グルメ・料理漫画に見る女性像パートU 〜青年誌漫画・少女漫画編〜 引き続き、グルメ・料理漫画で描かれる女性像をみてみる。 <青年誌漫画> 美味しんぼ・クッキングパパの2作品が対象 1. 「美味しんぼ」(作:雁屋 哲 画:花咲アキラ) 登場人物 ・ 栗田ゆう子 ・ 山岡士郎 ・ 田畑 ・ 花村 ・ 谷村秀夫部長 ・ 大原大蔵社主 ・ 海原雄山 作品あらすじ 東西新聞に入社したての栗田ゆう子。 大原社主の「究極のメニュー作り」のメンバーになるための むずかしいテストに山岡士郎とたった二人だけが合格し、 山岡士郎とコンビを組むことになる。 「究極のメニュー」づくりをひたすら拒む山岡士郎。 その理由は海原雄山にあった。海原雄山は山岡士郎の父親で、 陶芸家・料理評論家である。 しかし、家庭を犠牲にし、料理や芸術を愛した結果、妻に先立たれた。 山岡士郎はそんな雄山を恨んでいる。 山岡はそういう父をしっているため、 「料理が人間に奉仕するのであって、 人間が料理に奉仕するもんじゃないんだ」 と究極のメニュー作りを拒む。 しかし、海原雄山が東西新聞に乗り込んできて、 山岡と接触した時に、山岡はこの父親を見返してやるんだと決意。 究極のメニュー作りを担当することとなる。 描かれる女性像 登場するメインの女性は栗田ゆう子。 それと、友人であり先輩の田畑さん、花村さん。 栗田を除く、この二人の女性は、よほどのことがない限り1人でコマに現れない。 殆ど二人セットで現れる。 最初のほうでは「女性同士助け合わなきゃね」 と連帯を強制する田畑さん。花村さんは 「男子社員の小間使いじゃないんだから・・ 女子社員にこんな雑用言いつけるなんてけしからん」 と、一応、社員のプライドをみせるが、 男性社員の前では大した発言も出来ないでいる。 ただ、ぐーたらな山岡にはなんだかんだと悪口を言ったりしている。 新入社員の栗田は、男性社員に負けないような発言を謙虚ながらにおこなうが、 部長や課長にはお酌をするなど、しっかり「女」でもいる。 脇役で1話だけ出てきたりする女性はたいてい夫婦の奥さんだったり、 お婆ちゃんだったりする。数名、シェフもいる。 作者の女性像はおそらく、この、花村、田畑、栗田ゆう子の3人に分散されている。 2巻の1話目「手間の価値」では花村のミーハーっぷりがあきらかになる。 山岡、栗田、田畑、花村の4人で、横浜中華街に行く話だ。 雑誌に掲載された、横浜中華街のお店へ次々と入り、 山岡が店の悪さに食べずに出て行くのである。 結局、まともに食べられず、3店舗目へ入るが、 そこでとうとう、山岡と店主が喧嘩になり、 止めに入った周懐徳の家で、 トンポーロー作りの勝負で決着をつけることになるのだが、 ある意味、男性は喧嘩をしてでも自分の考えを貫くべきである、 ということを暗示しているようにも見える。 それだけではない。 食の文化でトップの人間から招待状を受けた東西新聞文化部で、 4人まで参加できるということがあった。 部長、山岡士郎、栗田ゆう子は決定。 あとの一人が決まらなかったため、田畑さんがいきたいわ、 といって立候補したが、結局、特に能もない課長が参加することになった。 同じ能がない社員でも男性のほうが優先されてしまうのであろう。 それがあたりまえかのように田畑さんも決定に素直に応じ、 何の文句も言っていない。 現在の社会をそのまま反映しているのではないか。 女子社員は男性の小間使いじゃないのよと裏でブツブツ文句を言いながらも、 何もできない自分がいる。男性社員はぐーたらしてたり能がなくても、 社員として存在しており、しかし、仕事となると何かしら能力を発揮する。 今の社会はそういう社会なのかもしれない。 2.