第3節 公訴権と訴訟条件(p145〜)
1 公訴権と応訴権(p145〜)
(1) 公訴権
検察官の訴訟追行権→公訴権
被告人の訴訟追行権→応訴権
裁判所→裁判権
(イ) 公訴権の意義
公訴権…公訴を提起し、これを維持する検察官の権限
q 公訴権論?
a 実体的審判請求権説(裁判所に有罪か無罪かの実体判決を請求する権利)
(ロ) 公訴権の要件
q 犯罪の嫌疑は公訴権の前提要件となるか?
a 修正された実体的審判請求権説→肯定
(2) 応訴権
(3) 公訴権濫用論
公訴権濫用論…公訴権の行使に濫用がある場合には、手続を打ち切るべきであるという主張
∵不当な公訴提起に対して、これをチェックする制度を現行法は設けていない
公訴権濫用論の類型
@嫌疑なき起訴
A起訴猶予相当の起訴
B違法捜査にもとづく起訴
q 嫌疑なき起訴が公訴権の濫用に当たるか(嫌疑の存在は訴訟条件か)?
a 肯定
∵嫌疑なき起訴は違法
q 検察官の裁量の逸脱が公訴提起を無効ならしめる場合?
a 公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる(チッソ川本事件)
q 違法捜査に基づく起訴が公訴権の濫用に当たるか?
a 当たる場合がある
∵違法捜査によって収集された証拠の排除だけでは十分でない強度の違法がある場合や、証拠採取と結び付かない処分であるために違法収集証拠排除法則が有効に働き得ない場合には、公訴を無効とすべき
2 訴訟条件(p150〜)
(1) 訴訟条件の意義
訴訟条件…訴訟手続を有効に成立させ、これを継続させるための条件
訴訟条件は、公訴提起のはじめから実体審理をへて実体判決にいたるまで、訴訟手続のすべての段階において備わっていなければならない
(2) 訴訟条件の種類
(イ) 法定訴訟条件
少年事件については保護処分が優先される
q 捜査官がことさら捜査を遅らせあるいは事件処理を放置したため少年法が適用されなくなった場合の措置?
a 捜査官の措置は違法
そのために公訴提起の効力が当然に失われるものではない
(ロ) 非典型的訴訟条件
(ハ) 訴訟条件の判断
@訴訟条件の存否の判断は、原則として、裁判所の職権調査事項
A訴訟条件存否の判断が、犯罪事実を基準としておこなわれる場合には、訴因を基準として判断される
(3) 公訴時効
(イ) 総説
公訴時効…一定の期間経過によって公訴の提起ができなくなる制度
q 公訴時効制度の根拠?
a 可罰性の減少と証拠の散逸
(ロ) 時効期間
公訴時効の起算点→犯罪行為が終わった時(253条1項)
q 結果犯の起算点?
a 結果発生の時
∵結果が発生して初めて処罰可能の状態に達する
q 観念的競合事件の公訴時効は?
a 公訴時効は個別に進行する(個別説)
∵観念的競合は本来数罪←公訴時効は個人保護の制度
共犯の場合の起算点→共犯者の最後の行為の終わった時からすべての共犯者に対して時効期間を起算する(253条2項)
※時効期間そのものは別々に考える
(ハ) 公訴時効の停止制度
公訴時効の停止制度…一定の事由により公訴時効の進行が停止し、停止事由が消滅した後に残存期間が進行する制度
q 起訴状不送達の場合の公訴時効停止効の存否?
a 254条1項は、起訴状謄本の不送達による公訴棄却の場合にも適用される
∵起訴が不適法でも公訴時効は停止するという一般原則にしたがう
q 訴因不特定の場合の公訴時効停止効の存否?
(訴因が不特定のときは338条4号で公訴棄却とされるが、公訴提起によって公訴時効は停止するか?)
a 訴因が不特定でも、特定の事実について検察官の訴追意思の表明が認められるときは時効は停止する(判例)
q 時効停止効の客観的範囲?(「当該事件」(254条1項)の意義)
a 公訴事実の同一性の範囲(判例)
∵訴因変更を媒介にして「公訴事実の同一性」(312条1項)の範囲で可罰性の減少と証拠の散逸が防がれる
q 停止の主観的範囲?
a 原則→被告人のみ
∵人違い起訴によっても無罪証拠については散逸する
∵254条2項は、共犯者間の不公平を避けるための特則
例外→他人と共謀して身代わりとした場合(254条2項準用)
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