カズくん
同じ時代に生まれ、
同じ小さな町のなかで同じ学校に通い、
同じ気持ちを分け合い、笑いあった。
それは偶然かもしれない。
運命が招いた必然かもしれない。
そこに意味が無くとも、価値が無くとも。
1人の人間が生まれ、人生を一瞬でも共にした。
そして、多くの人間の人生を変えた。
それを思うたび、ボクたちはいつだって君を思い出す。
あの日1人の少年が死んだ。
2001年秋。
当時、ボクは18歳だった。
あの頃の僕はまだ、
世の中には想像を絶するような悪意があることも、
輝く幸せがあることも知らないイエスマンだった。
自分の考え、意見を持たず、
結果、責任感・義務感だけが僕を動かし、
努力家としての自分の評価への保身で精一杯だった。
安易な2元論を信じていたし、疑いもしなかった。
そんなわけだったから、クラスでも極端な馴れ合いか断絶か、
という関係しか作れなかった。
ボサボサの髪に、母親が名前を書いたTシャツを着て、
勉強机に向かう姿ははっきり言って抹殺したい。
その日もただ試験に向けて、教科書を開いていたと思う。窓の外には、
激しい雨が降っていた。
そうだ。
雨が降っていたんだ、、。
電話を受け、会場へ向かう間、何を考えていただろう。
ただ、
夜の暗闇に提灯の灯かり、
そして人ごみを見つけた時、
ようやく、彼がもうこの世にいないことを、
死んだことを受けとめる自分がいた。
ムネがドキドキ高鳴って、
今まで自分が信じていたモノが全部こなごなになっていくのを感じた。
棺の中。
半開きの口から、黄色い歯がのぞいている。
よく、寝ているようだというけれど、
そのとうりやと思う。
おい、起きろよ。
なにアホな顔してんねん。
起きろって!
そう言えば起きるんやないか?
でも起きないことを知ってる。
もう2度と、声を聞けないことも知ってる。
笑ってくれないことを知ってる。
写真だけが残った。
ほんまたくさんのダチに囲まれて笑ってるねん。
オレにはないわこんな写真。
オレ今まで、ほんま何してたんやろ、、。
あの頃のオレにはダチなんていなかったし、
他人と触れ合うこと自体に価値を見出せていなかった。
今思えば、ホンマ冷たい人間やった。
卒業アルバムさえ捨てるような人間だった。
だけど、あの日カズを前にして、オレの人生は180度変った。
いや、変えたかった。
雨に打たれながら、オレもみんなも泣いた。
どうしようもなく悔しかったし、腹がたった。
頼むから、もう1回笑ってくれ。
オマエと話しがしたい。
冷たいコンクリートの上には血のあとが残ってる。
オレは1人、そこに同じように寝転んでみる。
生きてる意味なんて死んで知りたくないと思う。
正直に言うと、オレとカズは決してイイ友達なんかやなかった。
オレが中学転校してるせいもあるけど、
最近は近所のビデオ屋で会うくらいになってた。
やから、アイツがサンドバックに夢中にパンチ打っていたことも、
大好きな娘を
花火に誘おうとドキドキしてたことも知らなかった。
やから、名簿に名前書くとき悲しかったねん。
アイツにとって、オレは友達なんやろか。
ただの「知人」や。
悲しかった。
カズが死んだ現場には、
みんなからカズへの思いを書くノートが、今もある。
オレも自分の気持ち偽り無く書いた。
それがもとでケンカみたいになったこともある。
けどオレは黙ってられんかった。
あの涙は嘘やないから。
きっと友達って、もう自分の分身みたいなものやねん。
そこには距離や、遊んだ回数なんかじゃ計れない絆がある。
やから、あれだけの人が集まった。
みんな一緒の気持ちやねん。
忘れたくない。
それだけや。
オレたちは今でもオマエに会いに行く。
いつかムネ張って会えるように。
あの日、あの雨の日のあと、
朝焼けのなか1人でカズに会いに行った。
カズはまだ眠ってる。
ほんま始めて2人きりになれたな。
心の中で約束した。
そしてお別れ。
「行ってくるよ」
不安はあった。
けど、もう迷いは無かった。
制服のまま、その日テストをさぼった。
カズ。
もう一度オマエに会いたい。
もう一度、オマエと友達になりたい。
カズ、、ほんまアリガトウ。
みんなのこと見守ってあげてくれ。
オレたちは、今日もがんばってる。
カズ、、おやすみ。