
大学管理本部長殿
「同意書」についての都立大学総長意見
2003年9月29日
東京都立大学総長 茂木俊彦
私は、9月22日付け「管理本部における意見聴取に当たって」において、今般の新大学設置計画およびその実現に向けた準備過程に関して、いくつかの「黙過できない重大な」問題点を指摘した。しかし、東京都大学管理本部は、それらの疑問にまともに答えることなく、一方的に教員配置案を作成し、それに基づいて、所属長を通じ個別教員の「同意書」の提出を求めている。
しかし、この「同意書」の性格は極めて曖昧であるのみならず、さらに、その内容を見るに、あたかも教員の雇用に関係するかのような紛らわしい形態をとっている。私としては、こうした進め方には深刻な疑義を抱かざるを得ず、この「同意書」について特に意見を表明する次第である。
記
1 都立大学の総長及び全教員は、憲法、教育基本法ならびに現行の都立大学条例を始めとする諸法規によって、充実した大学教育サービスを提供することにつき、学生ないし都民に対して直接的な責任を負うものである。この責任は、いやしくも設置者の一存で左右されうるものではない。にもかかわらず、管理本部は、今回、突然に「新しい大学の基本構想を実現していくための教員配置案」を示し、教員1人ひとりに、@この配置案、Aそれを前提にした新大学に関する今後の詳細設計への参加、B詳細設計の内容を口外しないことの3点に同意する旨を記した書類(同意書)に署名して提出することを求めてきた。このようなやり方は、本項冒頭に示した、教員こそが学生ないし都民に直接的な教育責任を負うものであるという大学のあり方に関する基本的な理解とは、真正面から対立・矛盾するものである。教員としては、これまで一度も具体的に議論したこともなく、知る機会すら与えられてこなかった「新しい大学の基本構想」とそれを実現する「教員配置案」に包括的に同意するわけにはいかないのは当然である。
2 今回の管理本部のやり方は、これまで同本部との協議を通じて誠実に議論を積み重ねてきた大学内部での改革への検討構想を一方的に破棄し、「トップダウン」と称して、まったく従来の経緯と無関係に、勝手に新構想を作りあげ、その新構想を前提にして、教員配置案を示したものである。このように、大学に事前に一切の相談もなく、教育責任を負うべき教員に十分に意見を述べる機会も与えず、いきなり新構想に対して、包括的な同意を求めるというやり方は、およそ大学行政にあるまじき異常・異例なものであって、到底、健全な市民的常識とは相容れず、設置者としてあるまじき行為である。我々大学人としては、従来の経緯からいっても、このような新構想をこのまま承認することはありえず、新構想を基底とした教員配置案に、いきなり同意をせよと迫られても、同意できようはずもない。
3 この同意書は、新構想への包括的な同意をとりつけると同時に、大学の教員相互の議論すら抑制しようとする口外禁止条項まで含んでおり、常軌を逸したものである。管理本部がこの時点でこのような同意書を持ち出す意図を推察するに、新大学の新構想への包括的な同意をとりつけつつ、今後の一切の異論を抑圧する意図を潜ませたものとしか考えられない。設置者がそのような形で個々の教員の異論の抑圧を図り、包括的な同意を迫ることは、憲法、教育基本法を始めとするあらゆる教育法規の原理的趣旨に反する行為である。
4 今回の新構想というものは、単に学部とコースの枠組みだけが示されているに過ぎず、肝心の大学院の構成やカリキュラム、研究条件の基本方針等はまったく不明なままである。新大学における教育研究のあり方や、勤務条件など、もっとも重要な事項に関する明確な条件の提示がないままに、個々の教員に、改革の詳細設計への積極的な参加を迫ることは、実際上、不可能を強いるものでしかない。学生に学習権が保障されるべきなのは言うまでもないが、教員にも「教授する権限と責務」が尊重されなければならない。今回の同意書は、この教員の当然の権限をもまったく無視するものであり、いかなる意味でも合理性を認めるわけにはいかない。
以 上
同意書については、下記を参照 >> 2003年9月25日 同意書