第5節 公判手続
1 公判廷
(1) 公判廷の構成
被告人が出廷していなくても開廷できるか
原則として、被告人が出頭しなければ公判は開廷できない(286条)
∵被告人の公判廷の出頭は被告人の権利であり、義務
被告人は、任意に退廷できるか
被告人は裁判長の許可がなければ退廷することはできない(288 条1 項)
∵公判出頭は被告人の義務
被告人が出頭しなくても開廷できる場合
@被告人が法人の場合(283条)、責任能力の規定を適用しない事件の場合(28条)
A軽微事件の場合(284条、285条)
B被告人が心神喪失の状態にあるときで、無罪・免訴・刑の免除・公訴棄却の裁判をなすべきことが明らかな場合(314条1項但書)
C召喚を受けた勾留中の被告人が、正当な理由なく出頭を拒否し引致を著しく困難にしたとき(286条の2)
D被告人が許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため退廷させられたとき(341条)
E証人が被告人の面前では圧迫を受け十分な供述ができないとして一時退廷させられたとき(304条の2)
弁護人の出頭は開廷の要件か
一般には公判開廷の要件ではないが、いわゆる必要的弁護事件については、その出頭が開廷の要件となる(289条)
(2) 公判廷の用語
(3) 訴訟指揮・法廷警察
訴訟指揮権とは
訴訟の進行を秩序付け、適切な審判を実現させるために裁判所に認められた権限
法廷警察権とは
訴訟に対する妨害を排除し、法廷の秩序を維持する裁判所の権限
法廷警察権はだれの権限か
裁判長の権限とされている(裁判所法71 条)
∵法廷警察権は、適切な措置を迅速に採る必要がある
2 公判手続
(1) 冒頭手続
冒頭手続の段階
@人定質問(規則196条)
A起訴状朗読(291条1項)
B権利告知(291条2項)
C被告人・弁護人の陳述(291条2項)
(2) 証拠調べ手続
証拠調手続の流れ
検察官の冒頭陳述(296条)
→被告人、弁護人の冒頭陳述(刑事訴訟規則198条)
→犯罪事実に関する検察官の立証
@検察官の証拠調請求(298条1 項、刑事訴訟規則189条)
A被告人又は弁護人の意見(刑事訴訟規則190条2項)、書証についての同意・不同意(326条)
B証拠決定(刑事訴訟規則190条1項)
C証拠調べの範囲・順序・方法の決定、変更(297条)
D証拠調べの実施(304条〜307条)
E証拠調べに関する異議の申立て(309条)
F証拠調べを終わった証拠書類、証拠物の提出(310条)
その後の手続の流れ
@犯罪事実に関する被告人又は弁護人の立証
→証拠の証明力を争う機会(308条、刑事訴訟規則204条)
A被告人調書等の請求、取調べ(301条)
B被告人質問(311条2項・3項)
→証拠の排除決定(刑事訴訟規則207条)、職権証拠調べ(298条2項)
C情状に関する立証
証拠能力のない場合、その証拠はどうなるか
証拠能力のない証拠を事実認定に用いてはならないことはもちろんであるが、証拠調べをすることも許されない
∵無意味であるばかりか事実上裁判官の心証形成に影響を及ぼすおそれがある
(3) 弁論
弁論とは
被告人及び弁護人がする意見陳述(293条2項)
※被告人側の弁論は、最終陳述権として保障される(刑事訴訟規則211条)
論告とは
証拠調べが終わった後、検察官が、事実及び法律の適用について意見を陳述すること(293条1項)
求刑とは
論告で有罪を主張するときに、具体的な刑の量定について意見を述べること(実務上の慣行)
(4) 判決
3 公判手続の態様
(1) 簡易公判手続
簡易公判手続とは
罪状認否手続において、被告人が、有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人及び弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあった訴因に限り、簡易公判手続によって審判する旨の決定をすることができるとする制度(291条の2)
趣旨;公訴事実について争いのない事件について、原則として伝聞法則を適用せず、証拠調べを簡略化して、この種の事件にふさわしい簡易迅速な審理を可能にする
(2) 公判手続の停止・更新・再開
公判手続が停止される場合
@被告人が心神喪失状態のとき(314条1項)
A被告人が病気で出頭できないとき(同2項)
B重要証人が病気で出頭できないとき(同3項)
C訴因又は罰条の追加・変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれのあるとき(312条4項)
公判手続の更新が必要な場合
@開廷後、裁判官がかわったとき(315条)
A被告人の心神喪失により公判手続を停止したとき(刑事訴訟規則213条1項)
B簡易公判手続による旨の決定が取り消されたとき(315条の2)
(3) 弁論の分離・併合
4 公判調書
公判調書の証明力
公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによって証明することができる(52条)
※証明力が法定されるので、広い意味の自由心証主義の例外となる
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