4.大学生活
〜煩悶編〜

高橋:大学生活〜煩悶編〜とは?
雄一:悩み苦しんだ・・・っつーことかな。
高橋:何をそんなに悩んだんですか?
雄一:まず、一番大きな出来事は、夏休みに入ってからのことだった。7月の終わりくらいに高校野球の地区予選があるの。甲子園出場校を決める大会。それで、オレも1年前は長野県大会で闘っていたわけで、色々な方から応援をされた。一番応援してくれたのはやっぱり後輩だった。その後輩たちが今年は闘っている、だから必ず応援には行こうと思っていたわけだ。
高橋:それで、実際に応援に行った?
雄一:もちろん。一生懸命に応援をしてきた。もう現役の選手よりも気合を入れて応援してきた。そこで野球部の仲間たちと久しぶりの再会を果たした。先輩や後輩やコーチ、監督など、たくさんの人たちと再会をして、卒業してからの事や、現在のことなどたくさんの話しをした。本当に楽しいひと時で、できればずっと話していたかったし、一緒にいたいというか、別れるのがつらかったりもした。
高橋:それが苦しかったのですか?
雄一:いや、別にそれが苦しかったわけじゃないんだよね。その時は、みんなとわいわいやって、楽しんで、もちろん仕事があるからずっといられるわけじゃないし、すぐに帰ってくることになったし、帰ってきた。問題はその後だったというわけ。
高橋:どういうことですか、その問題というのは。
雄一:みんなと会ったり、高校野球の厳しさを見てきたり、監督さんと話しをして、オレ自身の昔の生活を思い出してしまったんだよね。高校時代の生活を。それが大きな問題だった。どういうことかというと、大学に入ってから、とにかく何かをやろうとして、目標も見えずにただずっと走り続けてきたわけだ。それで、大きく体調を壊してしまった大学生活前半。
高橋:そうですね、それが前回の〜激闘編〜でしたよね。
雄一:そうそう、それで東京に帰ってきて、「何やってんだ、オレ?」ってなことで悩みだしたわけ。「高校の時はもっと頑張っていたじゃないか!」「もっとずっと充実していたじゃないか!!」というようにね。だけど、その頑張りや充実っていうのも、野球があってのものだから、決して今現在の生活と比べられるものではないんだ。無意識のうちに頑張っていたし、忙しくやっていただけで、そのことには全く気づいてなかった。
高橋:前回も言っていましたが、大学生活と高校生活を比べていたと?
雄一:無意識的にね。高校の時は「野球」という目標というか、打ち込めるものがあった。でも今ではその「 」に当たる部分がないわけ。だから走りたくても走れない、それが大きな悩みだったのよ。しかも無意識的というのがポイントで、自分自身ではどうして悩んでいるのかよくわかってないってわけ。
高橋:そんな状態がいつまで続いたんですか?
雄一:夏休みに入って、帰郷して、帰ってきてから悩みだして・・・そのまま1年生の後期はずっとそんな感じだったかなぁ・・・なんとなく。でも2番目に大きな出来事があって、良い方向に向かった。
高橋:それは何ですか?
雄一:それは、サックスのレッスンに通い始めたこと。
高橋:サックス・・・ですか?
高橋:そう、もちろんそれまでも学校のサークル(ジャズ研)でやっていたんだけど、もっと上手くなりたかったし、中学の時から、大学に入って野球をやってなかったらサックスをやりたい!!と思っていた。本当は大学に入ってすぐに行こうと(レッスンに)思ってたんだけど、もしかしたらサークルで頑張っていれば上手くなるかもしれない。と思っていた、それが甘かっただけなんだけどね。
高橋:サークルではダメだってことですか?
雄一:簡単に言ってしまえばそういうこと。だって、何も教えてくれないというか、聞いてもよく分かってないようだし、独学でやろうとしても、道をそれたり、間違っているやり方で練習を続けていても、本当の基礎的な部分がしっかりしていなければ、それ以上の上達はない、っていうのは野球を通して分かっていたからね。だから、上達を望むのならば、ガイドになってくれる人が必要だ、ってことは習うのが一番早いってこと。
高橋:で、誰に師事したんですか?
