4.判例データ
正当防衛または過剰防衛に関する判例です。
1.【要旨】 1.空手3段の在日外国人が、酩酊した甲女とこれをなだめていた乙男とがもみ合ううち甲女が尻もちをついたのを目撃して、甲女が乙男から暴行を受けているものと誤解し、甲女を助けるべく両者の間に割って入ったところ、乙男が防禦のため両こぶしを胸の前辺りに上げたのを自分に殴りかかってくるものと誤信し、自己および甲女の身体を防衛しようと考え、とっさに空手技の回し蹴りを乙男の顔面付近に当て、同人を路上に転倒させ、その結果後日死亡するに至らせた行為は、誤信にかかる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱し、誤想過剰防衛に当る。
【裁判年月日等】昭和62年 3月26日/最高裁判所第一小法廷/決定/昭和59年(あ)第1699号
【事件名】 傷害致死被告事件
【裁判結果】 棄却
【審級関係】 第一審 昭和59年 2月 7日/千葉地方裁判所/刑事第2部/判決/昭和57年(わ)第713号
控訴審 昭和59年11月22日/東京高等裁判所/第2刑事部/判決/昭和59年(う)第445号
【参照法令】 刑法36条
【出典名】 最高裁判所刑事判例集41巻2号182頁
最高裁判所裁判集刑事245号1221頁
判例時報1261号131頁
裁判所時報963号3頁
2.【要旨】 1.被告人の長男甲が乙に対し、乙がまだ何らの侵害行為に出ていないのに、これに対し所携のチェーンで殴掛かった上、なお攻撃を加えることを辞さない意思をもって包丁を擬した乙と対峙していた際に、甲の叫び声を聞いて表道路に飛出した被告人は、右のごとき事情を知らず、甲が乙から一方的に攻撃を受けているものと誤信し、その侵害を排除するために乙に対し猟銃を発射し、散弾の一部を同人の右頸部前面鎖骨上部に命中させたものであること、その他原判決認定の事実関係の下においては、被告人の所為は誤想防衛であるが、その防衛の程度を超えたものとして、刑法36条2項により処断すべきものである。
【裁判年月日等】昭和41年 7月 7日/最高裁判所第二小法廷/決定/昭和40年(あ)第1998号
【事件名】 殺人未遂銃砲刀剣類等所持取締法違反被告事件
【裁判結果】 棄却
【審級関係】 第一審 昭和37年 3月28日/宮崎地方裁判所都城支部/判決
控訴審 昭和40年 6月22日/福岡高等裁判所宮崎支部/判決
【参照法令】 刑法36条
【出典名】 最高裁判所刑事判例集20巻6号554頁
判例タイムズ195号110頁
判例時報456号83頁
最高裁判所裁判集刑事160号63頁
3.【要旨】 1.デートクラブを経営していた被告人が、被告人方に仲間と思われる2人を伴ない荒々しい態度で押しかけて来た暴力団組長からいきなり暴行を受けるなどしたため、その状況から、3人がかりで兇器を使って攻撃を加えて来るものと思い、このような急迫不正の侵害から自己の生命・身体を防衛しようとして、マキリ包丁で右組長に傷害を加えた場合において、右組長が兇器を所持しておらず、他の2人も被告人に暴行を加える意思はなかったものであったときは、誤想過剰防衛が成立する。
【裁判年月日等】昭和63年10月 4日/札幌高等裁判所/刑事第3部/判決/昭和62年(う)第126号
【事件名】 殺人被告事件
【裁判結果】 破棄自判
【上訴等】 確定
【参照法令】 刑法36条
【出典名】 判例時報1312号148頁
4.【要旨】 1.被告人がスナックで飲酒中、暴力団員である被害者から絡まれ「いてしもたろか」などといわれて、ジャンバーから何かを取出す素振や胸倉をつかまれるなどされたため、被害者がけん銃か刃物を取出して襲いかかると誤信し、自己の生命、身体を防衛するためには、侵害を受ける前に攻撃する外ないと考え、とっさにポッカレモンのびんを割って同人の顔面、頭部を2、3回刺突した上、ペティナイフで右側頭部、顔面を3、4回突刺して死亡させたことは、誤想過剰防衛に当るものというべきである。
【裁判年月日等】昭和54年11月16日/大阪高等裁判所/第6刑事部/判決/昭和54年(う)第1194号
【事件名】 殺人被告事件
【裁判結果】 破棄自判
【上訴等】 確定【参照法令】 刑法36条
【出典名】 判例タイムズ408号158頁
5.【要旨】 1.被告人の殺人行為が防衛行為でないのに、誤想過剰防衛に当るとして刑を減軽した原判決の事実の誤認および法令適用の誤は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。
2.被告人の殺人行為がそもそも防衛行為に当らないとして、正当防衛または誤想防衛との控訴趣意を排斥した上、誤想過剰防衛と認めた原判決が事実の誤認および法令適用の誤により破棄された事例。
