日本語の多義語==「聞く」==

吉川 武時
2006.5.1

聞いたんですが、聞いていないんです。


前に
英語の多義語(二つ以上の意味のある単語)について書いた。
fall 落ちる;倒れる。米語では「秋」。
corner 角;隅。
letter 文字;手紙。
などである。
日本語にももちろん2つ以上の意味を持つ単語がある。 その中の1つは「聞く」である。
ふだん、これに2つの意味があることに気が付かない人が多い。
  1. 耳の働き
     音楽を聞く、ラジオを聞く、ニュースを聞く、人の話を聞く
     特に注意してきく(英語の listen to)ときは 「聴く」と書く。
  2. 質問する、尋ねる
     人に道を聞く、分からないことを先生に聞く、
     これでいいかどうか先輩に聞く
補語(動詞の前に置かれ動詞の意味を補う名詞)や助詞の働き によってどちらの意味か、分かる。 分かるから、異なる2つの意味があるとは気付きにくい。

前に、道路公団の問題が大詰めに近づいたとき、 インタビューで石原大臣が「聞いたんですが、 聞いていないんです」と言ったことがある。 こういう発言を聞くと「聞く」に2つの意味があること に気付くのではないか。
省かれていることばを省かずに言うと、 「私が公団総裁にその問題はどうなっているのか 聞いたんですが、 公団総裁は私の話を聞いていないんです」となる。
石原大臣が質問しているのに、 公団総裁は質問に耳をかさない、 つまり、大臣の質問に答えようとしない、という意味である。
インタビューという談話の中で上記のようなことばを省いた 言い方になったのである。

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