第5章 基本的人権の原理(p73〜)

I 人権宣言の歴史(p73〜)

1 人権宣言の萌芽(p74)

1215年 マグナ・カルタ
1628年 権利請願
1689年 権利章典

自然権の思想および社会契約の理論(ロック、ルソー)


2 人権宣言の誕生(p74〜)

1789年 フランス人権宣言


3 人権宣言の普及(p75〜)


4 人権宣言の社会化(p76〜)

19世紀の人権宣言→自由国家的人権宣言
20世紀の人権宣言→社会国家的人権宣言
→1919年 ワイマール憲法


5 人権の国際化(p77)


II 人権の観念(p78〜)

1 人権の固有性・不可侵性・普遍性(p78〜)

(一) 固有性

人権の固有性…人権が憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされる権利であること
淵源;アメリカ独立宣言(1776年)
現れ;新しい人権(13条)


(二) 不可侵性

人権の不可侵性…人権が、原則として、公権力によって侵されないということ
現れ;人権と公共の福祉の問題、私的団体による人権侵害の問題


(三) 普遍性

人権の普遍性…人権は、人種、性、身分などの区別に関係なく、人間であることに基づいて当然に共有できる権利であること
現れ;天皇や外国人の人権


2 人間の尊厳性――人権の根拠(p80〜)


III 人権の内容(p81〜)

1 自由権・参政権・社会権(p81〜)

(1) 自由権…国家が個人の領域に対して権力的に介入することを排除して、個人の自由な意思決定と活動を保障する人権

自由権の内容
・精神的自由権
・経済的自由権
・人身の自由


(2) 参政権…国民の国政に参加する権利


(3) 社会権…社会的・経済的弱者が人間に値する生活を営むことができるように、国家の積極的な配慮を求めることのできる権利


日本国憲法における人権の分類
@包括的基本権(13条)
A法の下の平等(14条)
B自由権
C受益権(国務請求権)
D参政権
E社会権


2 分類の相対性(p82〜)


3 制度的保障(p84〜)

制度的保障…個人的権利と異なる一定の制度に対して、立法によってもその核心ないし本質的内容を侵害することができない特別の保護を与え、当該制度それ自体を客観的に保障していると解される場合

目的;制度の核心を立法権の侵害から守ること
問題点;制度が人権に優越し、人権の保障を弱める機能を営む可能性

@立法によっても奪うことのできない制度の核心の内容が明確であり、
A制度と人権との関係が密接であるもの、に限定する

制度的保障の例;大学の自治(23条)、私有財産制(29条1項)、地方自治(92条)、政教分離(判例)

*政教分離原則と信教の自由
制度的保障(津地鎮祭事件最高裁判決)
→国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由を保障しようとするもの
批判;分離は基本権を保障し基本権は分離を要請する関係にある


IV 人権の享有主体(p85〜)

1 天皇・皇族(p86〜)


2 法人(p87〜)

q 法人の人権共有主体性?
a 人権規定が、性質上可能なかぎり法人にも適用される(八幡製鉄事件判例)
∵法人は現代社会において一個の社会的実在として重要な活動を行っている

法人の政治的行為の自由は、権利の性質上保障される
∵法人の実在性を重視すれば、法人自体の外面的な精神活動を観念しうる
∵法人も自然人と同様納税の義務を負担
∵政治的な意見の表明を認めるだけの利害関係あり
自然人と異なる特別の規制に服する
∵法人のもつ巨大な経済的・社会的な実力
→@一般国民の政治的自由を不当に制限する効果をともなう
→A法人内部の構成員の政治的自由と矛盾・衝突する

判例[41]税理士会政治献金事件
■事案
強制加入団体である税理士会(公益法人)が、会の決議に基づいて、税理士法を業界に有利な方向に改正するための工作資金として会員から特別会費を徴収し、それを特定の政治団体(税理士政治連盟)に寄付した行為が、法人の「目的ノ範囲内」(民法43条)の行為か否かが争われた事件。
■判決の概要
政党など政治資金規制法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏をなすものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断に基づいて自主的に決定すべき事項であるから、それを税理士会が多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできない。
よって、本件寄付は、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士法49条2項所定の税理士会の目的の範囲外の行為であり、無効である。

