第3節 証拠の許容性(p295〜)
1 総説(p295)
証拠能力…証拠となりうる資格
証拠能力の要件
@自然的関連性があり、
(証明しようとする事実に対する必要最小限度の証明力)
A法律的関連性もあり、
(証明力の評価を誤らせる事情がないこと)
B証拠禁止にあたらないこと
証拠能力が問題とされる場合
@関連性の法則
A自白法則
B伝聞法則
C違法収集証拠排除の法則
証明力…事実を認定させるための証拠の価値
2 証拠の関連性(p295〜)
(1) 悪性格の立証
q 被告人の犯罪事実を立証するために、被告人の悪性格を立証することはできるか?
a 原則→許されない
∵犯罪事実との自然的関連性がない
∵法律的関連性がない(裁判官に不当な偏見を与え、公平な裁判(憲法37条1項)を害するおそれがある)
例外→@すでに犯罪の客観的要素が立証されているときに、犯罪の故意などの主観的要素を立証する場合
A犯罪の手口などの態様にきわだった特徴がある場合
q 余罪を量刑上考慮できるか?
a @実質上余罪を処罰する趣旨で量刑の資料とすることはできない
A単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料として考慮することは許される
∵量刑は被告人のすべての事情を考慮して裁判所が決定できる
(2) 科学的証拠
(イ) ポリグラフ検査
ポリグラフ検査…一定の質問に対する被疑者の応答にともなう脈拍、呼吸、発汗という生理的変化を記録して、被疑者のうそを発見しようとする検査
q ポリグラフ検査における自然的関連性の有無?
a @使用器具の性能、操作技術等の信頼性が高いこと、
A検査者が検査に必要な技術と経験を有する適格者であること、
B被検査者が検査を受けることに同意したこと、
C検査回答書は検査者が自ら実施した検査の経過及び結果を忠実に記載して作成したものである場合に肯定
∵検査機械が統一規格化されており、科学警察研究所により指導育成された技術者によって行われる
伝聞法則との関係では、321条4項に準じて、検査者を証人尋問して、その証拠能力を判定する
(ロ) 警察犬による臭気選別検査結果
q 警察犬による臭気選別検査結果に自然的関連性があるか?
a @専門的な知識と経験を有する指導手が、
A臭気選別能力がすぐれ、選別時においても右能力のよく保持されている警察犬を使用して実施し、
B臭気の採取、保管の過程や選別の方法に不適切な点がない
伝聞法則との関係
・指導手が作成した書面→鑑定受託者による鑑定書の一種として321条4項の書面に準じる
・選別実験に立ち会った警察官が実験の経過と結果を記載した書面→実況見分調書の一種と見て321条3項の書面に準じる
(ハ) 声紋鑑定
q 声紋鑑定に自然的関連性があるか?
a @検査の実施者が必要な技術と経験を有する適格者であり、
A使用した器具の性能、作動も性格でその検定結果は信頼性あるものと認められるときは
Bその検査の経過および結果についての忠実な報告には、証拠能力を認めることを妨げない
(ニ) DNA鑑定
DNA鑑定…人の細胞内に存在するDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列を鑑定対象として、個人識別をおこなうもの
q DNA鑑定を証拠として利用できるか?
a @その科学的原理が理論的正確性を有し、
Aその技術を習得した者により、
B科学的に信頼される方法で実施された場合は、証拠とすることができる(足利幼女殺害事件)
※証拠価値につき、その後の科学技術の発展により新たに解明された事項等も加味して慎重に検討されるべき
3 違法収集証拠の排除法則(p300〜)
(1) 総説
違法収集証拠の排除法則…違法に収集された証拠の証拠能力を否定する原則
問題点
押収物は押収手続が違法であったとしても物自体の性質、形状に異変を来す筈がないから其形状等に関する証拠たる価値に変わりはない
→真実の発見を問題とする証明力から適正手続を問題とする証拠能力へという視点の展開
(2) 排除法則の根拠と排除基準
q 違法収集証拠の排除基準?
a @令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、
Aこれを証拠として許容することが、招来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定される(大阪覚醒剤事件)
∵違法収集証拠の利用は適正手続に反する
∵違法収集証拠の使用は司法に対する国民の信頼を裏切る
∵将来の違法捜査の抑止のためには違法収集証拠の排除が最善の方法
(3) 排除法則の限界
毒樹の果実の理論…違法捜査によって発見された証拠にもとづいて、さらに発見された証拠(派生的証拠)も排除される
q 毒樹の果実の基準?
a @違法の程度とA両証拠間の関連性を基準として判断すべき
希釈化の法理…最初の違法捜査と証拠との因果関係が希薄になっている場合には、証拠能力を認めてよいという法理
独立入手源の法理…派生的証拠が独立の捜査活動から得られた場合にも、証拠能力を認めてもよいという法理
∵捜査との因果関係がない
排除法則の例外
@不可避的発見の例外(たまたま一部の捜査官が違法捜査をなしたが、彼がその捜査をしなくてもいずれ他の捜査官が適正捜査を進めてその証拠に達したはずだという場合には証拠は排除されない、とするもの)
A善意の例外(違法捜査をした捜査官がその手続の合法性を信じていた場合には証拠は排除されない、とするもの)
∵証拠を排除しても違法捜査の抑止的効果はない
q 証拠排除を申し立てる資格は、違法捜査を受けた者に限られるか?
a 第三者の申立て適格も肯定すべき
∵司法の廉潔性あるいは違法捜査の抑止の観点
q 被告人の同意?
a 原則→有効
例外→権利侵害が重大な場合
刑事訴訟法・目次へ