第9章 精神的自由権(2)――表現の自由

I 表現の自由の意味(p162〜)

1 表現の自由の価値(p162)

@自己実現の価値…個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという、個人的な価値
A自己統治の価値…言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという、民主制に資する社会的な価値


2 表現の自由と知る権利(p162〜)

(一) 送り手の自由から受け手の自由へ

情報の送り手であるマス・メディアと情報の受け手である一般国民との分離が顕著


(二) 知る権利の法的性格

自由権
+参政権的役割
+社会権としての性格


3 アクセス権(p164〜)

情報の受け手である一般国民が、情報の送り手であるマス・メディアに対して、自己の意見の発表の場を提供することを要求する権利

判例[82]サンケイ新聞事件
■事実の概要
自民党がサンケイ新聞に掲載した意見広告が共産党の名誉を毀損したとして、共産党が同じスペースの反論文を無料かつ無修正で掲載することを要求した事件
■判旨
反論権の制度は、新聞を発行・販売する者にとっては紙面を割かなければならなくなる等の負担を強いられるのであって、これらの負担が、批判的記事、ことに公的事項に関する批判的記事の掲載をちゅうしょさせ、表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれも多分に存するなど、民主主義社会において極めて重要な意味をもつ新聞等の表現の自由に重大な影響を及ぼすので、名誉が毀損され不法行為が成立する場合は別論として、具体的な成文法の根拠がない限り、認めることはできない
本件の場合は政党間の批判・論評として、公共の利害に関する事実にかかり、その目的が専ら公益を図るものであるから、不法行為は成立しない


II 表現の自由の内容(p165〜)

1 報道の自由(p166〜)

(一) 意義

判例[78]博多駅(テレビフィルム提出命令)事件
■事実の概要
米原子力空母寄港反対闘争に参加した学生と機動隊員とが博多駅付近で衝突し、機動隊側に過剰警備があったとして付審判請求(公務員の職権濫用罪等に関して検察が不起訴にした場合にその当否を審査する審判)がなされた。福岡地裁は、テレビ放送会社に、衝突の模様を撮影したテレビフィルムを証拠として提出することを命じたが、放送会社はその命令が報道の自由を侵害するとして争った。
■判旨
公正な裁判の要請に基づく提出命令の必要性と取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合等の事情を比較衡量して決せられるべきである。この比較衡量をする際、刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ない場合で、報道機関の不利益が必要な限度をこえないよう配慮すべきである。
@本件フィルムは、過剰警備か否かを判定するうえでほとんど必須のものと認められるほど証拠上きわめて重要な価値を有するものであること、他方、A報道機関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまること、Bすでに放映ずみのものを含む放映のために準備されたものであること、などから、提出命令は合憲である。


(二) 取材の自由

判例[79]TBSビデオテープ差押事件
■事実の概要
TBSテレビが放映した番組中に、暴力団事務所内などでの組員の債権取立てにからんだ脅迫場面などが写されていたところ、警察はこの放映を端緒として暴力行為、傷害被疑事件の捜査を開始し、TBS本社内において未放映部分を含むビデオテープ29巻を押収した。TBSから押収処分の取消しを求めて準抗告が申し立てられ(その係属中に警察は29巻の中25巻を還付)、東京地決H2・6・13は4巻に対する押収を合憲・適法と判断し、これに対する特別抗告がなされた事件。
■判旨
適正迅速な捜査の遂行という要請がある場合にも、適正迅速な捜査を遂げるための必要性と、取材結果を証拠として押収されることによって報道機関の報道の自由が妨げられる程度及び将来の取材の自由が受ける影響その他諸般の事情を比較衡量すべきである。
@当該ビデオテープが軽視することのできない悪質な被疑事件の全容を解明して犯罪の成否を判断する上で重要な証拠価値をもち、他方、Aテープを編集したものが放映済みであり、テープが被疑者らの協力によりその犯行場面などを撮影収録したもので、協力者は放映されることを了承していたこと、などから当該処分は憲法21条に違反しない。

判例[80]外務省秘密漏洩事件(西山記者事件)
■事実の概要
1971年6月調印された沖縄返還協定に関する外務省の極秘電文を毎日新聞記者が外務省女性事務官から入手し、社会党議員に流したため、事務官は国家公務員法100条1項違反、記者は同111条(秘密漏示そそのかし罪)違反に問われた事件。
■判旨
手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものであれば、正当な業務行為と言えるが、取材対象者(女性事務官)と肉体関係をもつなど、人格の尊厳を著しく蹂躙した取材行為は、法秩序全体の精神に照らし社会観念上、到底是認することのできない不相当なものであり、違法である

判例[77]法廷メモ採取事件

判例[75]石井記者事件


(三) 放送の自由


2 性表現・名誉毀損的表現



3 営利的言論の自由


III 表現の自由の限界

1 二重の基準の理論


2 事前抑制の理論

(一) 検閲の概念

判例[73]「北方ジャーナル」事件
■事実の概要
1979年施行の北海道知事選に立候補予定の者を批判攻撃する記事を掲載した雑誌が、発売前に名誉毀損を理由に差止められた事件
■判旨
仮処分(旧民訴法756条〜760条の下での仮処分)による事前差止めは「検閲」には当たらないが、事前抑制そのものであるから厳格かつ明確な要件が必要である。
公職選挙の候補者に対する批判等の表現行為に関するものである場合には、一般にそれは公共の利害に関する事項であり、その表現は私人の名誉権に優先する社会的価値を含むので、事前差止めは原則として許されない。
しかし、@表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつA被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、例外的に事前差止めが許される。
そして、例外的に許されるための条件として、債権者(名誉権を侵害された立候補予定者)の提出した資料によって@、Aの要件が明らかである場合は格別、原則として口頭弁論または債務者(出版社)の審尋を行い、表現内容の真実性等の主張立証の機会を与えなければならない。

判例[57]岐阜県青少年保護条例事件


(二) 税関検査

判例[74]税関検査合憲判決
■判旨
「検閲」(21条2項)…行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること



(三) 教科書検定

判例[94][95]教科書裁判(家永訴訟)
■事実の概要
元東京教育大学家永三郎が、教科書「新日本史」の検定不合格処分に対して、@その取消しと、A損害賠償を求めて提起した訴訟。
■判旨


3 明確性の理論(p185〜)

明確性の基準…精神的自由を規制する立法は明確でなければならない
∵萎縮的効果

・漠然性のゆえに無効
・過度の広汎性のゆえに無効

判例[88]徳島市公安条例事件
■事実の概要
■判旨
ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読みとれるかどうかによってこれを決定すべきである。
「交通秩序を維持すること」という条例の定める許可条件(この違反には罰則がある)のように、文言は抽象的で立法措置として著しく妥当を欠くものであっても、右規定は殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを命じているものと解されるので、合憲である。


4 「明白かつ現在の危険」の基準


5 「より制限的でない他の選びうる手段」の基準


IV 集会・結社の自由、通信の秘密

1 集会の自由

集会…多数人が政治・経済・学問・芸術・宗教などの問題に関する一定の場所に集まること


2 集団行動の自由


3 結社の自由

結社…多数人が政治、経済、宗教、芸術、学術ないし社交など、さまざまな共通の目的をもって、継続的に結合すること


4 通信の秘密



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