比較文化論(垣本)スケジュール

 

テーマ

 

参考図書

 

第1回 比較の前提、分類について

    様々な分類とその根拠

これからこの授業で何を分類・比較しようとしているか予告(オリエンテーション)

「分類という思想」池田清彦、新潮選書、1992

第2・3回 アジアとヨーロッパ、どこが境界線?「西洋は海に面し、東洋は山に面する」ポール・クローデル

ヘロドトスの「歴史」:古代ギリシアは「アジア」をどう見ていたか

 

第4回 山の文化と海の文化

日本と韓国の海女さん

 

第5・6回 礼儀の歴史、西洋と東洋、人文主義の祖、エラスムスが言ったこと、

近代のエチケット:時間厳守

食文化の発達、グルメ(美味学)の祖、ブリア・サヴァランの生涯

「ヨーロッパ文化と日本文化」ルイス・フロイス、岩波書店、1991

「エラスムス」斎藤美洲・清水書院

「エラスムスの勝利と悲劇」ツヴァイク、みすず書房

「世界の名著22エラスムス/トマス・モア」エラスムス/トマス・モア、中央公論社

『美味礼讃』ブリア・サヴァラン 岩波文庫、上・下

第7回 嗜好の歴史、西洋と東洋、酒・お茶・コーヒー、ココア、麻薬について

「楽園・味覚・理性」W・シヴェルブシュ、法政大学出版局

第8回 男性と女性

    

「日米の女性兵士をめぐるジェンダー・イデオロギーの変遷」佐藤文香、女性学7号、日本女性学会、1999

第9回 美意識の比較、西洋と東洋

「粋」、「赤穂浪士」

「「いき」の構造」九鬼周造、岩波文庫、1979

10回 日本語の敬語、英語(そのほか、印欧言語)のポライトネス表現、呼称の比較

「人称詞と敬語」三輪正、人文書院、2000

「敬語を使いこなす」野元菊雄 講談社現代新書

「言葉の礼儀作法」Ilse u. Ernst Leisi,1992 同学社

第11回 人と出会って、儀礼表現、感情を表現する、どうして国によってこんなにちがうのか、「ありがとう」か「すみません」か

Speaking Politely”(英語表現のエチケット)、マクミラン・ランゲージハウス、1986

 



 

礼儀作法の歴史

中世

 

作法書の始まり『作法書』livre de manière

『騎士の礼儀の書』レーモン・ルル(13)カタロニア

『勇気の翼』ラウル・ド・ウーデンク(1230)14条の騎士の心得

騎馬試合carrousel

ロマンス語で騎士物語が書かれたため、ロマンス・ロマンチックということばが生まれた。

騎士の衰退:12c末より石弓登場、1313年以後火薬登場、ゼンパハの戦い(1386)スイス連合×ハプスブルクの騎士軍でスイス民兵の勝利

17c初め、『ドンキホーテ』百姓娘をお姫様と思い込む

 

"ménagier de Paris"(1393)主婦のための家政書

 

1516世紀

 

3つの発明「印刷術」「火薬」「羅針盤」

ルネッサンス…イタリア

人文主義・・・ヒューマニズム、当時の学問の権威「神学」に対してできた語。北方、オランダ・イギリス

ロッテルダムのエラスムス(14691536、オランダ・ロッテルダムで聖職者の私生児として生まれる)近世のベストセラー作家:『痴愚神礼賛』、『格言集』ギリシア語ラテン語古典の様々な故事成句を集めたもの「ブルータス、お前もか」「ローマは一日にしてならず」、『対話集』』ラテン語の教科書として書かれたもの)、『少年礼儀作法心得』

イギリスのトマス・モア(14771535ヘンリー8世への大逆罪を問われ刑死)『ユートピア』(1516)

死後の評価:1558エラスムスは1級の異端者となり、全著作が禁断書となる。

1935モアはカトリック教会により聖人になる。

日本とエラスムスの関係

日本でのキリスト教受容…イエズス会(カトリック)

1600年、オランダは東洋へ5隻の船を派遣、1隻(デ・リーフデ号=慈愛号)のみ大分県臼杵湾に到着、生き残りが家康に接見、ウィリアム・アダムス―>武士となり三浦按針と改名、ヤン・ヨーステン―>オランダ東インド会社駐在所を開設、住んでいた地区が彼の名前をもじって「八重洲」と呼ばれる

デ・リーフデ号のへさき飾りだった木像(エラスムスの木像)栃木県佐野市竜江院に(現在は東京国立博物館蔵)

 

