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9月22日大学管理本部における意見聴取に当たって

大学管理本部長 様

東京都立大学総長 茂木俊彦

2003年9月22日
 

 東京都大学管理本部長は8月1日、都立の新大学設立に向けた前日までの検討体制を廃止し、新たな設立準備体制に移行した旨を伝えてきた。また同日、7月まで設置されていた「都立新大学設立準備委員会」によってまとめられた設立の基本方針および内容を唐突に破棄し、「新しい大学の構想」をまとめ公表したと述べた。このことに関連して私は8月12日付で「全学の教員、職員、学生・院生のみなさんへ」と題する見解を学内に公にした

 本部長はまた新大学の設立は「4大学の統合、新大学への移行」ではなく、「4大学の廃止、新大学の設置」であると宣言して「新しい大学の構想」の具体化を図るとし、この構想に積極的に賛同し作業に協力してもらいたいと大学のメンバーに要請してきた。

 新大学設置に向けたこの検討・準備の進め方には黙過できない重大な問題が含まれている。総長として申し述べたいことは多々あるが、本日は以下の4点にしぼって意見を表明することとする。

 

1. 新大学の構想策定及び設立準備作業において関係4大学と十分に協議し、その意見を聴く体制を可及的速やかに再構築するべきである。

 新しい大学の設置が設置者の権限であるということは可能である。しかし、都立の新大学はまったくゼロの地点から出発して設立されるわけではない。東京都が設置してきた都立大を含む3つの4年制大学、1つの短期大学(以下、現大学)があり、それらを「たばねて」新大学を設立するとの方針で構想を策定し準備を進めてきたのである。

 形式として現大学を廃止し新大学を設置する方針をとる場合、現に機能しており社会的に実績を有する大学を一方的に廃止する権限がもっぱら設置者にあたえられているとはいえないし、もしそうするとすれば、それは設置者の社会的責任をまっとうするものではない。法的に見ると、大学の廃止は、現に存在する大学の運営に関する重要事項中の重要事項であるから、大学の教授会の審議事項(学校教育法59条1項)であり、都立大学について言えば評議会の審議事項(東京都立大学条例8条6項5号)であることは否定できないであろう。

 また設立準備がなされている新大学は、旧大学の教員組織、施設、設備を基に、他の大学を設置するものであるから(大学の設置等の認可の申請手続等に関する規則1条4項1号)、 全くの新大学の設置ではなく、まさしく「新大学への移行」そのものに他ならない。それゆえ「既存大学廃止・新大学設置」という「形式」が許容されるのは、あくまでも、設置者と大学の間の十分な協議に基づく合意の上で、既存大学のもつ有形無形の資源が「実質」的に新大学に継承されるという条件が満たされる場合のみであると考えるべきである。

 言うまでもなく大学において展開されている学術研究の蓄積は、一朝一夕になされるものではなく、各学問分野の専門家によって継続的に営まれ、発展的に継承されていかなければならない。またそれらが自主・自由の精神にたって推進されるのでなければ学生・院生の教育も地域・社会への貢献もみのりあるものとはならない。

 大学管理本部は、新大学の構想策定及び設立準備作業において関係4大学と十分に協議し、その意見を聴く体制を可及的速やかに再構築するべきである。同時に現大学の教育資源を実質的に新大学に継承することを、基本方針として明確にするべきである。


2 いわゆる新大学の教育内容、それを責任ある体制で実施する教育研究組織について

1)すでに公にされているところであるが、いわゆる「単位バンク制」には重大な疑問を抱いている。基本的に重要なのは大学がその理念・目的・目標を明確にし、それにふさわしい教育課程を編成して教育することであり、学生の側から見ればこれを履修していけば当該大学における学習のみでも卒業できるようにすることである。このことは所属大学以外の大学その他の教育機関で学習した成果が所属大学の単位認定基準に適合するならば、これを所属大学が認定することと矛盾しないし、すでにその制度は存在して実施されている。あえて「単位バンク制」を導入する意義は見当たらない。 

  「単位バンク制」との関係があきらかにされているのではないが、英語を選択とするとの検討がなされている。今日、国際化がますます進み英語の運用能力が重視されており、受験大学を選択するさいに受験生・保護者は英語教育のあり方に強い関心を寄せている。このことも考慮すると英語の必修は是非とも必要であり、これを選択とするならばそれ自体で大学の質と水準に疑義が呈されることは必至であり、大学の凋落は目に見えている。 

 なお、大学設置基準第13条にある「大学全体の収容定員に応じ定める」教員数(別表2)は、まずこれを定数化することが本来の趣旨であると考える。ここではあえて英語についてのみ指摘すれば、これを担当する専任教員は相当数必要である。現段階でこのことについてまったく明示されていないことは問題である。

 またこれまでの全国の大学の経験によれば、かつての教養部のような教育組織を置くことは好ましくないとされ、入試、FD、基礎教育等のために比較的少数の専任を「基礎教育センター」のようなところに配置するのはよいとして、語学等の担当教員は各大学院(学部)に定数配置するのが一般的傾向であることにも留意すべきである。

2)新しい大学を構想するには学部・大学院両方のあり方の検討を同時的に進行させ、平成17年度に同時開設とすべきである。すなわち教養教育、専門教育、大学院教育のそれぞれについて適切な構想を立て、それらが1つの大学として総合性・一貫性をもったものにしなければならない。

 この見地から大学院の構成についての検討が遅れていることは大きな問題であると言わざるをえない。

 また現在の都立大学に直接に関係する部分を見ると、人文学部関連部分(人文・社会系)の構成と定数配分は、ひとり人文学部の問題であるにとどまらない。たとえば現段階で示されている定数では、人文・社会系においては大学院・学部ともに特に諸外国と日本の文学、アジア地域の文化その他、日本語教育・日本学等々の教育はきわめて不十分なものにならざるを得ず、これは新大学の文学・文化研究ひいては重視するとされている教養教育に重大な負の影響を与えること必至である。

3 東京都立大学の学部・大学院の学生(16年度入試で入学する者を含む)の身分、学習の条件整備等について速やかに明確化すべきである

 現在すでに本学の学生・院生である者の身分等は平成17年4月1日以降どのようなものとなるのか、明確にしなければならない。また新大学設立との関連で履修すべき教育課程に何かの変化が生じるのであれば、その概略だけでも早く示す必要がある。

 また大学院について、仮に18年度開設ということになれば(それが望ましくないことは上述の通りであるが)、17年度に既存の大学院の入試で入学したものは翌年度開設の大学院との身分上の関係はどうなるのか、専攻の名称が変わるだけではなく、専攻そのものが仮に存続しない結果となった場合に、関係する院生はどこへ行けばいいのか等々の問題が浮上する。さらに教員は同時に2つの大学院に所属することはできないと考えるが、新大学の大学院の教員と少なくとも17年度の現大学院の教員の配置はどうなるのか、といった問題もある。このような諸問題を明確にしないまま種々の作業をすすめるのは学生に対する説明責任を誠実に果たすことにならない。

4 教員の身分上の問題について

 東京都立大学総長として都立大教員の身分について意見を述べておく必要を感じる。まず必要なことは新大学発足の時点で教員のいわゆる分限免職は行わないことを改めて明確にする必要がある。また新大学発足、法人化以降も教員の身分上の安定をはかり安心して意欲的に教育と研究に勤しめるようにすべきである。

以 上
 

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