第4節 物的証拠の収集(p74〜)

1 総説(p74〜)

捜査機関による物的証拠の収集
@強制処分
・捜索
・押収(裁判所又は捜査機関が証拠物又は没収すべき物の占有を取得する処分 99条)
 ・差押え(物の占有を強制的に取得する処分 99条1項・218条1項・220条1項・222条1項)
 ・領置(遺留物や任意提出物の占有を取得する処分 101条・221条・222条1項)
 ・提出命令(差押えの対象となる物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずる裁判 99条2項・100条1項2項)
・検証
・鑑定
A任意処分
・実況見分

総則で裁判所による証拠収集規定を規定し(99条以下)、捜査機関の捜査活動についてこの裁判所の規定を準用する(222条等参照)

@令状には、捜索する場所・差し押える物の特定性が要求される(219条1項)
A令状を発布するについては、捜索・差押えの必要性も考慮される
∵物的証拠の強制収集は、財産権および住居のプライバシーなどの国民の基本的権利を侵害する


2 捜索・差押え(p75〜)

(1) 令状による捜索・差押え

捜索…一定の場所、物または人の身体について、物または人の発見を目的として行われる強制処分

捜査機関は、裁判官の発する令状により、捜索または差押えをすることができる(218条1項)
※捜索令状と差押令状は、捜索差押許可状として一括して発付される場合が多い

差押えの対象;「証拠物又は没収すべき物と思料するもの」(99条1項)であって有体物と解されている

押収拒絶権が認められる場合
@公務上の秘密(103条、104条、222条1項)
A業務上の秘密(105条、222条1項)


(イ) 捜索・差押えの要件

令状による捜索・差押えの認められる要件
@被疑者又は被告人が、罪を犯したと思料されること(規則156条1項参照)
A証拠等の存在の蓋然性
B犯罪の態様・軽重、差押物の証拠としての価値・重要性、隠滅・毀損のおそれの有無、差押えを受ける者の不利益の程度など諸般の事情に照らして相当であること


(a) 場所の明示

q 場所の範囲?
a 居住場所の管理権の個数を基準として画定する
∵特定の目的が住居権の保護にある

q 場所に対する捜索令状によって、その場にいる人の身体を捜索できるか?
a 原則→許されない
  例外→人がその場所にある
∵捜索対象として場所と身体とは区別されており、身体に対する利益は場所に対する利益は場所に対する利益よりも重大