判例[10]八幡製鉄事件
■事案
八幡製鉄(現在の新日本製鉄)の代表取締役が自由民主党に政治献金をした行為の責任を追及して同社の株主が提起した事件。
■判決の概要
議会制民主主義を支える不可欠の要素である政党の健全な発展に協力することも、社会的実在としての会社に当然期待されていることであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとし、政治資金の寄附もまさにさらにその自由の一環であり、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。

判例[152]国労広島地本事件
■事案
労働組合の特定の立候補者支援のための政治基金徴収が問題とされた事件。
■判決の概要
組合が統一候補を定めその選挙運動をすることは自由であるが、組合員の政治的信条の自由から特定の候補者の支持や費用の負担を強制することは許されない。


3 外国人(p89〜)

q 外国人の人権享有主体性?(「国民の」第3章)
a 権利の性質上国民のみを対象とするものを除き、肯定(マクリーン事件)
∵人権は前国家的性格
∵国際協調主義(前文、98条2項)


(一) 保障されない人権

(1) 参政権

選挙権・被選挙権は外国人には及ばない
しかし、定住外国人に法律で選挙権を付与することは憲法上禁止されていない

判例[6]外国人の公務就任権
■判決の概要
公権力の行使または公の意思の形成に参画することによって直接的に統治作用に関わる管理職に就くことはできないが、もっぱら専門的・技術的な分野においてスタッフとしての職務に従事するなど、統治作用に関わる程度の弱い管理職と、それ以外の、上司の命を受けて行う補佐的・補助的な事務またはもっぱら学術的・技術的な専門分野の事務に従事する公務員に就くことは、必ずしも国民主権の原理に反しない。


(2) 社会権


(3) 入国の自由

判例[3]森川キャサリーン事件
■事案
1973年日本に入国し日本人と結婚した定住外国人(アメリカ国籍)森川キャサリーンが、韓国への旅行計画をたて再入国許可の申請をしたところ、過去に3度再入国許可を得ていたにもかかわらず、指紋押捺を拒否したことを理由に不許可とされたもので、その取消しと国家賠償を請求した事件。
■判決の概要
外国人には憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではないから、再入国の自由も保障されない。


(二) 保障される人権の限界

判例[2]マクリーン事件
■事案
アメリカ人マクリーンが、在留期間1年としてわが国に入国し、1年後に、その延長を求めて、在留期間更新の申請をしたところ、法務大臣が、マクリーンが在留中に政治活動(ベトナム反戦、出入国管理法案反対、日米安保条約反対等のデモや集会に参加した行為)を行ったことを理由に、更新を拒否した事件。
■判決の概要
人権の保障は権利の性質上許されるかぎり外国人にも及び、政治活動についても、外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないと解される在留中の政治活動(わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動など)を除いて保障されるが、人権の保障は外国人の在留制度の枠内で与えられるにすぎないので、在留中の外国人の行為を、それが合憲・合法のものであっても、法務大臣は更新拒否のための消極的理由としてしんしゃくすることはできる。
よって、本件では法務大臣の裁量権の著しい逸脱・濫用は存在しない。

判例[4]指紋押捺拒否事件
■事案
外国人登録法によって要求される外国人登録原票などへの指紋押捺の義務づけが、憲法13条(個人の尊厳、プライバシー)、14条(不合理な差別の禁止)およびそれと同旨の国際人権規約の条項に反するとして争われた訴訟事件。
■判決の概要
押捺義務が3年に1度で、押捺対象も一指のみであった当時の制度(昭和57年法75号による改正前のもの)につき、指紋の押なつを強制されない自由を憲法13条によって保護される個人の私生活上の自由の一つとしたが、右押捺制度の立法目的には十分な合理性があり、かつ、必要性も肯定できるし、手段も一般的に許容される限度を超えない相当なものであった。



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