3.殺人の実行行為開始後その継続中に行為者が心神耗弱に陥っても、刑法39条2項は適用されない。
4.被告人が、夫である被害者から離婚を求められ、かつ頭髪を引張られるなどの暴行を加えられたため激昂し、ベッドに横臥していた被害者をブランデー空びんで殴打したところ、被害者から強く突飛ばされ、倒れているところを更に頸部を圧迫されるや、恐怖・狼狽の余りこのままでは首を締められてしまうものと誤想し、近くにあった裁縫用の洋鋏1丁を逆手に持ち同人を殺害するもやむなしと決意し、右鋏で同人の上体左側部分を力任せに突刺し揉合ううち、被害者が力尽き床上に倒れ無抵抗状態になって右誤想状態が消滅し被告人もこれを認識したのにあえて攻撃を続けて同人を殺害した場合合計150個所の創切傷の大部分が誤想解消後に加えられたものであるときは、右行為は、全体として誤想過剰防衛ということはできない。
【裁判年月日等】昭和54年 5月15日/東京高等裁判所/第6刑事部/判決/昭和53年(う)第2801号
【事件名】 殺人被告事件
【裁判結果】 破棄自判
【上訴等】 確定
【参照法令】 刑法36条/39条/199条/刑事訴訟法380条/382条/392条
【出典名】 判例時報937号123頁
判例タイムズ394号161頁
6.要旨】 1.被告人が、夫である被害者から離婚を求められ、かつ頭髪を引張られるなどの暴行を加えられたため激昂し、ベッドに横臥していた被害者をブランデー空びんで殴打したところ、被害者から強く突飛ばされ、倒れているところを更に頸部を圧迫されるや、恐怖、狼狽の余りこのままでは首を絞められてしまうものと誤想し、近くにあった裁縫用の洋鋏1丁を逆手に持ち、同人を殺害するもやむなしと決意し、右鋏で同人の上体左側部分を力任せに突刺し揉合ううち、強度に興奮して殺害の意思を抱くに至り、右刺突行為により床に倒れた同人の頭部等を突刺すなどの暴行を加え殺害した行為は、全体として誤想過剰防衛に当る。
2.殺人の実行行為開始後その継続中に行為者が心神耗弱の状態に陥っても、刑法39条2項は適用されない。
【裁判年月日等】昭和53年11月 6日/東京地方裁判所/刑事第9部/判決/昭和53年(合わ)第79号
【事件名】 殺人被告事件
【裁判結果】 有罪
【上訴等】 控訴
【参照法令】 刑法36条/39条/199条
【出典名】 判例時報913号123頁
判例タイムズ375号153頁
7.【要旨】 1.被告人が、被害者から手拳で頭部を殴打され、地面に押倒されるなどの暴行を受けたが同人を押えて起上り、玄関に向って歩き出したところ、同人から「待て、この野郎。」と叫びながら追いかけられ、玄関のガラスに、背後に近づいた同人が上半身を前にかがめるような姿勢をとる姿が映るのを見たため、それまでの同人の振舞から、傍らにある空びんを取って殴りかかって来るものと誤信し、自己の身体を防衛する意思で、傍らにあった一升びんで、同人を殴打し、更に割れて手元に残った右びんの破片を横に振るようにして加療約3箇月を要する傷害を与えたことは誤想過剰防衛に当り、刑法36条2項を適用して減軽すべきである。
【裁判年月日等】昭和51年 5月25日/札幌高等裁判所/第3部/判決/昭和51年(う)第3号
【事件名】 傷害被告事件
【裁判結果】 破棄自判
【上訴等】 確定
【参照法令】 刑法36条
【出典名】 判例時報833号127頁
8.【要旨】 1.組合員に対する顛末書提出命令に抗議するための交渉に際して、会社側に顔写真を撮影された組合員らが、カメラを取上げようとして軽微な傷害を負わせたことは、誤想防衛行為に当る。
【裁判年月日等】昭和45年10月 2日/東京高等裁判所/判決/昭和43年(う)第997号
【事件名】 住居侵入、傷害被告事件
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 確定
【参照法令】 労働組合法1条
【出典名】 高等裁判所刑事判例集23巻4号640頁
東京高等裁判所(刑事)判決時報21巻10号321頁
判例タイムズ255号101頁
判例時報619号28頁
9.【著名事件名】 愛知大学事件控訴審判決
【要旨】 1.大学内への警察官の立入は、緊急その他やむをえない事由のある場合を除き、裁判官の令状による場合を別として、原則として大学側の許諾または了解のもとに行うべきものである。
2.学問の自由、大学の自治に対する急迫不正の侵害ありとしてなされた学生の誤想防衛行為について、過剰防衛行為ではあるが、巡査の大学構内立入が大学当局の許諾、了解なしに行われたこと、学生らに立入の理由を明確に答えていないこと等巡査の側にも落度または不用意とすべき点があつたこと等を理由に刑が免除された事例。
3.学問の自由・大学の自治にとつて警察権の行使が干渉と認められるのは、それが当初より大学当局側の許諾了解を予想しえない場合、特に警備情報活動としての学内立入のような場合である。
