第14章 国会(p261〜)

I 権力分立の原理(p261〜)

1 総説(p261〜)

(一) 伝統的意味

権力分立…国家の諸作用を性質に応じて立法・行政・司法というように区別し、それを異なる機関に担当させるよう分離し、相互に抑制と均衡を保たせる制度

趣旨;国民の権利・自由を守る(自由主義的な政治組織の原理)


(二) 歴史性

権力分立制は歴史的に形成されてきた→そのあり方は、時代により国により異なる

@アメリカ型(三権を憲法の下で同格なものとみる)
∵立法権不信の思想
Aフランス型(議会を中心とする立法権優位の権力分立を考える)
∵立法権が中心的地位

同じ権力分立原理が、大陸諸国では裁判所の違憲審査権を否認する最も大きな理論的根拠
アメリカではそれを支える大きな理論的・思想的支柱の一つ

日本国憲法は、アメリカ型に近い考え方
∵裁判所の違憲審査権


2 権力分立制の現代的変容(p263)

@行政国家の現象(行政府が国の基本政策の形成決定に事実上中心的な役割を営む)
∵積極国家・社会国家の要請→行政権が肥大化

A政党国家の現象(政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を演ずる)
∵政党は国民と議会を媒介する

B司法国家の現象


3 政党(p264〜)

判例[161]八幡製鉄事件
■判旨
・憲法は、政党の存在を当然に予想している
・政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、国民の政治意思を形成する最も有力な媒介である

政党助成金
政党の自律的存在や運営が大きく阻害されたり、大政党のみが有利に取り扱われたりするようになれば、違憲の問題も生じる


II 国会の地位(p266〜)

1 国民の代表機関(p266〜)

「全国民を代表する選挙された議員」(43条1項)


(一) 政治的代表

国民は代表機関を通じて行動し、代表機関は国民意思を反映するものとみなされるという趣旨(政治的な意味)
→表決の自由(自由委任の原則)

自由委任と党議拘束
党議拘束は自由委任の枠外の問題
∵現代の政党国家においては、議員は所属政党の決定に従って行動することによって国民の代表者としての実質を発揮できる
もっとも、議員の自発的な党籍の変更や離脱に限って議員資格を喪失させる規定を設けることは許される


(二) 社会学的代表

国民意思と代表者意思との事実上の類似が重視される
∵議員の地位の国民意思(具体的には選挙)による正当化


2 国権の最高機関(p269)

q「国権の最高機関」(41条)?
a 政治的美称
(国会が主権者である国民によって直接選任され、その点で国民に連結しており、しかも立法権をはじめ重要な権能を憲法上与えられ、国政の中心的地位を占める機関である)
∵国会は主権者でも統治権の総攬者でもなく、内閣の解散権と裁判所の違憲立法審査権によって抑制されている
→国会が最高の決定権ないし国政全般を統括する権能をもった機関であるというように、法的意味に解することはできない
∵積極国家・社会国家(25条参照)
→行政権が肥大化
→行政国家現象(行政府が国の基本政策の形成決定に事実上中心的な役割を営む)


3 唯一の立法機関(p269〜)

「国の唯一の立法機関である」(41条)
趣旨;国民代表機関である国会(43条)が、国民生活を規律する法規範の定立を独占することで国民の権利・自由を可及的に保障する


(一) 立法の意味

@形式的意味の立法(国法の一形式である「法律」の定立)

A実質的意味の立法(「法規」という特定の内容の法規範の定立)
「法規」…一般的・抽象的な法規範をすべて含む
=法律が不特定多数の人に対して、不特定多数の場合ないし事件に適用される法規範であること
∵行政国家の現象が顕著になっている(積極国家・社会国家→行政権の肥大化)
→特に行政権に対する民主的統制の必要性は大きい(国民主権原理)

q 国家行政組織法7条5項の合憲性?
a 合憲
原則 法律事項と解するべき
∵行政機関に関する事項も不特定多数の国民にかかわる→民主的統制の必要性は大きい
∵内閣の組織は法律事項(66条1項)
修正 細目的事項については、政令に包括的に委任することができる(cf 73条6号)
∵委任立法の必要性(社会福祉国家においては国家の任務が増大し、専門的・技術的事項に関する立法や、事情の変化に即応して機敏に適応することを要する事項に関する立法の要求が増加した)

q 処分的法律(措置法)
a @権力分立の核心が侵され議会・政府の憲法上の関係が決定的に破壊されることなく、また、
  A社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものである場合には許される


