第6章 基本的人権の限界(p95〜)

I 人権と公共の福祉(p95〜)

1 二つの考え方

(一) 一元的外在制約説

「公共の福祉」は、人権の外にあって、それを制約することのできる一般的な原理
批判;法律の留保のついた人権保障と同じことになってしまう


(二) 内在・外在二元的制約説

12条、13条の「公共の福祉」は訓示的ないし倫理的な規定であるにとどまる
22条1項、29条2項の「公共の福祉」は例外的な社会国家目的達成のための政策的制約
批判;新しい人権の保障根拠を13条に求めることができない
批判;複合的性格を有する権利につき具体的な検討ができない


2 一元的内在制約説(p97〜)

公共の福祉…人権相互の矛盾衝突を調整するための実質的公平の原理
∵制限が許容されるのは、他の人権との衝突を調整する場合に限られる
@自由国家的公共の福祉(自由権を各人に公平に保障するための制約を根拠づける場合には、必要最小限度の規制のみを認める)
A社会国家的公共の福祉(社会権を実質的に保障するために自由権の規制を根拠づける場合には、必要な限度の規制を認める)
→権利の性質に応じて権利の制約の程度が異なる


3 比較衡量論(p98〜)


4 二重の基準論(p100〜)


II 特別な法律関係における人権の限界(p102〜)

1 特別権力関係の理論とその問題点(p102〜)

特別権力関係論…特別の公法上の原因によって成立する公権力と国民との特別の法律関係においては、
@法治主義の排除(公権力は包括的な支配権(命令権、懲戒権)を有し、個々の場合に法律の根拠なくして特別権力関係に属する私人を包括的に支配できる)、
A人権の制限(公権力は、特別権力関係に属する私人に対して、一般国民として有する人権を、法律の根拠なくして制限することができる)、
B司法審査の排除(特別権力関係内部における公権力の行為は原則として司法審査に服さない)
という法原則が妥当すると説く理論


2 公務員の人権(p103〜)

公務員の人権制限の根拠
憲法が公務員関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めている(15条、73条4号等)


3 在監者の人権(p104〜)

在監者の人権制限を正当化する根拠
憲法が在監関係とその自律性を憲法秩序の構成要素として認めている(18条、31条参照)
→拘禁と戒護および受刑者の矯正教化という在監目的を達成するために必要最小限度にとどまるものでなければならない

判例[18]「よど号」ハイ・ジャック新聞記事抹消事件
■事案
昭和44年の国際反戦デー闘争等において公務執行妨害等の罪名で起訴された勾留中の被疑者が、新聞を定期購読していたところ、たまたま発生した日航機「よど号」乗っ取り事件に関する新聞記事を拘置所長が全面的に抹消したので、その抹消処分は「知る権利」を侵害したとして争った事件。
■判決の概要
新聞閲読の自由の制限は在監目的を達するために真に必要と認められる限度に留められるべきである。監獄長の抹消処分が許されるためには、閲読を許すことにより監獄内の規律および秩序の維持にとって障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要である。
そして、抹消処分は適法である。


III 私人間における人権の保障と限界(p106〜)

1 社会的権力と人権(p106〜)

q 私人間において人権侵害の主張が認められるか?
a 私法の一般条項を、憲法の趣旨をとり込んで解釈・適用する(間接適用説)
∵巨大組織等の社会的権力による人権侵害の危険性←→私的自治
∵人権保障の理念は全ての法領域に妥当する客観的秩序


2 人権の私人間効力−−二つの考え方(p107〜)

判例[11]三菱樹脂事件
■事案
大学卒業後、被告(三菱樹脂株式会社)に採用された原告が、在学中の学生運動歴について、入社試験の際に虚偽の申告をしたという理由で、3カ月の試用期間終了後に本採用を拒否された事件。
■判決の概要
社会的に許容しうる限度を超える人権の侵害があった場合は、民法1条・90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって解決できる。
企業は雇用の自由を有し、特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできず、また、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者からこれに関する事項についての申告を求めることも違法ではない。

判例[13]日産自動車事件
■判決の概要
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定める会社の就業規則は、性別による不合理な差別を定めたものであるから、民法90条により無効である。

判例[12]昭和女子大事件
■事案
無届で法案反対の署名運動を行ったり、許可を得ないで学外の政治団体に加入したりした行為が、学則の具体的な細則たる生活要録の規定に違反するとして、自宅謹慎を申し渡された学生が、なおマスコミに大学の取調べの実情を公表したりしたため、退学処分を受けたので、生活要録が憲法19条・21条に違反することを理由に学生たる地位の確認を求めて争った事件。
■判決の概要
大学は国公立たると私立たるとを問わず学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設で、学生を規律する包括的権能を有するが、その権能も無制限なものではなく、在学関係設定の目的と関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものである。
そして、本件生活要録は、同大学が学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立学校であることをも勘案すれば、不合理なものと断定できず、退学処分も懲戒権者の裁量権の範囲内にあるので違反ではない。

判例[176]百里基地訴訟
■事案
茨城県百里航空自衛隊基地の建設に際し、用地の売買契約をめぐって国および2人の私人との間で起こった紛争。
■判決の概要
国が私人と対等の立場で締結する私法上の契約は、その成立の経緯および内容において実質的にみて公権力の発動たる行為となんら変わりがないといえるような特段の事情のない限り、憲法9条の直接適用を受けず、私法の適用を受けるにすぎない。
そして、憲法9条は私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成するが、本件売買契約が締結された昭和33年当時、私法的な価値秩序のもとにおいては、自衛隊のために国と私人との間で、売買契約その他の私法上の契約を締結することは、社会的に許容できない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立していたということはできない。

判例[33]日中旅行社事件
■判決の概要
傾向経営における政治的信条を理由とする解雇が認められるためには、その事業が特定のイデオロギーと本質的に不可分であり、その承認、支持を存立の条件とし、しかも労働者に対してそのイデオロギーの承認、支持を求めることが事業の本質からみて客観的に妥当である場合に限られる。


3 直接適用説の問題点(p109〜)

私人間にも性質上必ず直接適用される規定
@秘密投票(15条4項)
A奴隷的拘束の禁止(18条)
B婚姻の平等(24条)
C児童酷使の禁止(27条3項)
D労働基本権(28条)


4 間接適用説の内容(p111〜)


5 事実行為による人権侵害(p112〜)



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