4.学生等が大学構内に立入った警察官に対し暴行をした事案につき、過剰防衛に当るとされた事例。
5.大学の自治に対する急迫不正の侵害ありと誤信してなされた防衛行為が相当性を欠く場合につき、過剰防衛として刑が免除された事例。
6.誤想防衛に関し、その防衛の程度を超え相当性を欠くに至ったため故意が阻却されない場合において、刑法36条2項に準拠して処断すべきである。
7.大学の自治に対する急迫不正の侵害であると誤信してなされた防衛行為が相当性を欠く場合に、過剰防衛として刑が免除された事例。
8.深夜警察官等が大学構内に立入っているのを目撃し、情報収集活動をしている特別審査局員らしいスパイの一味の者と思込み、急迫不正の侵害があると誤信し、学問の自由、大学の自治を防衛保全するため、その場において警察官を捕え、機を逸せず右立入の真相を究明しなければ、右侵害排除の目的を達しえないものと考え、警察官を逮捕するなどの行為に出たことは、右侵害排除のためやむをえざるに出た誤想防衛の過剰行為である。
【裁判年月日等】昭和45年 8月25日/名古屋高等裁判所/刑事第2部/判決/昭和37年(う)第34号
【事件名】 暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、不法逮捕、強制、公務執行妨害、犯人蔵匿各被告事件
【裁判結果】 一部破棄自判、刑免除、一部控訴棄却
【上訴等】 被告人上告
【審級関係】 第一審 昭和36年 8月14日/名古屋地方裁判所/刑事第3部/判決/昭和27年(わ)第802号、第880号、第889号/昭和27年(わ)第890号、第924号/昭和28年(わ)第1980号、第2084号 判例ID:27660798
【参照法令】 日本国憲法23条/刑法36条/220条/223条/暴力行為等処罰ニ関スル法律1条
【出典名】 刑事裁判月報2巻8号789頁
判例時報609号7頁
判例タイムズ254号99頁
9.【要旨】 1.まぐろ専用漁船に乗組んでいた被告人が、魚の処理のことから被害者から文句をいわれ応酬したところ、同人から鉈の峰で頭部を2回位殴打され、うずくまるようにしたところをなおも鉄製パイプ、棒ずりで腰部を殴打され、次いでニュームのバケツを肩の辺に投付けられたので、その後右被害者が既に被告人の傍から約3メートル離れていて引続き攻撃に出る態勢になく急迫不正の侵害がなくなったのにかかわらず、以前に同船で甲板長が殺害されたこと、被害者が短気で乱暴な者であることを思起こし、このままでは同人から殺されるのではないかと誤想し、同人目掛けて刃渡約18.5センチのあじ切包丁を投付けて左上肢を貫通し、左胸部心臓に達する刺創を与え失血死させたときは、誤想過剰防衛である。
2.鉈の峰で殴打するなどの不正の侵害がなくなっていたのに、更に続けて不正な侵害を受け殺されるのではないかと誤認して、刃渡り約18.5センチのあじ切包丁を胸部目掛けて投付け、心臓刺創により失血死させたのは誤想防衛であるが、その程度を超えたものである。
3.刃渡約18.5センチのあじ切包丁を胸部目掛けて投付けた場合には、殺意が認められる。
【裁判年月日等】昭和41年12月22日/静岡地方裁判所/判決/昭和41年(わ)第161号
【事件名】 殺人被告事件
【裁判結果】 有罪
【上訴等】 確定
【参照法令】 刑法36条/38条/199条
【出典名】 下級裁判所刑事裁判例集8巻12号1578頁
10.【要旨】 1.被告人の長男甲が乙に対し、乙がまだ何らの侵害行為に出ていないのに、これに対し所携のチェーンで殴掛かった上、なお攻撃を加えることを辞さない意思をもって包丁を擬した乙と対峙していた際に、甲の叫び声を聞いて表道路に飛出した被告人は、右のごとき事情を知らず、甲が乙から一方的に攻撃を受けているものと誤信し、その侵害を排除するために乙に対し猟銃を発射し、散弾の一部を同人の右頸部前面鎖骨上部に命中させたものであること、その他原判決認定の事実関係の下においては、被告人の所為は誤想防衛であるが、その防衛の程度を超えたものとして、刑法36条2項により処断すべきものである。
【裁判年月日等】昭和41年 7月 7日/最高裁判所第二小法廷/決定/昭和40年(あ)第1998号
【事件名】 殺人未遂銃砲刀剣類等所持取締法違反被告事件
【裁判結果】 棄却
【審級関係】 第一審 昭和37年 3月28日/宮崎地方裁判所都城支部/判決 判例ID:24004581
控訴審 昭和40年 6月22日/福岡高等裁判所宮崎支部/判決 判例ID:24004582
【参照法令】 刑法36条
【出典名】 最高裁判所刑事判例集20巻6号554頁
判例タイムズ195号110頁
判例時報456号83頁
最高裁判所裁判集刑事160号63頁