主人が肉を切り分ける carving()  tranchieren()  trancher()――->手づかみ食

めいめいがナイフを持参 Messer < Sachs(古代ゲルマンの)短刀、石刀 部族の名前、人の名前にもなっている。

スプーン…スープは肉汁に入れたパンを指した、それを手づかみで食べ、汁は容器から直接吸った。

spoon  (英)<古ノルド語「木屑」  Span(ド)木屑

Löffel(ド)  「なめる、ぴちゃぴちゃ音を立てて飲む」----lap(英)ぴちゃぴちゃ飲む

木片を削ってスプーンを作った。巡礼・こじきも自分のスプーンを持っていた。

den Löffel abgeben 死ぬ

フォーク・・・ケルト語「木の枝の叉」 ラテン語:furca、農機具  engl. fo1k

                                    ドイツ語:Gabel ・・・・   gable切妻屋根 

皿・・・席を示すため (フ)assiette  ( <座らせるasseoirから)

 

イタリア:『廷臣の書』(1528)バルダザーレ・カスティリオーネ

学問と武術の両立

 

『ガラテーオ』(1558)デッラ・カーサ

「配慮」−相手の五感へも・・いやな音をたてない、歌が下手だったら歌わない、・・

冗談は話したいかではなく、話せるかどうかが肝心。「話術」

「敏捷」

飲食時には、「体を掻かない」「楊枝をくわえたまま立ち上がらない」「だらしない格好をしない」

「公共の場で自分の体とかかわらない、髪をとかさない、ただし食前であれば人前で手を洗ってよい」「意味もなく笑わない」

女性のおしゃれについて

『女性の化粧について』ボローニャのピエトロ・デ・パドーウェ(14c)

エリザベス一世(15581603)絹の靴下、イタリア製香水つき手袋

カトリーヌ・ド・メディシス(151989)メディチ家からフランス王家に嫁入りした。流行をイタリアからフランスへもたらした。フォーク

イギリスへはフォークは1608年にもたらされるが、一般化するのは1688年名誉革命後

 

17世紀フランス

ルイ14世(在位16431715)フランス作法がイタリア作法に代わる

1682年ベルサイユ宮殿に移る エチケット(立て札)…ベルサイユ宮の庭の立て札、庭が荒らされないように通路を示す。ticket荷札

サロン:ランブイエ侯爵夫人・スキュデリー嬢・ルード公爵夫人

『宮廷の精神』(1662)会話の手本100を載せる

節度の法則:人間の持つ魅力は神に与えられたもので誰もそれを教わったり見習ったりすることはできない。しかし自分に魅力がないと思っている青年でも節度を持つことで他人の反感を避けることはできる。つまりあまり野心的であったり派手であったりしてはだめだが、同時に他人に必要以上に同情することも感心できない。落伍者や不幸な人に哀れみを持つと自分の心の平静が乱れる。いついかなるときにも自分の態度を完全にコントロールすべきであって・・・

17cの社交人 honnête homme

 

フランス革命の影響

1793 服装の自由化宣言

merveilleux(se) 革命後奇妙な服装で歩いた人々、女性は体を締め付ける服をやめガーゼのさやのような服を着た。incroyable 伊達者  vous をやめtuで呼ぶ合う

『上品な集まりのための完全な手引き』(1829

-口一杯食べ物を詰めて話さないこと-がつがつ食べないこと-会話を独占しないこと

『恋愛論』スタンダール(17831842)政略結婚批判:親同士が相談をまとめる、話がまとまると父と息子が相手の娘の家に挨拶に行く  interview

訪問の作法:名刺の使い方

 

19世紀イギリス

フランス革命によりエチケットの中心はイギリスへ  gentlemen

ビクトリア女王(在位18371901

ビクトリア朝文化・・極端にお上品、直接体を指すことばはだめ

ブルーマー夫人登場:1851年ロンドン万国博覧会で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敬語と呼称

 

敬称 Sie(ド) vous(フ)  +苗字(姓)(ラテン語の2人称複数vos

親称 du(ド) tu(フ)    +名前  (ラテン語の2人称単数tu

ただし、それぞれの関係は対等、相手がSieを使えば自分もSieを使う

社会人・公人は常に苗字・Sieで呼びかける  (「ルーシーさん」は失礼)

 

日本語の敬語は不平等、尊敬語と謙譲語が対

「いらっしゃいますか」「まいります」

相手            自分

したがって共同行為を表現することはできなくなる

 

duを用いる範囲:動物(ただしフリードリヒ大王の犬は別)、神、「もの」(太陽)、抽象物(「喜び」)、子供に、同志(労働団体)、学生同士、家族の中で、警察(?)、デモのプラカード、差別的な意味で、死体に

