにちょっとした儀式が必要なんだ。」「当然自分もまわらなきゃいかんぞ。」と、いろいろ吹き込まれた。
本当にやってしまいそうだ。
店の中に入る。もう昼食の時間はとうに過ぎていて、寿司を握るおいちゃんは完全に不意をつかれたって感じだった。だって入った直後は、何にも回ってなかったし。
とりあえず、お茶の入れ方にびっくりした。なんか歯医者みてえだ。それからしゃりを機械で握ってやがる。ブルジョワの俺には信じられない光景だった。わさびもなんか水っぽいしさ。
皿の色で値段が決まってるらしい。二番目に高いウニの皿を迷わず取った。だ、だってさあ、俺ウニを食いにきたんだぜ。本当は北海道にいきたかったんだぜ。遠慮しながら食ったってしょうがねえだろ。ウニの皿を持って写 真を撮ってもらった。俺は百万ドルの笑顔をしていた。
新鮮とは言い難いウニだったけど、やっぱり旨い。カウンター越しにみんなそれぞれ食い始めた。…寿司屋って会話が乏しくなるよな。富田がコーヒーゼリーを食う。お前、寿司屋でバイトしてんのに邪道なことすんなよな…。
…しばらくして、耳慣れない前奏のバックミュージックがかかった。え…?まさか…?そう、そのまさかだった。寿司食いねえ(シブガキ隊)がかかった。ナイス選曲!!あがり!あがり!あがりがりがりがり…。ウーロン茶だと思って飲んだら、リンゴジュースだったときくらいびっくりした。とにかく最高だぜ!!こん畜生!!!
値段だけあってネタはけっしていいもんじゃ無かったけど、俺は満足だった。だって寿司食いねえ(シブガキ隊)が流れたから…。それに俺は高い皿をいっぱい取ったし。
予算の一人千七百円、ぴったしぶんだった。いやあ、こういう偶然ってあるんだな。
腹も膨れて、伊勢神宮にむかうことになった。この時は。
「おい大竹、なんか小話してくれよ。」俺は運転している大竹に言った。
「そうだな…。」しばらく考え込んだ後、「俺さ、キスマークのグローブ買ったんだよ。で、ボード行って初めて使う時にさ、キスマークのロゴんとこがちょっとほころんでたんだ。でもまあ、気にせず滑ったんだな。…そんで終わってみてみたらさあ、ロゴの上唇が無くなっててよ、明太子になってたんだよ。」 なかなかおもろいやんけ。…もう二つ位小話をしてもらったが後は印象が薄くて忘れた。つまりおもしろくなかったって事だな。
「子供が産まれたらさあ、どんな名前つける?」はなすことが無くなってしまったので、そんなことをみんなに聞いてみた。
「林檎だな。」佐藤が言う。
「おいおい、林檎で成功してるのは椎名林檎だけだぜ。」と大竹が口を挟む。そういうことじゃなくって、佐藤は姉妹に統一した名前をつけたいそうだ。次女はみかんだとよ。しかし男の子が産まれたらどーすんだろう。…佐藤ドリアン…?…佐藤いちぢく…?まあ男の子はおいといて、それは良い考えだと思い、俺も統一した名前を考えた。やはり、自分の好きなもので名前を付けたいな。俺の好きなもの…?寿司だな。よし、寿司ネタで俺のまだ見ぬ 息子に名前を付けて、暇を潰してみよう。「…長男は…ウニ夫だな。」ぼそりと俺は言った。やはりウニが一番好きだし。次男は…かに味噌で決まりだよな…。二番目に好きな寿司ネタだから。しかし、かに味噌だけでは名前としてまずいよな。「…かに味噌太郎でどうだろう。」そう言うと爆笑された。いや、ちょっぴりマジなんですけど…。女の子にまぐろはやめといたほうがいいな。だって夜もまぐろだったら困るもんな。………ごめん…。
