あいまいな字幕

吉川 武時
2006.2.17

Hが Tに 3000万 振り込むよう 指示した。

2月16日のあるテレビ番組の字幕を参考にした文である。これでは
 だれに指示した のか
 だれに振り込む のか はっきりしない。
素直に読むとHが「Tが(Hに)3000万 振り込むこと」を Tに指示した のように読める。はじめその意味かと思った。 つまり、HがTに 3000万 要求しているという意味である。 ところが、1日たって
 Hの部下に指示した
 Tの口座に振り込む
ということだと分かった。 それは言語外の事実と照らし合わせたからできた判断である。 このように言語外の事実と照らし合わせなければ 真意が伝わらないような文はだめである。

Hが Tに 3000万 振り込むよう 部下に 指示した。
のように「部下に」と入れてありさえすれば、あいまいな文には ならなかったのだ。 また「Tに」ではなく「Tへ」、あるいは 「Tの口座 に/へ」とすればあいまいさは減るが、 まだしっくりしない。
Hが Tへ 3000万 振り込むよう 指示した。
Hが Tの口座に 3000万 振り込むよう 指示した。

「指示した」とある以上「だれに」に当たることばを省くべきではなかった。 これを省いたので「Tに …… 指示した」と読まれる可能性が生じたのである。


これを一般的に考えてみよう。
「に」は“間接主体”を表すことがある。 間接主体とは、文の主語とは別の、 文中に含まれている動作を行う主体のことである。 次の例文を参照。 「文中に含まれている動作の主体」つまり「間接主体」は 「〜に」で示されている。すると、冒頭の文が Hが「Tが(Hに)3000万 振り込むコト」を Tに指示した と解釈されるのも無理のないことであろう。 もう一度 言うが、 この文は「指示した」とある以上、だれに指示したのか を明確に示さなければならなかった。そうしなかったのが あいまいな文になった原因である。

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