1793年フランス革命後の制令でtuの呼びかけを義務づける

 

呼称の歴史:目の前の人をどう呼びかけるか

@duが最初:9c「ヒルデブラントの歌」

AIhr=duの複数形を敬意をもって1人の人にあてる。9c修道士の手紙の中で

B16c末、距離をもって敬意を表現するため、3人称単数Er(彼)/Sie(彼女):

 最初は敬語だった

CSie(3人称複数)を2人称に兼用する:17c

1762年のドイツ語表現辞典の分類:du――自然、Ihr――丁寧で古めかしい、Er/Sie――中程度に丁寧、Sie――丁寧で今風、Dieselben――超丁寧

英語:thou(2人称単数)、 you(2人称複数)

13c後半,youを敬意を込めて1人の人にも用いるようになる。thouの使用範囲:聖書の中、17c後半、クェーカー教徒がthouを使用し反感をもたれる。

ドイツでなぜduがすたれなかったか。18c・19cのロマン派の文学

王様:majesty, Majestät(ド)

Excellency(英)、Exzellenz(ド):各国大使、国連事務総長、NATO事務総長、司教及び大司教

EminenceEminenz):枢機卿

Your HolinessEure Heiligkeit, Heiliger Vater):

Rektor或いはPräsident):大学学長

特に伝統ある大学ではMagnifizenz学長Spektabilität学部長)(

様々な場面で:試験問題で-Sie、警察で−犯人取り押さえの時、緊急の時du、軍隊で-19世紀に入るまでは上官が部下にEr1828年プロイセン内閣告示:Erの代わりにduを使いなさい、1848Sieを使用すること、第二次世界大戦後すぐは職位+苗字、1972年行政裁判所決定でHerr+職位(+苗字)となる。

 

1968年の学生運動以来、duを簡単に使うようになった。

 

1985年のドイツ連邦共和国選挙民の意識調査より

 

 ・今日,Duを比較的容易に使用することについて          

 

総計1,066

 

CDU/CSU

352

 

SPD

478

 

FDP

35

 

緑の党

49

 

その他

152

 

   

よいと思う

58.1

よくないと思う

40.2

わからない

1.7

 

53.6

 

45.1

 

 

1.3

 

62.2

 

35.7

 

 

2.1

 

40.1

 

59.9

 

 

0.0

 

89.7

 

10.3

 

 

0.0

 

50.0

 

48.0

 

 

2.0

                                    (%)

 

・教会へ行く頻度とDuを比較的容易に使用することについて

 

 

 

 

 

総計1,066

教会へはよく行きますかという質問に対して

--はいよく行きます

217

 

 

 

--時々行きます

   447

 

 

 

--めったに行かない

342

 

今日,Duを比較的容易に使用することについて

 

よいと思う

58.1

よくないと思う

40.2

わからない

1.7

 

 

 

 

 

48.0

 

 

49.0

 

3.0

 

 

 

 

 

 

57.2

 

 

41.5

 

1.3

 

 

 

 

 

 

65.6

 

 

32.8

 

 1.5

                                   (%)

 

                          

・Duの使用と年齢について

 

総計

24才以下

25-29

30-39

40-49

50-59

60才以上

 

1,066

146

90

174

190

169

297

今日,Duを比較的容易に使用することについて

 

よいと思う

 

よくないと思う

 

わからない

 

 

 

 

 

 

58.1

 

40.2

 

1.7

 

 

 

 

 

83.3

 

16.7

 

 0.0

 

 

 

 

 

78.5

 

19.5

 

 2.0 

 

 

 

 

 

71.7

 

26.6

 

1.7

 

 

 

 

 

55.0

 

43.2

 

1.8

 

 

 

 

 

 

57.0

 

40.0

 

3.0

 

 

 

 

 

 

 

34.2

 

64.3

 

1.5

(%)

Sieを中心とした世界観

 

対象

価値観

変化   

 

 

 

 

Sie

特に親しい人を除いて

誰とでも

お互いを大人として、社会の一成員として、社会の役割を担う者として尊重する

 

形式

 

 

 

 


 du

親しい友人・家族

個人的に親密な関係を築いた

 

親密

 

 

duを中心とした世界観

 

対象

価値観

変化   

 

 

 

 

du

連帯感が既にあるか望ましいと思っている自分のグループで

連帯感、帰属感、利益や意見が一致している

連帯

 

 

 

 


 Sie

社会的に上位にある者に対して、自分が所属していない集団の人に対して

距離感、対立を含みうる

 

懸隔