第10章 経済的自由権(p204〜)

I 職業選択の自由(p204〜)

1 意義と限界(p204〜)

職業選択の自由(22条1項)…自己の従事する職業を決定する自由


(一) 規制の根拠

・職業は性質上、社会的相互関連性が大きいので、無制限な職業活動を許すと、社会生活に不可欠な公共の安全と秩序の維持を脅かす事態が生じるおそれが大きい→自由国家的公共の福祉(12条、13条)
・現代社会の要請する社会国家の理念を実現するためには、政策的な配慮に基づいて積極的な規制を加えることが必要→社会国家的公共の福祉(22条1項)


(二) 規制の類型

消極目的規制…国民の生命および健康に対する危険を防止もしくは除去ないし緩和するために課せられる規制
積極目的規制…福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、とくに社会的・経済的弱者を保護するためになされる規制


2 規制の合憲性判定の基準(p206〜)

合理性の基準(立法府の下した判断に合理性がある、合憲性推定の原則)
∵二重の基準の理論←統治機構の基本をなす民主制の過程との関係、裁判所の審査能力との関係

消極目的規制→厳格な合理性の基準(裁判所が規制の必要性・合理性および同じ目的を達成できる、よりゆるやかな規制手段の有無を立法事実に基づいて審査する)
積極目的規制→明白の原則(当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とする)

規制の態様をも考え合わせる必要
違憲審査の基準を積極・消極に対応させることができない

判例[99]小売市場距離制限事件
■事案の概要
小売商業調整特別措置法3条1項が小売市場の開設を許可する条件として適正配置(既存の市場から一定の距離以上離れていることを要求する、いわゆる距離制限)の規制を課していることの合憲性が争われた事件。
■判旨
@経済活動の規制について積極目的の規制と消極目的の規制とを区別し、A積極目的の規制に対しては明白の原則が妥当すると説き、B本件の規制の目的が、経済的基盤の弱い小売商を相互間の過当競争による共倒れから保護するという積極目的の規制であると認定して、規制を合憲とした。

判例[100]薬局距離制限事件
■事案の概要
薬局の開設に適正配置を要求する旧薬事法6条2項および広島県条例の規制の合憲性が争われた事件。
■判旨
@消極目的の規制(許可制をとる警察的規制)については、規制の必要性・合理性の審査と、よりゆるやかな規制手段で同じ目的が達成できるかどうかの検討が必要であるとし、A薬局の距離制限は国民の生命・健康に対する危険の防止という消極目的のものであると認定し、B薬局の開設の自由→薬局の偏在→競争激化→一部薬局の経営の不安定→不良医薬品の供給の危険性という因果関係は、立法事実によっても合理的に裏づけることはできないから、規制の必要性と合理性の存在は認められないとし、また、C立法目的はよりゆるやかな規制手段、すなわち行政上の取締りの強化によっても十分に達成できる、と論じて、適正配置規制を違憲とした。

判例[96]公衆浴場距離制限事件

判例[102]酒類販売免許制事件


II 居住・移転の自由(p210〜)

1 その内容と性質(p210)

自己の住所または居所を自由に決定し、移動すること


2 海外渡航の自由(p211〜)

判例[114]帆足計事件


3 国籍離脱の自由(p212)


III 財産権の保障(p213〜)

1 考え方の変化(p213)


2 財産権保障の意味(p213〜)

・個人の現に有する具体的な財産上の権利の保障
・私有財産制の保障(制度的保障→生産手段の私有制)

3 財産権の一般的制限(p214〜)

(一) 公共の福祉による制限

判例[103]森林法共有林事件
■判旨
森林法186条(「森林の共有者は、民法第256条第1項の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもつて分割の請求をすることを妨げない」)は違憲である。


(二) 条例による制限の許否

判例[104]奈良県ため池条例事件


4 財産権の制限と補償の要否(p216〜)

29条3項の趣旨
@財産権不可侵の原則の徹底(公共事業のために収用される私有財産の損失を貨幣価値によって償うことによって財産権不可侵の原則を貫く)
A平等原則の契機(公共の利益のために特定人に加えられる経済上の損失は全体において負担すべき)


(一) 「公共のために用ひる」の意味

収用全体の目的が広く社会公共の利益のため


(二) 補償の要否

特定の個人に特別の犠牲を加えた場合には補償が必要(特別犠牲説)
@形式的要件(侵害行為の対象が広く一般人か、特定の個人ないし集団か)
A実質的要件(侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度内であるか、それを超えて財産権の本質的内容を侵すほど強度なものであるか)

q 直接憲法に基づく補償請求?
a 法令上補償規定を欠く場合でも、29条3項を直接根拠として、補償請求をすることができる(河川附近地制限令事件)
∵財産権は憲法が保障する具体的権利
→29条3項は、その財産権を公共の利益のために用いた場合の救済規定
→当然に憲法上補償請求権が発生する


5 正当な補償(p218〜)

(一) 2つの考え方

当該財産の客観的な市場価格を全額補填すべき(完全補償説)
∵損失補償制度は、本来、適法な権力の行使によって生じた損失を個人の負担とせず、平等原則によって国民の一般的な負担に転嫁させることを目的とする制度


(二) 生活権補償



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