「クッキングパパ」(講談社 うえやまとち) 登場人物 ・ 荒岩家(パパ、虹子、マコト、みゆき) ・ 田中 ・ 工藤三平 ・ 上田守・ヒトミ夫妻 ・ ひろゆき、みつぐ、おさむ、ひろ(マコトの友人) 作品構成・及び女性像 一話完結で、様々な料理が飛び出す。 女性が料理することもあれば男性が料理することもあり、 さらには子ども達も料理をする。 だだ、この漫画は料理はただの人間のコミュニケーションの 媒介としてしか描かれていない。 人間の文化での料理の位置付けはこのくらいがちょうどいいと思われる。 女性に関しては、殆どが夫妻の妻として現れる。 田中の奥さん、「夢」は、もともと、 荒岩や田中の会社の社員ではあったが、田中と結婚したため、 夫妻の妻となってしまった。 喫茶店のママが396話目にでてくる。 付き合っていた男性と別れる女性を描いている。 この女性、名前はない。基本的に、あまり名前が出てこない漫画ではあるが、 特に女性は基本的に名前、子どもも名前、大人の男性は苗字で呼ばれている。 救われるのは40巻にある作者のコメントである。 「男も女もみんなが楽しく料理をして、その周りの人たちまでも幸せになる。 そんな漫画をこれからも描き続けたい」 つまり、この作者には、料理には男も女もないという意識を持って描こうとしているのである。 こうやって、きちんと気持ちを示してくれると、分析もしやすい(笑) <少女漫画> 作品が一つしか見つからなかったため、この作品のみでコメントする。 「はなまるDEキッチン」(小学館 にしむらともこ チャオ掲載) 登場人物 ・ 水沢羽菜 ・ 結城一哉 ・ 佐々木愛子 ・ 佐々木真 作品構成 「羽菜は美味しいものを食べるのが大好きな女の子。 もちろんお料理だってだーい好き(ハァト)なんだけど、 料理の腕のほうはイマイチ。 実は卵もちゃんと割れないんです。 そんな羽菜が天才料理少年・一哉と組んで クッキングコンテストに出場することに!? 漫画に出て来る料理が作れるレシピもついているよ!」(表題作品紹介より) ということなんだけども、羽菜は中学1年生で、 料理クラブに所属しており、クッキングコンテストに去年出場しているが、 予選落ちをしている。 今年からペアで参加という条件が加わり、 困った時に、突然料理クラブに現れた一哉。 大まかに言えば、そのクッキングコンテストをつうじて、 羽菜と一哉は人生のパートナーになるという物語 (なんて安易なんだ!!)。 クッキングコンテストの主催者は佐々木愛子。 彼女は料理会ではトップの女性で、 多くの女性があこがれている人である。 クッキングコンテストでお弁当を配っている真君は 最後の方まで隠しているが、実はこの佐々木愛子の息子で、 これまた天才料理少年である。 結城一哉は小さい頃からたくさんのコンテストに参加しており、 佐々木愛子のコンテストにも参加したことがあるが、 そのときに佐々木愛子から酷いコメントを受け、 見返してやろうとしている。 最終的には、羽菜・一哉ペアは今年のクッキングコンテストに優勝し、 佐々木愛子と対面。そのときの話を羽菜が穿り返したことで、 一哉と佐々木愛子が話し合う機会が出来たので、誤解は解消された。 コンテスト後、特別戦と称して、 佐々木真と優勝した羽菜・一哉ペアが対決をする。 結局、羽菜の「一哉くんに美味しいと思って食べてもらえる料理を」 と言う気持ちが、プロである真の技術を抑え、 審査員の心をとらえたために、引き分けに。(゜Д゜)ハァ? 一哉もまた、「羽菜に美味しいと思って食べてもらいたい」と言う気持ちを持ち、 それまでの「うまけりゃなんでもいいんだよ」という心のこもっていない技術を 見直し、改心する。 いつのまにか、 目標は「二人で世界一のレストランを作る」へと変更。 