第17章 財政・地方自治(p330〜)
I 財政(p330〜)
1 財政民主主義(p330)
財政の適正な運営は国民の重大な関心事(∵国民の負担)→国会のコントロール
∴財政民主主義(83条)
2 租税法律主義(p330〜)
租税は国民に対して直接負担を求めるもの
→必ず国民の同意を得なければならない(「代表なければ課税なし」)
∴租税法律主義(84条)
(1) 「租税」…国または地方公共団体が、その課税権に基づいて、その使用する経費に充当するために、強制的に徴収する金銭給付
財政法3条は、憲法83条または84条から生ずる結論を確認し表明したもの
(2) 「法律」による議決を要する事項
・課税要件(納税義務者、課税物件、課税標準、税率等)
・税の賦課・徴収の手続
法律上は課税できる物品であるにもかかわらず、実際上は非課税として取り扱われてきた物品を、通達によって新たに課税物件として取り扱うことも、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものであれば、違憲でない(百選[208]事件)
3 予算(p322〜)
予算…一会計年度における国の財政行為の準則
(一) 法的性格
予算法形式説(予算は、「予算」という独自の法形式である)
∵・予算は政府を拘束するのみ
∵・予算の効力は一会計年度に限られている
∵・計算のみを扱っている
∵・提出権が内閣に属する(73条5号、86条)
∵・衆議院に先議権がある(60条1項)
∵・衆議院の再議決制が認められていない(60条2項)
予算と法律の不一致
背景:法律と予算の提出権者、議決手続・要件が異なる
@ 予算は成立したのに、その支出を命じ認める法律が制定されない場合
内閣は法律案を提出し国会の議決を求めるしかないが、国会には法律制定の義務はない
A 法律は制定されたのに、その執行に必要な予算がない場合
補正予算、経費流用、予備費支出(財政法29条、33条2項、35条)のほか、法律の施行の延期等の方法で対処
∵内閣は「法律を誠実に執行」する義務を負っている(73条1号)
(二) 増額修正
マイナス修正はもとよりプラス修正を行うことができる
∵・国権の最高機関としての国会の憲法上の地位
∵・財政民主主義の基本原則
ただし、国会の予算の修正は、内閣の予算提出権を損なわない範囲内において可能
(三) 暫定予算
4 決算審査(p334)
「内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」(90条)
5 公金支出の禁止(p334〜)
89条の趣旨;公金その他公の財産を適正に管理し、民主的なコントロールを及ぼす趣旨
@前段
「宗教上の組織若しくは団体」…特定の宗教の信仰、礼拝、又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体(判例)
A後段
公財産の濫費を防止し、慈善事業の営利的傾向ないし公権力に対する依存性を排除するための規定
→「公の支配に属する」…国または地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りる
II 地方自治(p336〜)
統治機構は民主主義と権力分立原理に基づいて組織される
→地方の政治は住民の自治による
→中央の統一権力の強大化をおさえて、権力を地方に分散させる
地方自治の保障の性質;制度的保障
1 地方自治の本旨(p337〜)
「地方自治の本旨」(92条)
@住民自治…地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義的要素
A団体自治…地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるという自由主義的・地方分権的要素
2 地方公共団体の機関(p338〜)
府県制廃止は立法政策の問題
∵「地方自治の本旨」を生かすために広域化する必要
特別区は憲法上の「地方公共団体」(93条)とは言えない(百選[213]事件)
∵事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とする
3 条例(p339〜)
(一) 性質
条例…地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法
自主法
@自治事務に関する事項
A国家法とは原則として無関係
(二) 範囲と限界
(1) 自治事務に関するものでなければならない
憲法上法律に留保されている事項について条例による規制が可能か
@財産権の内容の規制
許される(奈良県ため池条例事件)
∵条例は住民の代表機関である議会の議決によって成立する民主的立法であり、実質的には法律に準ずる
A罰則
法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりる
B地方税の賦課徴収
許される
∵地方公共団体は自治権の一つとして課税権を有する
(2) 法律に反してはならない
上乗せ条例(法律の定める規制基準よりも厳しい基準を定める条例)の適法性
「法律の範囲内で」(94条)(徳島市公安条例事件、百選[225]事件)
条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規制文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。
@ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合
いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるとき
→条例の規定は国の法令に違反する
A特定事項を規律する国の法令と条例が併存する場合
(i)別の目的+国の法令の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがない
(ii)同一の目的+全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではない
→国の法令と条例との間にはなんら矛盾抵触はない
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