(二) 唯一の意味

@国会中心立法の原則…国会による立法以外の実質的意味の立法は、憲法の特別の定めがある場合を除いて、許されない

国会中心立法の原則との関係で問題となるもの
(i)議院規則(58条2項)
(ii)裁判所規則(77条)
(iii)行政部の制定する命令(73条6号参照)
(iv)地方公共団体の条例(94条)

内閣の発する政令は、執行命令か、委任命令でなければならない
q 法律の委任は、「唯一の立法機関」(43条)に反しないか?
(法律の委任…法律が自ら規定しなければならない事項を他の法形式に委任すること)
a 国会の民主的コントロールが及ぶ限り反しない
∵社会福祉国家(25条参照)
 =@専門的・技術的事項に関する立法
  A事情の変化に即応して機敏に適応することを要する事項に関する立法
  B地方的な特殊事情に関する立法
  C客観的公正のとくに望まれる立法
∵国会中心立法の原則の趣旨(国民代表機関である国会(43条)が、国民生活を規律する法規範の定立を独占することで国民の権利・自由を可及的に保障すること(国会の民主的コントロール))
∵73条6号但書
     ↓
q どの程度の民主的コントロールが及べばよいか?
a 個別的・具体的な委任→目的と受任者が依拠すべき基準

判例[222]猿払事件
■事案の概要
公務員の政治的行為を制限する国家公務員法102条1項が、例示の定めはあるものの、「人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」というような、禁止される「政治的行為」が何かをほとんどあげて規則(人事院規則14-7)に一任していることが、個別具体的な委任と言えるか否か争われた事件
■判旨
公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するもので、合憲である。


A国会単独立法の原則…国会による立法は、国会以外の機関の参与を必要としないで成立する

国会単独立法の原則との関係で問題となるもの
(i)内閣の法案提出権
(ii)法律への、主任の国務大臣の署名や内閣総理大臣の連署(74条)
(iii)天皇による公布(7条)

q 内閣は法律の発案権を有すか?
a 肯定
∵「議案」(72条前段)に法律案も含まれる
∵議院内閣制の下では国会と内閣の協働が要請されている
∵国会は法律案を自由に修正・否決できる


III 国会の組織と活動(p273〜)

1 二院制(p273〜)

(一) 類型


(二) 存在理由

@議会の専制の防止
A下院と政府との衝突の緩和
B下院の軽率な行為・過誤の回避
C民意の忠実な反映


(三) 両院の関係

衆議院の優越
・内閣不信任決議案(69条)
・予算先議権(60条1項)
・法律・予算の議決(59条、60条)
・条約の承認(61条)
・内閣総理大臣の指名(67条)


2 選挙制度(p274〜)

(一) 選挙区

選挙区…選挙人団を区分するための区域

・小選挙区…一人の議員を選出する選挙区
・大選挙区…二人以上の議員を選出する選挙区

平成6年まで
中選挙区制(一つの選挙区から三人ないし五人の議員を選出する制度)


(二) 代表の方法


(三) 選挙制度の比較


3 国会議員の地位(p278〜)

(一) 不逮捕特権

不逮捕特権の保障の趣旨
@議員の身体の自由を保障する
A議員の審議権を確保する


(二) 発言の免責特権

趣旨;議員の職務の執行の自由を保障

特権の保障は、「演説、討論又は表決」に限定されず、議員の国会における意見の表明とみられる行為や、職務行為に付随する行為にも及ぶ


4 国会の活動(p280〜)

