犬の甲状腺機能低下症について
総T4、FT4、cTSHの評価
02.10.27.
臨床病理
高TCho
高TG
非再生性貧血
高GGT
好中球減少症
特殊検査
FT4とcTSHの測定が最も正確な結果をもたらす。
総T4(総サイロキシン)
総T4正常値
犬
1.2-3.9μg/dl
長所
低費用。
マーカーとして高感度。甲状腺機能低下症では総T4が正常値なことは少ない。
短所
特異性は低く、低値でも甲状腺機能低下症は不確定。
偽甲状腺機能低下症で減少。
正常値以下の日内変動あり。
ステロイド、サルファ剤、NSAID、バルビツールで減少。
注意の項目を参照。
評価
総T4の評価
>2.5μg/dl
一般に低下症はありそうもない
<1μg/dl
特徴的な徴候を伴っていれば低下症が強く疑われる
(ただし偽甲状腺機能低下症も当然このレンジに含まれる)
偽甲状腺機能亢進症との鑑別には確認検査を行う。
総T4>2.5μg/dlの場合でも臨床的に甲状腺機能低下症が疑われる場合には確認試験を行う。
総T4の再測定の際には6-8週間後、あるいは徴候が軽快した後が望ましい。
FT4(遊離型T4)
T4の代謝活性型。平衡透析法による測定が必要。
FT4正常値
犬
0.8-3.5ng/dl
長所
甲状腺組織の状態をより厳密に反映。
偽甲状腺機能亢進症や薬物の影響を受けにくい。
甲状腺機能低下症との特異性が高い。
短所
高費用の透析法による測定が必要。
NTIやバルビツールでときおり低値。
甲状腺機能低下症の初期において、低値から正常値を示すことあり。
総T3
総T4以上の情報は得られず、診断的意義は低い。
様々な疾患で低値がみられる。
甲状腺機能低下症でも正常値がみられる。
T4、T3減少による負のフィードバック消失によるTSHの増加で、T3が優先的に分泌されるため。
正常範囲に大きな幅があり、しかも検査センターごとにばらつきがある。
cTSH(内因性甲状腺刺激ホルモン)
cTSH正常値
犬
<0.6ng/ml
長所
低T4の鑑別の一助となる
総T4低値、cTSH正常値が偽甲状腺機能低下症の典型
短所
cTSH単独測定は行うべきではない
サルファ剤使用、偽甲状腺機能低下症の回復時に上昇
甲状腺機能低下症の20%で正常値
甲状腺以外の疾患の一部でcTSHの上昇がみられる。
評価
一次性甲状腺機能低下症ではcTSHの進行性の増加とFT4の減少がみられる。
代償性甲状腺機能亢進症ではFT4濃度が正常でcTSHが正常から高値。
一次性甲状腺機能低下症では下垂体に対するT4、T3の負のフィードバックが消失するため、THS分泌が増加する。
そのため甲状腺ホルモン濃度は正常になる。
TSHに反応できなくなるほど甲状腺の破壊が進行すると甲状腺機能低下症が発症する。
TgAb(サイログロブリン抗体)
長所
信頼性の高い検査方法が利用可能
偽陽性結果は甲状腺の病態をよく示唆
短所
甲状腺機能の評価は得られない
陰性結果は甲状腺疾患を否定しない
TSH刺激試験
牛のTSHは使用できない
10%の症例で不明な結果
この場合、数ヵ月後再検査
TRH刺激試験
TRHに反応がなくても甲状腺機能低下症は不確定
現在利用できる基礎検査以上の利益は極めてわずか、推奨せず
TRHに対するcTSH
通常の基礎検査を超える利点はない
注意
偽甲状腺機能低下症候群
加齢、飢餓、手術や麻酔処置後、糖尿病、クッシング症候群、アジソン病、腎疾患、肝疾患、ジステンパー、ニキビダニ症、細菌性皮膚病、全身性感染症、脊椎板疾患、IMHA、心不全、リンパ腫…
薬物の影響
下記の投薬が行われてた場合、甲状腺の評価は8wkの休薬が必要。
ステロイド
甲状腺ホルモン濃度を低下、TSH分泌低下も起こすことがある。
サルファ剤
直接的に甲状腺ホルモン合成を抑制、可逆性の甲状腺機能低下症を引き起こす可能性がある。
バルビツール
総T4とFT4濃度の両方を減少させる。
総T3、総T4を減少
アンドロジェン、サリチル酸、ヘパリン、ジアゼパム、スルフォニル尿素、フェニルブタゾン、ジフェンヒドラミン、フェノバルビタール、プリミドン、グルココルチコイド
総T4のみ減少
フェノチアジン
総T3を減少
造影剤
総T3、総T4を増加
エストロジェン、5-FU、ハロセン
総T4を増加
脂肪酸、造影剤、プロスタグランジン、インスリン
手術や麻酔処置の影響
全身麻酔は甲状腺ホルモンを約36時間も減少させる。
犬種
グレイハウンドの総T4、FT4濃度は一般犬種の約60%。T3レベルは正常。
スコティッシュディアーハウンドも総T4が低い。
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