第2章 捜査(p29〜)
第1節 総説(p29〜)
1 捜査の意義(p29〜)
(1) 総説
捜査…犯罪の証拠を保全し、被疑者の身柄を保全すること
捜査の目的
@公訴を提起するか否かの決定をなすこと
A公訴が提起される場合にそなえてその準備をなすこと
q 捜査が許されないのは、いかなる場合か?
a 訴訟条件を具備する可能性が全くない場合には、許されない
@裁判権の不存在(338条1号)
A被疑者の当事者能力の不存在(339条1項4号)
B被疑事件につき、公訴時効が完成したとき(337条4号)
∵公訴提起の余地はないので捜査の必要性が認められない
(2) 捜査の構造
糾問的捜査観…「捜査は、本来、捜査機関が被疑者を取調べるための手続であって、強制が認められるのもそのためである」という考え方
弾劾的捜査観…「捜査は、捜査機関が単独で行う準備活動にすぎない。被疑者も、これと独立に準備を行う。強制は、将来行われる裁判のために(すなわち被告人・証拠の保全のために)、裁判所が行うだけである」とする考え方
現行法における弾劾的捜査観に合致する規定
@199条2項但書
A令状主義の採用
B身体拘束期間を限定
C被疑者に黙秘権あり
D弁護人依頼権あり
当事者主義的捜査観…捜査機関の捜査活動をベースとしながらも、各々の捜査関係者が捜査手続に関与していくという捜査構造
2 捜査の原則(p34〜)
(1) 任意捜査の原則と強制処分法定主義
強制処分法定主義(197条1項但書)…強制処分はそれが法定されている場合にのみ実施しうるという原則
任意捜査の原則…捜査はできるかぎり任意捜査によるべきであるという原則
捜査比例の原則…犯罪捜査は、個人の生活領域を直接干渉する処分であるから、必要性に見合った相当なものでなければならない原則
(2) 令状主義
令状主義(憲法33条、同35条)…何人も、原則として、裁判官の令状がなければ逮捕されることはなく、また住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることはないこと
令状主義の機能
強制処分法定主義を手続上保障する機能(強制処分の適法性の担保を司法部に求める=司法的コントロール)
∴強制処分は、原則として、強制処分法定主義を満たしかつ令状主義の原則を満たすものでなければならない
令状主義の例外
@緊急逮捕(210条)
A現行犯逮捕(213条)
B令状によらない捜索・差押え(220条)
問題1(平成6年第1問)
3 捜査の種類(p35〜)
(1) 任意捜査と強制捜査
q 強制処分(「強制の処分」197条1項但書)?
a 相手方の明示又は黙示の意思に反して、重要な利益の侵害がある場合
(個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段(判例))
q 任意捜査における有形力の行使?
a 個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り、必要性、許容性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される(岐阜呼気検査拒否事件)
q 同意・承諾と任意捜査の可否?
a 任意の放棄を訴追側が積極的に立証した場合にのみ適法
∵官憲の権利放棄要求に屈服しただけという場合も考えられる
※承諾捜索、女子の身体検査は禁止されている(犯罪捜査規範107条、同108条)
(2) 新たな捜査方法
(ロ) おとり捜査
おとり捜査…捜査官が自らまたは民間人の捜査協力者を使って第三者に犯罪をおこなうように働きかけをなし、その第三者が犯罪に出たときにこれを逮捕しあるいは証拠収集をおこなうという捜査方法
おとり捜査の類型
@犯意誘発型:誘惑者が、被誘惑者に働きかけて犯意を発生させて犯罪を実行させる
A機会提供型:誘惑者が、すでに犯意を有している被誘惑者に犯行の機会を提供する
q おとり捜査の許容性?
a @おとり捜査の必要性を基礎づける格別な事情(捜査が困難な犯罪で、被害法益が重大)
A捜査手段の相当性(犯意誘発型のおとり捜査は、人格的自律権を侵害するので許容されない)
q おとり捜査が違法とされた場合の効果?
a @違法収集証拠の排除法則を適用
A公訴棄却
(ハ) コントロールド・デリバリー
コントロールド・デリバリー…取締り当局が、禁制品であることを知りながらその場で押収せず、捜査機関の監視の下にその流通を許容し、追跡して、その不正取引に関与する人物を特定するための捜査手法
(3) 国際捜査
問題2(平成5年第1問)
4 捜査機関(p43〜)
(1) 司法警察職員
警察比例の原則
・司法警察員
・司法巡査
(2) 検察官
検察官の司法警察職員に対する指示あるいは指揮
@一般的指示権(193条1項)
A一般的指揮権(193条2項)
B具体的指揮権(193条3項)
問題3(昭和54年第1問)
5 捜査における被害者の地位(p45〜)
刑事手続の各過程における被害者の地位
@告訴(230条)、被害届を出すことによって、捜査の端緒を提供する
A捜査の過程では、参考人取調べ(223条)、証人尋問(226条、227条)の対象となる
B親告罪では、被害者等の告訴が訴訟条件となる
C告訴をした場合
・処分の通知、不起訴理由の告知を受けられる(260条、261条)
・上級検察庁への不服申立てができる
・検察審査会への審査申立てができる
・職権濫用事件における付審判請求(262条以下)ができる
D公判において証人となる
現行法上、被害者保護に資する規定
@保釈の除外・取消事由の規定(89条5号、96条1項4号)
A被告人の退廷の規定(304条の2、281条の2)
B傍聴人の退廷(刑事訴訟規則202条)
C刑法上の証人威迫罪(刑法105条の2)
平成12 年に被害者保護を目的としてなされた法律の改正と制定の内容
@証人の保護
・証人への付添い(157条の2)
・証人尋問の際の証人の遮へい(157条の3)
・ビデオリンク方式による証人尋問(157条の4)
A性犯罪の告訴期間の撤廃(235条1項1号)
B被害者等による心情その他の意見の陳述(292条の2第1項)
C検察審査会法の一部改正
→犯罪被害者のみならず、被害者が死亡した場合の配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹も申立て可能(同法2条2項)
D犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
・被害者等による傍聴に対する配慮(同法2条)
・被害者等による公判記録の閲覧及び謄写(同法3条)
・民事上の和解を記載した公判調書に対する執行力の付与(同法4条)
問題4
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