第6節 被疑者の防御権
1 総説
捜査段階における被疑者の防御準備権にとって、重要な権利
@黙秘権
A身体解放請求権
B弁護人の援助を受ける権利
C接見交通権
D証拠の収集保全権・開示請求権
2 被疑者の黙秘権
(1) 黙秘権の根拠
黙秘権の根拠
憲法38条1項
→198条2項(被疑者の黙秘権)
311条1項、291条2項(被告人の黙秘権)
自己負罪拒否特権とは
供述の強要から保護される人の法的地位
※「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」(憲法38条1項)として憲法上保障される
∵たとえ真に罪を犯した者であっても、自分が有罪になる供述をなすべき義務を法律で負わせることは、人格を尊重する上から許されない
自己負罪拒否特権の効果
@供述義務を課すことの禁止
A証拠禁止
B不利益推認の禁止
(2) 黙秘権の内容
被疑者が黙秘できる範囲
刑事責任を問われるおそれのある事項に限られず、氏名や住所を含む一切の事項に及ぶ
※判例は、氏名の黙秘権を認めない
ポリグラフ検査は、黙秘権を侵害しないか
同意なくして行うポリグラフ検査は、黙秘権を侵害する
∵生理的変化は独立に証拠となるのではなく、発問(供述的性格を有する)との対応で意味を持つのであるから尋問の性格を否定し得ず、黙秘権が及ぶ
黙秘権の効果
@黙秘権を侵害して録取された供述には証拠能力が認められない
A黙秘したことを不利益に推認することは、原則として許されない
B黙秘したことを量刑上しん酌することは許される
黙秘の事実を、量刑上不利益な資料として考慮してよいか
自白は反省・悔悟を強く示す手掛かりであるから、そのような手掛かりとして自白を量刑上有利に考慮し、その反面、黙秘している被告人が結果的に重く量刑されるのはやむを得ない
3 被疑者の弁護権(p113〜)
(1) 弁護権の意義
弁護権とは
被疑者・被告人が弁護人を依頼し、弁護人から有効な弁護を受けることのできる権利
弁護人の役割
@訴訟代理人としての役割
A保護者としての役割
∵検察官と被告人とでは、法律知識や資料収集の能力等で大きな差がある
→実質的な当事者主義を図る
弁護人の存在意義
@一般に、被疑者・被告人は法律上の知識に乏しく、訴訟上の主張・立証のためには「代理人」が必要となる
A刑事訴訟法は当事者主義を採用している以上、被訴追者という弱いあるいは危険な地位にある被疑者・被告人の権利を保障し、実質的に当事者主義を確保するために、弁護人が「保護者」の役割を果たすことも必要となる
(2) 弁護人依頼権
弁護人依頼権の保障
憲法34条(身柄を拘束された被疑者の弁護人依頼権)
→法30条1項(被疑者は身柄拘束の有無を問わず弁護人選任権を有する)
(3) 弁護の機能
4 接見交通権
(1) 総説
接見交通権(39条1項、80条、207条1項)とは
被疑者又は被告人が弁護人又はその他の者と接見し、又は書類若しくは物の授受をする権利
接見交通権の意義
現行法は、当事者主義を採用(256条6項、298条1項、312条1項等)
しかし、被疑者は法律知識に乏しく、当事者主義の実質化を図るため、憲法34条前段は弁護人依頼権を保障そして、憲法34条前段は弁護人の実質的で有効な援助を受ける権利にまで及ぶ
∴接見交通権は憲法の保障に由来する(安藤・斎藤事件)
任意同行中の弁護人との接見
被疑者が任意同行に引き続いて取調べを受けている場合に、弁護人から面会の申し出があれば、取調べを中断して、その旨を被疑者に伝え、被疑者が希望すれば面会の措置をとるべきである
(2) 接見交通権と接見指定権
指定制度による接見交通権の制限(39条3項)の趣旨
弁護と捜査が鋭く対立する場面において、一方で被疑者に接見交通権を認めるとともに、他方で捜査機関の側に指定権を与えて、両者のバランスを図る
「捜査のため必要があるとき」(39条3項)の意義
現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要がある等捜査の中断による支障が顕著な場合(杉山事件)
∵接見交通権が憲法上の権利(憲法34条)であるのに対して、捜査機関の捜査は刑訴法上の権利(189条2項)であるから、前者が優位すべき
∵接見交通権の重要性にかんがみれば、これを制約する「捜査の必要」性は、できる限り限定的に解すべき
逮捕直後の初回接見
たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきである
5 被疑者の証拠保全請求権
被疑者の証拠保全請求権の内容
@あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、
A第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収・捜索・検証・証人尋問・鑑定の処分を請求できる(179条1項)
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