q 人の携帯物に対する捜索は可能か? a 捜索令状の捜索場所に居住する人の携帯物については、これを居室の備品や附属物として令状の効果が及び、これを差し押さえることができる ∵捜索場所に居住する者は、被疑者・被疑事件と関係があって、差押目的物を所持しているとの疑いが生じるから、その者の携帯物への捜索の必要性は大きい その場に偶然居合わせた者の携帯物に対する捜索は可能か 捜索対象を「場所」とは別に「物」を分けて規定していることからすれば、第三者の管理下にある物については、別個の令状が必要と解すべきである しかし、捜索場所に居合わせた者が自己の身体内に捜索目的物を隠匿したことが明らかなときや、隠匿していると認めるに足りる合理的理由のあるときには、原状回復措置の一環として例外的に許容されるべき 物の明示として許される記載の限界 特定の差押え物を列挙した後に、その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件と記載することは有効 ∵逮捕を先行させて証拠収集をおこなう方法は自白強要のおそれがあり、むしろ捜索を先行させて逮捕を後行させる方が望ましい 219条1項は、捜索差押令状に「罪名」の記載を要求するが、この罪名として罰条の記載まで要求されるか 特別法令については、法令の記載だけで足りる ∵憲法35 条は捜索・差押えについて令状が正当な理由に基づいて発せられたことを明示することまでは要求しておらず、その令状に罪名を記載するに当たっては適用法条の記載まで要求していない 別件捜索差押えとは 専ら本件について証拠を発見・収集する目的で、ことさら捜索・差押えの理由と必要性がないか又は乏しい別件により捜索・差押えを行うこと 別件捜索・差押えの許否 捜査機関がもっぱら別罪の証拠に利用する目的で、別罪証拠を差し押さえることは違法 ∵形式的には裁判官の司法審査を経ているが、実質的には本件についての司法審査を経ずになされていると解されるため、令状主義を潜脱する違法な捜査活動といえる 別件捜索・差押えの基準 @捜査機関の主観的意図 A捜査の客観状況 令状による捜索・差押えを行っている際に、令状に記載のない、他の犯罪に関係があると認められる証拠物が発見されたとき、捜査機関が採り得る方法 @その証拠物について所有者などから任意提出を求め領置する(221条) A発見された物の所持が違法である場合には、その所持者と認められる者を現行犯逮捕して、逮捕の現場における捜索・差押え(220条1項2号)を行う B現場に看守者を残して、その証拠物について新たに捜索差押令状を請求し、それにより差押えを行う(222条1項・112条) 電磁的記録物に対する捜索差押え @被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、 Aその場で内容を確認していたのでは記録された情報が損壊される危険があるときは、内容を確認することなくパソコン、フロッピー・ディスク等を差し押さえることが許される 差押許可の裁判自体に対する準抗告は認められるか 肯定 ∵429条1項2号の「押収……に関する裁判」には捜査機関の請求による差押令状の発付は含まれる (2) 令状によらない捜索・差押え 令状によらない捜索・差押えの根拠 ・逃亡の防止 ・証拠破壊の防止 ・証拠存在の蓋然性 ・逮捕者の身体の安全(緊急処分説) ∵令状主義 「逮捕する場合」(220条1項)とは 現に被疑者を逮捕するという状況の存在が必要 「逮捕の現場」(220条1項2号)とは、どの程度の空間的広がりをいうのか 被逮捕者の身体及びその直接の支配下にある範囲に限られる 逮捕の場所からある程度離れた警察署において被逮捕者の身体や所持品の捜索・差押えがなされた場合、その警察署は「逮捕の現場」といえるか 被疑者の身体には証拠の存在する蓋然性が高く、また、新たな権利侵害の危険を発生させないことから、被疑者の名誉の保護、交通の混乱の防止の必要性が認められれば肯定し得る (3) 領置 3 検証・鑑定 (1) 検証 検証とは 五官の作用によって物の状態を認識する処分 身体検査の3つの種類 @身体の捜索(218条1項前段、222条1項、102条)  着衣のまま外部から行う外部的検査に限られる A検証としての身体検査(218条1項後段、222条1項、129条)  直接強制も可能であるが(222条1項・139条)検証としての身体検査は、対象者を裸にして体表・体腔を検査するのが限度 B鑑定としての身体検査(168条) 専門家が行うのである程度の身体内部への侵襲(血管からの血液の採取等)も認められるが、直接強制は認められていない(225条4項が準用する168条6項は139条を準用しておらず、また225条4項は172条を準用していない (2) 鑑定 鑑定とは 特別の知識経験を有する者による、事実の法則又はその法則を具体的事実に適用して得た判断の法則 4 科学的捜査 (1) 写真撮影・ビデオ撮影 写真撮影の法的性質 原則→強制処分(個人のプライバシーを侵害する) 例外→公道における写真撮影 公道における写真撮影の要件 @行為の現行犯性 A証拠保全の必要性と緊急性 B撮影方法の相当性(京都府学連事件) ビデオ撮影の要件 @犯行の相当高度の蓋然性があり、 A証拠保全の必要性、緊急性及び B撮影方法の相当性があれば適法 (2) 体液の採取 強制採尿の許否 @被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、 A犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、 B最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許される 強制採尿が許容され得るとした場合、いかなる手続を採るべきか 捜査機関が強制採尿をするには捜索差押令状によるべきであり、右令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である 採尿のために採尿場所まで強制連行することは可能か 任意同行が事実上不可能と認められる場合に、採尿に適する最寄りの場所へ、必要最小限度の有形力の行使であれば、「強制採尿令状の効力」として連行できる 強制採血を行うにつき、いかなる手続をとるべきか 鑑定処分許可状(225条3項)と身体検査令状(218条1項)併用説 (3) 通信傍受 通信傍受とは 公開を望まない人の会話をひそかに聴取又は録音すること 盗聴行為の法的性質 私的な会話・通話の自由はプライバシーとして憲法上保障されており(憲法13条、同21条)、盗聴はこれを侵害するものとして強制処分に当たる 盗聴行為は適法か 法制定前→盗聴は厳格な手続の下で認められるにすぎない 通信傍受法が制定された後→同法の許容する範囲で盗聴は適法 秘密録音の許否 原則→違法 例外→録音の経緯、内容、目的、必要性、侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容される(三里塚闘争会館事件) 相手方の同意を得ないで相手方との会話を録音したテープの証拠能力 @被告人から詐欺の被害を受けたと考えた者が、 A被告人の説明内容に不審を抱き、 B後日の証拠とする場合には適法



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