しかし、ウイスキーの銘柄って手もあるな。渡邊山崎。なんか名字が続くみえてだな。渡邊響。あっ、かっこいい。やっぱ高い酒は違うよな。渡邊オールド。…赤ん坊には似合わねえな。渡邊いいちこ。おっ、女の子だったらばっちりじゃん。これは焼酎だけど。浩二は馬の名前つけそうだよな。今泉ダンスインザダーク。…ハーフ?って以前に名前長すぎ。広瀬はプロレスラーの名前だろうな。アントニオ広瀬…。…広瀬なら付けかねねえな…。誰か止めろよ。俺は止めねえ。
またしても道の駅で休憩を取った。伊勢神宮には時間の都合上、寄らないことにした。ああ、でも、本場の赤福食いたかったな。甘いもんはあんまし好きじゃねえけど、なんかすごくおいしそうに井村が言うからさあ…。
さすがに疲れたんだろう、大竹が運転を代わってもらいたがってたので、俺が運転することになった。…いきなりエンストした。だ、大丈夫かな…俺。
とにかく高速に乗るまで運転した。途中やたら工事をしていて、坂道発進ばりばりだ。エンストしないようにやたらアクセルを踏み込んだ。
いや、なんかすごく疲れた。高速に入る前に慎太郎兄さんと運転を代わってもらった。兄さんはがんがんとばして、サーフをちぎった。ちょっと怖かった。でも、百二十キロ位 しか出してなかったから普通だよな、今から考えると。うちの親父は家族乗せてるっていうのに平気で百五十キロ位 だすし。
「…ジャイ子のペンネームって、なんだっけ?」ドラえもんの話で盛り上がった。二十二歳がする話じゃなかったな。俺から始めたんだけどさ。あっ、そういや129センチ129キロだったぜ、ドラえもんの身長と体重。なんかドラえもんは浮いてるから体重はゼロって言ってやがったけど、ちゃんと書いてあったもんねー。帰ってから調べたもんねー。…なにやってんだろう俺…この大事な時期に…。(就職活動中)…とにかくのび太のママの身長は2メートル以上ある。こいつだけは譲れないよ。
とばしたのもあって、御在所には思ったより早く着いた。最初の集合場所。解散もここだった。やっとここまで戻ってきたな。もう、旅も終わりだ。
五分ほどして、サーフも御在所に着いた。俺と慎太郎兄さんはスピードくじを買った。一等を当ててみんなを海外につれていってやるつもりだったけど、世の中そんなに甘くなかった。残念。しかし兄さんは一応当たった。二百円出して百円…。
ロビーみたいなとこで茶を飲んだ。紙コップで飲むお茶は、学校のお茶と同じ味で、なんだか切ない味がした。…学校でこれから一人で飯を食うんだよな。孤独だ…。ちりめんじゃこに、たまに入っている小さい蟹くらい孤独だ…。
…とりあえず、ここで解散だ。俺達は一本締めをして別れることになった。
「よーーっ。」ぱんっ。なんか気持ちよかった。やっぱり日本人だな。
「気いつけてな!」「おまえらもなー!」そんなことを言いあいながら俺達は別 れた。
「いやあ、結構楽しかったよなあ。」満足げに語っていたとき、自分の携帯を忘れて来たことに気がついた。
「…あ…。」
長瀬の携帯に電話がかかってきた。「真弥!おまえ携帯忘れてるぞ!!」富田の声だ。
…やらかしちまったあ!最後の最後で!!エスケープゾーンに停車して、携帯を受け取ることになった。
みんなの視線が冷たかった。「…こんな馬鹿でかい携帯忘れんじゃねえよ…!」明らかに、そういう視線だった。俺は平謝りに謝った。家までの車の中ではかなり落ち込んでしまったよ。でもさ、こうして文章にしてみると、最後にオチがついたようで良かったじゃないか。
ふー。結構長くなったな。読み返してみると、なかなか楽しい卒業旅行だったな。またみんなでどっか行けるといいよな。ま、無理だろうけどさ。
…って、来年は俺の卒業旅行につきあってもらわなくちゃあ!!……再来年かも…しんないな…。
<終>