Sn/InSb(111)A系における成長様式のRHEED強度振動法による評価
(早大理工) ○大友 貫、 大坂敏明
[1.緒言] InSb{111}A,B-(2×2)基板上でのSnの成長過程については、RHEED強度振動法、AESやSTMを用いて調べられてきている[1,2]。図1にSn/InSb(111)A-(2×2)系の結果を示す。この図から分かるように、蒸着初期に222on-Bragg条件下で、鏡面反射強度が増加している。これは、従来のRHEED強度振動法の理論では説明が付かない。一般に、蒸着初期は、表面の平坦性が低下することから、鏡面反射強度が減少するのが普通である。この現象は、はじめ、基板表面上に存在するIn‐vacancyサイト上にSnが優先的に吸着することにより平坦性が向上したことによると説明された。ところが、EguchiはSTMを用いて同系の観察を行った結果、SnがIn‐vacancyサイトだけではなく、T4、H3サイトを含んだ3つのサイト上にランダムに吸着することを見出し、従来の解釈を否定した。彼はこの鏡面反射強度増加を、Snの吸着により最表面In層がバルク理想位置に復活したことによる、Bragg反射強度成分の増加として説明した。しかし、本系について理論的な強度計算にもとづく解析は未だ行われておらず、Eguchiらの解釈の妥当性についても決着が付いていない。そこで本研究では動力学回折理論に基づいた強度プロファイルの計算を行い、実験結果との比較を行った。
[2.実験] 基板であるInSb(111)A‐(2×2) 表面は、RHEEDチャンバー内で加熱清浄化、ホモエピタキシャル成長を施すことにより得た。その後、Snの逐次蒸着を行いロッキングカーブを測定した。さらにそれらを同一視射角でプロットすることにより、RHEED強度振動プロファイルを得た。
[3.結果] Eguchiの解釈をもとに動力学計算を行ったが、実験結果を再現することはできなかった。そこで、Sn蒸着に伴い非弾性散乱が強くなることを仮定して、動力学計算を行った。その結果、図2に示すように、実験結果をよく再現したRHEED強度振動プロファイルを得た。したがって、実験で得られたSn蒸着初期の222および333on-Bragg条件でのRHEED強度のふるまいは、Eguchiの解釈に非弾性散乱の効果を加味することにより説明できる。
[参考文献]
[1]T.Osaka,H.Omi,A.Yamamoto,A.Ohtake,Phys.Rev.B50,7567(1994) [2]江口豊明 早稲田大学博士論文(2000)