第15章 内閣(p293〜)

I 行政権と内閣(p293〜)

1 行政権の概念(p293〜)

「行政権」(65条)…すべての国家作用のうちから、立法作用と司法作用を除いた残りの作用
※法の下に法の規制を受けながら、国家目的の積極的な実現をめざして行われる全体として統一性をもった継続的な形成的活動(田中二郎説)


2 独立行政委員会(p294〜)

@合議制の行政機関である点で通常の行政機関と異なり、
A多かれ少なかれ内閣から独立して職務を遂行し、
B通常、準立法権および準司法権をも併有するという特徴を有する制度
e.g. 人事院、公正取引委員会、国家公安委員会

目的;政党の圧力を受けない中立的な立場で公正な行政を確保する

独立行政委員会の任務
・準司法的作用(裁決・審決)
・準立法的作用(規則の制定)
・政治的中立性が高度に要求される行政作用(人事・警察・行政審判)

q 独立行政委員会は65条に反しないか?
a 合憲
∵65条が「行政権は、内閣に属する」と定めた趣旨
@三権分立(41条、76条とともに三権分立制を規定する)
→福祉主義(25条参照)の下で、行政権の肥大化が顕著な現代国会においては、三権分立の主眼は行政権の抑制
A民主的責任行政(行政権を内閣の監督下に置く)
→65条は、内閣がすべての行政について直接に指揮監督権をもつことまで要求しているわけではない
 政党の圧力を受けない中立的な立場で公正な行政を確保すべき分野は、そもそも国会のコントロールに親しまない

問題1


II 内閣の組織と権能(p296〜)

1 内閣の組織(p296)

内閣…首長たる内閣総理大臣およびその他の国務大臣でこれを組織する合議体(66条1項)


2 文民(p296〜)

内閣構成員の資格
・内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならない(66条2項)
・国務大臣の過半数は国会議員でなければならない(68条)

q 「文民」の意味?
a これまで職業軍人であったことがない者


3 内閣総理大臣(p297〜)

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名し、天皇が任命する(67条、6条)

内閣総理大臣…内閣という合議体の首長
※明治憲法においては、同輩中の主席にすぎず、他の国務大臣と対等の地位

内閣総理大臣の権限(首長としての地位)
・国務大臣の任免権(68条)
・内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する権限(72条)
・法律・政令に署名し、または、連署すること(74条)
・国務大臣の訴追に対して同意を与えること(75条)
 ∵訴追が慎重に行われることを担保する
 ∵総理の首長的地位を確保する

q 内閣総理大臣の「指揮監督」権(72条)?
a 原則 「閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督」する(内閣法6条)
  例外 閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有する(判例[185]ロッキード事件丸紅ルート)
∵内閣総理大臣は、内閣という合議体の首長(66条1項)

問題2


4 内閣の権能と責任(p298〜)

(一) 内閣の職権

・法律の誠実な執行と国務の総理(73条1号)
・外交関係の処理(73条2号)
・条約の締結(73条3号)
・官吏に関する事務の掌理(73条4号)
・予算の作成と国会への提出(73条5号)
・政令の制定(73条6号)
・恩赦の決定(73条7号)
・一般の行政事務(73条)
・天皇の国事行為に対する助言と承認(3条、7条)
・最高裁判所長官の指名(6条2項)
・その他の裁判官の任命(79条1項、80条1項)
・国会の臨時会の召集(53条)
・予備費の支出(87条)
・決算審査および財政状況の報告(90条1項、91条)

q 内閣の法律執行停止権?
 反対説 肯定説
  ∵「法律」(73条1号)は憲法に適合する内容をもつ法律
  ∵98条1項、99条
 批判 内閣に拒否権を認めることになる
    内閣に法律案提出権があり、その法律の改廃を国会に求めることができる
a 否定説
∵「国権の最高機関」、「唯一の立法機関」(41条)である国会の判断に基づいて成立した法律は、合憲性の推定がなされる
∵98条1項、99条は権限の配分に影響を及ぼすものではない

