インドネシア語と日本語の対照研究

 まず、比較研究と対照研究の違いを説明します。この二つの言葉は似ていますが、研究方法や研究目的は違います。かつては「日英比較研究」のように、実際は対照研究なのに「比較」の語を用いた研究もありましたが、現在ははっきり区別されています。

 比較研究は、比較する二つ(またはそれ以上)の言語の歴史的な系統関係を研究するものです。日本語と英語の系統的関係はまったく考えられませんから、日本語と英語を使っての比較研究は成立しません。比較する言語要素は、比較研究で重視される要素、つまり音韻体系や文法体系などです。語彙体系の場合は、数詞・人体関係の語彙・親族名称など基礎的な語彙の関係が検討され、他言語からの借用語は検討対象には入りません。もちろん、どの言語とどの言語に系統関係の可能性があるかということは、前もってわかっているわけではありません。ですから、地理的・歴史的要素を考慮して、二つ(またはそれ以上)の言語の系統的関係を証明しようとするのが比較研究である、と言ってもいいでしょう。

 対照研究は、系統的関係の有無にかかわらず、二つ(またはそれ以上)の言語の要素を比べる研究です。ただ何の目的もなしにくらべても意味はありませんから、「言語教育のための」とか「類型論(世界の言語がどのような類型に分けられるかを研究する)のための」という説明が付くのが普通です。私が考えている日本語とインドネシア語との対照研究も、インドネシア人のための日本語教育や日本人のためのインドネシア語教育に役立つためのものを目指しています。比べる要素は、言語の全ての要素です。新しい借用語も、文化的背景を考慮しながら比べます。

 私が研究している対照研究は、今のところ音韻・文字・語彙・意味の研究に限られています。ここ数年、国際交流基金の派遣でパジャジャラン大学の大学院生(かつての私の学生であり、今は各大学の教員)と共同研究をしていますが、そこでは他動詞・自動詞の関係や使役形と受け身形の関係など重要な研究が進んでいますが、お互いに仕事を持っていますので、まだこれといった成果をあげていません。今後、このホームページを使って、より多くの同じ興味を持つ人が集まって研究が進められていくようになれば、と思っています。

 とりあえず、日本国内で私が書いた日本語とインドネシア語の対照研究の論文を並べます。著作権の問題もあり、論文をそのままダウンロード出来ませんが、お知らせいただければコピーを送ります。

  ○インドネシアの日本語教育  鹿児島大学教育学部研究紀要35巻
    1984年
  ○インドネシアの日本語教育  国文学解釈と鑑賞50巻3号 1985 年
  ○日本語教育と日本語研究 インドネシアの場合 国文学解釈と鑑賞
    53巻1号 1988年
  ○日本語・インドネシア語の類義語の対照研究試論 福岡大学日本語日本文学
    3号 1993年
  ○対照研究 ハンドブック論文・レポートの書き方 日本語学臨時増刊号
    13巻6号 1994年
  ○インドネシア語の品詞 日本語との対照 国文学解釈と鑑賞61巻1号
    1996年
  ○インドネシア・マレーシアローマ字事情 国文学解釈と鑑賞62巻1号
    1997年
  ○インドネシア語の専門用語 国文学解釈と鑑賞64巻1号 1999年
  ○インドネシアの日本語教育からみた日本語研究 国文学解釈と鑑賞
    65巻1号 2001年
  ○日本語・インドネシア語類義語の対照研究の方法ー「切断」に関する語彙を
    例にしてー 筑紫語学論叢 奥村三雄博士追悼記念論文集 2001年

 上記以外に、現在印刷中のものとして、駒井明先生の追悼記念論文集に載せたものがあるが、それは刊行した後改めてこのホームページに載せる予定です。