雄一:安保徹さんである。実は安保さんよりも先に、スクールの方を決定したんだけどね。学校の近くに「飯田ジャズスクール」というスクールがあって、そこにサックスのレッスンプロが3人ほど来て教えていたわけ。その中の一人が安保さんだったっつーこと。本当はさ、「オレはあの人に習うんだぁ!!」っていうのがあって、そのプロのところに弟子入りをするんだろうけど、オレはどのプロがどういうスタイルで、どういう演奏方法で・・・って言うことを全く知らなくて、ただ自分がうまくなるために、基本的なことを教えてもらえればいい、そう思ってただけだったから、まずスクールを決めたわけ。近かったから(笑)。
高橋:それで、そのスクールは、安保さんはどうだったんですか?
雄一:スクールはどうでもいいんだけど、安保徹という人がなかなか偉大な人物で、今までに出会ったことのないような、俺とは明らかに反対方向に進んでいるような人なんだけど、それがまた魅力的で、しかも面白い人だった。何よりもサックスが素晴らしかった。
高橋:へぇー、どんな感じなんですか?
雄一:それがね、レッスンといっても、はじめの頃は全くサックスなんて吹かなくて(笑)、ずっと二人で話をしていたり、安保さんの話しを聞いていただけなんだよね。それがレッスンだった。っていうのは、ジャズをやる者、サックスをやる者にとって重要なことっていうのは少なからずあるわけで、その点について、安保さんから話を聞いたり、理解を深めていったわけだ。
高橋:それがそんなに重要だったんですか?だって、レッスン代だってあるわけでしょ?
雄一:もちろん、それもあるけど、今考えてみるとそれは安保さんの配慮だったのでは?と思うな。
高橋:配慮?ですか。
雄一:そう、ジャズを好きになるための、サックスを好きになるための講義みたいなもので、ジャズやサックスの先人たちの魅力や、音楽そのものの魅力というようなことをずっと話してくれたわけ。それを通して俺はすっかりジャズの虜になり、またサックスの虜になっていった。それまでも当然好きだったんだけど、根本的に好き、いや、虜になったんだな、やっぱり。そしたらもう夏までの悩みがある程度解消された。本当に安保さんとの出会いは貴重なものだった。
高橋:悩みが解消されたとは、どういうことですか?
雄一:そうね、とりあえずジャズ、そしてサックスに夢中になったっていうことかな。だから走ることができた。ずっとサックスに夢中になって、夢中になって練習をしたから。それに打ち込むことができた。だから深く考えるよりも行動ができたから、悩みが解消されたっていうわけだな。本当に良かったし、素晴らしいことだと思う。安保さんのライブにもよく行くようになったし、その他の人のジャズ関係のライブにも度々行くようになった、お金がある限りだけどね。
高橋:それは良かったですね。ですけど「ある程度解消」と言いましたよね?
雄一:・・・確かに。それはやっぱり全てに満足することはできなかったからかな。まだ自分自身で納得できていない部分というのがあって、そのことについて真剣に考え始めたのが、1年生の冬辺りかな。ちょうど正月くらい。
高橋:一体、どんなことを考えたのですか?
雄一:そうね、これからの自分・・・かな。将来の自分について。格好よく言えばだけど。それまではずっとサックスの練習に打ち込んできたわけなんだけど、そのまま学校を卒業したら、一体オレはどうなるんだろう??と思い始めたわけ。結局サックスで生計を立てるなんて、そこまでは全然考えられなかったし。まあ、安保さんは「プロになろうと思えばなれるよ、今の日本だったらね」って言ってたけどさ、ずっと野球をやってきて、一生懸命頑張ってきて、それでも素質+努力+運などがあって、それでもプロでできるのはほんの一握りだってわかってたし、音楽の世界だって特別な世界だから、大学から始めた若造がそこまで考えることなんてできなかったよね。
高橋:では、音楽の世界ではなく、違う世界を目指そうと?
雄一:まあ、それはまた次回っつーことで、ヘッヘッヘ。
高橋:なぁ〜っ、おいしいですねぇ。
2002.5.7.Th.