内閣が上の職権を行うのは、閣議による(内閣法4条1項)
閣議…国務大臣全体の会議

q 閣議の議決は多数決によりうるか?
a 否定→全員一致
∵内閣が一丸となって事にあたることが連帯責任を負う(66条3項)上から望ましい
∵全員の意見が一致しないときは、内閣総理大臣は国務大臣を罷免しうる(68条)


(二) 内閣の責任

・天皇の国事行為に対する内閣の「助言と承認」に関する責任(3条)
・「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」(66条3項)
→政治責任、連帯責任
※単独の責任(個別責任)を負うことは、憲法上否定されているわけではない

問題3

問題4

問題5(昭和52年第2問)

問題6


5 総辞職(p300〜)

必ず総辞職しなければならない場合
@衆議院が不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したとき、10日以内に衆議院が解散されない場合(69条)
A内閣総理大臣が欠けた場合(70条)
B衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった場合(70条)


III 議院内閣制(p301〜)

1 議院内閣制の本質(p301〜)

議院内閣制…議会と政府(行政府)とが分立しつつも、政府は議会の信任に依拠して存在し、他面政府は議会の解散権をもつことにより、制度上議会と政府との間に連携と反発(均衡)の関係を内包せしめている統治形態

議院内閣制の本質的要素
@議会と政府が一応分立していること
A政府が議会に対して連帯責任を負うこと→責任本質説
B内閣が議会の(自由な)解散権を有すること→均衡本質説


2 日本国憲法における議院内閣制(p303〜)

・内閣の連帯責任の原則(66条3項)
・内閣不信任決議権(69条)
・内閣総理大臣を国会が指名すること(67条)
・内閣総理大臣および他の国務大臣の過半数は国会議員であること(67条、68条)


3 衆議院の解散(p305〜)

解散…任期満了前に議員の資格を失わせる行為

解散の機能
@内閣による議会への抑制手段(自由主義的意義)
A解散に続く総選挙(54条1項)によって国民の審判を求める(民主主義的意義)

q 解散権の所在?
 反対説 69条を根拠に、衆議院の不信任決議が可決された場合
   ∵「助言と承認」(7条)は実質的決定権を含まない
 批判 政党内閣制の下では多数党の支える内閣に対し不信任決議が成立する可能性は稀であるため、解散権を行使できる場合が著しく限定されてしまう
a 衆議院の解散という国事行為(7条3号)に対する内閣の「助言と承認」を根拠として、内閣の自由な解散決定権が認められる
∵内閣が「助言と承認」を行う前提として行為の実質的決定を行っても、その結果として天皇の国事行為が形式的・儀礼的なものになるならば、憲法の精神に反しない
 →内閣の「助言と承認」は実質的決定権を含む場合もある
∵7条によって内閣に実質的な解散決定権が存するという慣行が成立している

q 解散権の限界?
a 解散は国民に対して内閣が信を問う制度であるから、それにふさわしい理由が存在しなければならない
@衆議院で内閣の重要案件が否決され、または審議未了になった場合
A政界再編成等により内閣の性格が基本的に変わった場合
B総選挙の争点でなかった新しい重大な政治的課題に対処する場合
C内閣が基本政策を根本的に変更する場合
D議員の任期満了時期が接近している場合

q 衆議院の解散決議による解散は認められるか?
a 否定
∵自律的解散は、多数者の意思によって、少数者の議員たる地位が剥奪されることになる

q 違憲と判断された定数表のまま、内閣は解散を行いうるか?
a 否定
∵解散の機能
@内閣による議会への抑制手段(自由主義的意義)
→違憲審査制度の意義をあまりにも軽視することになり、三権分立の理念に反する
A解散に続く総選挙(54条1項)によって国民の審判を求める(民主主義的意義)
→民意の正確な表明は不可能

問題7(昭和28年第3問)

問題8



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