(一) 会期

会期…国会が憲法上の権能を行使するのは、一定の限られた期間

会期不継続の原則…各会期は独立して活動するのが建前で、会期中に議決されなかった案件は後会に継続しないとする原則


(二) 緊急集会

緊急集会…衆議院が解散されて総選挙が施行され、特別会が召集されるまでのあいだに、法律の制定・予算の改訂その他国会の開会を要する緊急の事態が生じたとき、それに応えて国会を代行する制度


(三) 会議の原則

(1) 定足数

定足数…合議体が活動するために必要な最小限の出席者の数


(2) 表決数


(3) 公開

傍聴の自由はもとより、報道の自由が認められること


(四) 委員会制度

委員会中心主義…委員会の審議が原則として議案の成否を左右する制度


IV 国会と議員の権能(p283〜)

1 国会の権能(p284〜)

(一) 憲法改正の発議権(96条1項)


(二) 法律の議決権(59条)


(三) 内閣総理大臣の指名権(6条1項、67条1項前段)


(四) 弾劾裁判所の設置権(64条)


(五) 財政監督権(83条)


(六) 条約承認権(73条3号但書、61条)

外交統制の手段
@条約承認権(73条3号但書、61条)
A国政調査権(62条)
B国務大臣の答弁または説明のための出席(63条)
C国会の決議(たとえば、不戦決議など)

条約…文書による国家間の合意

条約の締結は、内閣の権能(73条3号)
∵外交関係は政府の専権とされてきたという伝統
∵実際に相手国との交渉を行うについて最も適しているのは政府

q 「事後に」国会の承認が得られなかった条約の効力?
a @国内法的には当然無効
  A国会の承認権の規定の具体的な意味が諸外国にも周知の要件と解されているような場合には、国際法的にも無効(条件付無効説)
∵条約承認権の意義←→国内法と国際法のバランス
∵条約法に関するウィーン条約46条

q 国会の条約修正権?(「国会の承認」(73条3号)に修正して承認することまで含まれるか?)
a 肯定説
∵条約締結行為に対する国会の関与の程度が著しく強化された
←国会には条約を不承認とする権限も認められるから、条件付承認の意味を持つ修正付き承認であれば、なおさら認めるべき
 両院協議会の制度(61条)
     ↓
q 修正承認の効力?
a 内閣に再交渉の政治的義務が発生するにとどまる
∵条約は相手国との合意によって成立する


2 議院の権能(p286〜)

(一) 議院自律権

議院自律権…各議院が内閣・裁判所など他の国家機関や他の議院から監督や干渉を受けることなく、その内部組織および運営等に関し自主的に決定できる権能

(1) 内部組織に関する自律権

@会期前に逮捕された議員の釈放要求権
A議員の資格争訟の裁判権(55条)
B役員選任権(58条1項)


(2) 運営に関する自律権

@ 議員規則制定権(58条2項)


A 議員懲罰権(58条2項)


(3) 議員自律権と司法審査との関係


(二) 国政調査権

(1) 国政調査権の性質

議員に与えられた権能を実効的に行使するために認められた補助的権能
→国政に関連のない純粋に私的な事項を除き、国政調査権の及ぶ範囲は国政のほぼ全般にわたる
∵立法権は広汎な事項に及んでいる


(2) 国政調査権の範囲と限界

@ 司法権との限界

・現に裁判が進行中の事件についての調査
・裁判の内容の当否を批判する調査
→許されない
∵司法権の独立

議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査する場合→許される


A 検察権との関係

・検察権の行使に政治的圧力を加えることが目的と考えられる調査
・起訴事件に直接関係する事項や、公訴追行の内容を対象とする調査
・捜査の続行に重大な支障を及ぼすような方法による調査
→許されない
∵検察事務は行政権の作用←→検察作用は裁判と密接にかかわる準司法的作用


B 一般行政権との関係


C 人権との関係



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