ある日家に帰ってみるとこんなメッセージが留守電に残っていた。これを聞いたとき、何の用事かは容易に察しがついた。僕は二年前にスクーターの盗難にあっていた。そのとき廃車証明を区役所に提出しに行ったことがあったからだ。恐らくスクーターが見つかったのだろう。そう思って区役所に電話した。すると、
やはり見つかったのか。恐らく盗んだやつが乗り潰してボロボロになったので捨てたのだろう。
一瞬、×××町と聞こえたが気のせいか。
番地までは分からないが、僕が今住んでいる所と同じ住所である。そんな近くにあったのに二年間見つからなかったのか。
まだ使えたとしても、今は既に他の原付を持っているのであまり必要無いのだが。
知らないわけが無かった。今まさに僕がいるところと住所も名前も一緒である。
勿論おわかりである。
電話を切った後、連絡する前に一度スクーターを確認しておくことにした僕は、ビルの1階(1階は道路に面していてスーパー、薬局、パン屋がある)まで降りて、パン屋の横にある商品運搬通路を覗いてみるが、L字に曲がっていて奥のほうは見えない。上からなら見えるかもと思い、2階に上ってから下を覗きこんだ。
あった。ちょうど真下に。確認してみないと分からないが、恐らく僕のである。
灯台下暗し。こういうときに使うのであろうか。二年間見つからなかったものが、じつは玄関を出て10歩歩いたところから見えていたとは何とも間の抜けた話である。前にアメリカで、老夫婦が飼っていた亀が逃げ出して、何年か後に隣の家で発見されたというニュースを見たとき、普通気付くだろうとバカにしていたが、まさか自分がバカの立場になろうとは思いもしなかった。
次の日パン屋へ電話した。引き取りに行きたいのだがと言うと、いつでも引き取りに来てよいとの事。早速見に行くと、上から見たときは分からなかったが、しゃれにならないほど汚い。ボディ全体に垢のようなものがこびりつき、トランクの中に入っていたヘルメットにはカビが生えていた。二年間雨ざらしにされていたので当然と言えば当然なのだが…
それで、まずロックがかかっているか気になったので確認すると、ハンドルロックもスタンドロックもかかっている。誰かが盗もうとして道路から見えないところに移動させ、ロックを外そうとしたが諦めてそのまま放置したのであろうか。エンジンをかけてみるがかからなかった。
さあ困った。引き取ったはいいが、すごく汚い上に使い物にならない。重量級のゴミである。取り敢えず駐輪の話に出てきた二番目の駐輪場所にスクーターをとめておき、どう処分するか考えることにした。