何だ、結局恋愛漫画だったということ。 描かれる女性像 羽菜に関しては、おそらく、男性が喜ぶような女性像が見事に描かれている。 ドン臭い、何をやってもどうもイマイチ、でも頑張ってる姿がかわいい!!(笑) 料理は食べる人のことを考えて、気持ちを込めてという意識。 かわいいじゃないか!!と、多くの男性が思うような女の子である。 つまり、技術<愛 なのである。お菓子は大好きだし。 何よりもメインで出て来る女性はこの子1人なのである。 佐々木愛子は神化した母親のような存在だし、 コンテストに出場して対決する相手で女の子は出て来るが、 機械に頼りすぎた子どもと、高級志向の趣味の悪いお嬢様。 女性の敵は女性ということなのか? 男性のメインは一哉と真のふたり。 脇役男性はコンテストに出場する女性の後ろにコソコソといる程度である。 読めば解ると思うが、はっきり言って、安易過ぎる。 良くあるパターンである。 羽菜=お姫さま、結城=困った時に突如現れる王子様、 真=味方と思わせてスパイだった敵。佐々木愛子=敵の親で、 お姫さまが欲しいと考えている(?) 物語=女を巡る男の戦い。まるで、良くある話ではないか。 少女漫画で描かれる女性は、正直、未だに紅一点論で言われるような 女の子の国から全く抜け出ていないように思う。 魔法は使わないにしても、魔法→心、気持ち、恋愛、 といったピンク色の浮遊物を使って(笑)、 現れる素敵な男性2人を戦わせ、 でもやっぱりこっちの方が好きなの−!!と、わがままを言うのである。 作者は何を考えているのか解らないが、 彼女の少女像がそこに現れているのではないだろうか。 まとめ 青年誌に描かれている女性は、 現代女性を投影しているに過ぎないのかもしれない。 美味しんぼでは、社会の中の女性が主に描かれている。 クッキングパパでは家庭の中の女性が主に描かれている。 それぞれ、ジェンダーバイアスに囚われた描かれ方もしてはいるが、 現代女性で、ジェンダーバイアスに囚われている人は多い。 女性はこうあるべき、男性はこうあるべきということが 社会に蔓延しているために、青年誌はそれをそのまま描いているように見えた。 少女漫画のほうは、全くの夢物語で、現実にはありえないことが描かれる。 こんな女性、あんまり見ないし、こんな男も見たことないけど、 こういうのもいいかも、という女性の願いだろうか。 作者は「あたしを巡って二人の男が戦うの(うっとり)」 というのを女性は誰でも願うだろうと考えているのだろう。 1作品しか見つからなかったために、 他作品がどうなのかははっきりとしないが、 そうでない少女漫画があることを願いたい。 少年、少女、青年の漫画を見てきて、それぞれの漫画の意図というか、 方向性がほんの少し見えた。 少年漫画は、いかにおもしろく現実を膨らませ誇張し、読ませるか。 描かれる女性はほぼ性対象といっても過言ではないだろう。 少女漫画では、作者の少女像、夢、希望が満ち満ちている。 そして青年誌漫画では、現実世界の大人の女性が投影されている。 読んだ作品は、日本にある膨大な料理・グルメ漫画作品の氷山の一角にすぎない。 もっとほかにも、この定義(?!)に当てはまることのない漫画があるかもしれない。 しかし、現在売れている漫画、掲載されている漫画はほぼ、 今上げた作品と同様の方向制を持っているのではないか。 前回、少年漫画は将来ジェンダー意識が変化し、 ドンドン女性がいい方向で描かれるのではないか、 というコメントをしたが、現実世界を投影している青年誌は現実世界が変われば、 おそらく変わってくるであろう。 問題は少女漫画であるが、これについては、 特にコメントできないというのが正直なところである。
ブラウザで戻るしかないっすよ