第16章 裁判所(p307〜)
I 司法権の意味と範囲(p307〜)
1 司法権の概念(p307〜)
「司法」…具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用
2 司法権の範囲(p309)
3 法律上の争訟(p309〜)
「法律上の争訟」(裁判所法3条)
@当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、
Aそれが法律を適用することにより終局的に解決することができるもの
客観訴訟…具体的事件性を前提とせずに出訴する制度をとくに法律で設けている場合
@民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)
(i)選挙訴訟(公職選挙法203条、204条)
(ii)住民訴訟(地方自治法242条の2)
A機関訴訟(行政事件訴訟法6条)
∵何らかの具体的な国の行為を争う点では、法律の純粋な抽象的審査ではなく、国の行為と提訴権者の権利・利益の侵害との間に一定の関係があると考えることもできる
4 司法権の限界(p312〜)
(一) 自律権に属する行為
懲罰や議事手続など、国会または各議員の内部事項については自主的に決定できる権能
(二) 自由裁量行為
(三) 統治行為
統治行為…直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為
∵統治行為は、裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられている(苫米地判決)
(1) 論拠
高度の政治性を帯びた行為は、政治的に無責任な裁判所の審査の範囲外にあり、その当否は国会・内閣の判断に委ねられている(内在的制約説)
(2) 範囲と限界
・精神的自由権の侵害を争点とする事件には、統治行為を適用すべきでない
∵民主政は人権の尊重を目的とする
(四) 団体の内部事項に関する行為
一般市民社会の中にあってこれとは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会の内部紛争はすべて司法審査の対象にならない
(1) 地方議会
(2) 大学
(3) 政党
一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、処分の当否は、適正な手続に則ってなされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られる(共産党袴田事件)
(4) 宗教団体
II 裁判所の組織と権能(p318〜)
1 裁判所の組織(p318)
2 特別裁判所の禁止(p318〜)
q 「特別裁判所」(76条2項)の意義?
a 特別の人間または事件について裁判するために、通常裁判所の系列から独立して設けられる裁判機関
∵76条2項の趣旨;平等原則、司法の民主化、法の解釈の統一
∴裁判所の裁判の前審として、行政機関が行政処分についての審査請求や異議申立てに対して裁決ないし決定を下すことは、差しつかえない(76条2項後段参照)
法律上の争訟を裁判する権限には、法令の適用の前提としての具体的事件における事実の認定も含まれる
→行政機関の認定した事実が裁判所を絶対的に拘束し、訴訟では法令の適用が審理されるだけだとすれば、32条および76条2項に違反する
q 実質的証拠の法則(実質的証拠があるときには、裁判所は独立行政委員会の事実認定に拘束される)?
e.g. 公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的証拠があるときには、裁判所を拘束する(独占禁止法80条)
a 絶対的に拘束する場合には76条1項に反する
∴実質的証拠の有無の判断は裁判所が行う(同2項)ので許される
3 下級裁判所の裁判官(p319〜)
「弾劾」(78条)…訴追すなわち罷免の請求に基づき公権力が公務員を罷免する制度
4 最高裁判所の構成と権限(p320〜)
(一) 構成
最高裁判所長官→内閣の指名に基づいて、天皇が任命する(6条2項)
最高裁判所判事→内閣が任命し天皇がこれを認証する(79条1項、裁判所法39条)
(二) 権限
@上告および訴訟法でとくに定める抗告についての一般裁判権
A国家行為の合憲性審査権
B最高裁判所規則の制定権
C下級裁判所の裁判官任命権
D下級裁判所および裁判所職員を監督する司法行政監督権(裁判所法80条)
5 最高裁判所裁判官の国民審査(p321〜)
趣旨;裁判官の選任に対して民主的コントロールを及ぼす
6 最高裁判所規則制定権(p322〜)
77条1項の沿革;英米法
77条1項の趣旨;裁判所の自主性確保、裁判所の専門的な判断の尊重
規則で定められる事項
・裁判所の自律権にかかわる純粋の内部事項
・一般国民が訴訟関係者たるかぎりそれに拘束される主たる当事者となる事項
規則事項は、同時に、法律でも定めることができる
→法律優位説
∵41条の趣旨、ことに刑事訴訟については31条
7 裁判の公開(p324〜)
趣旨;裁判の公正を確保
「対審」…裁判官の面前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べること
「公開」…傍聴の自由を認めること
傍聴の自由は、報道の自由を含む
8 陪審制
司法に対する国民参加の制度
・大陪審…一般国民の中から選任された陪審員が、正式起訴をするかを決定する制度
・小陪審…一般国民の中から選任された陪審員が、審理に参加し、評決する制度
・参審制…一般国民の中から選任された参審員が、職業裁判官とともに合議体を構成して裁判する制度
III 司法権の独立(p326〜)
1 司法権独立の意義(p326〜)
趣旨;裁判が公正に行われ人権の保障が確保されるため
∵@司法権は非政治的権力であり、政治性の強い立法権・行政権から侵害される危険性が大きい
∵A司法権は、裁判を通じて国民の権利を保護することを職責としているので、政治的権力の干渉を排除し、とくに少数者の保護を図ることが必要である
2 司法権独立の内容(p327〜)
@司法権が立法権・行政権から独立していること(広義の司法権の独立)
A裁判官が裁判をするにあたって独立して職権を行使すること(裁判官の職権の独立)
職権の独立を強化する制度
・裁判官の身分保障(78条等)
・下級裁判所裁判官の指名(80条)
・規則制定権(77条)
・行政機関による裁判官の懲戒処分の禁止(78条)
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