第4節 自白法則(p306〜)

1 自白の証拠能力(p306〜)

(1) 総説

(イ) 自白法則

自白…自己の犯罪事実の全部またはその重要部分を認める旨の被告人の供述
※自白には、構成要件該当事実を認めながら正当防衛を主張する場合も含む

自白法則(広義)の内容
@自白の証拠能力が制限されている(憲法38条2項、法319条1項)
Aその証明力も制限されて補強証拠が要求されている(憲法38条3項、法319条2項3項)

自白の危険性
@自白させるにあたっての人権侵害のおそれ
A自白による誤判を招くおそれ


(ロ) 自白の証拠能力を制限する根拠

q 自白の証拠能力を制限する根拠?(「任意にされたものでない疑のある自白」(319条1項)の意義)
 反対説 任意性説(虚偽排除説+人権擁護説)
 批判 供述者の主観的な心理状態を基準とするので任意でないという認定が困難となる
a 違法な手続により得られた自白は排除される(違法排除説)
∵違法収集証拠の排除法則
 →違法な手続を抑止するために、違法な手続にもとづく自白であれば自白は排除される
 (自白排除の基準を、自白それ自体に求めるのではなく、その一歩手前の自白採取手続の違法性へと遡らせる)


(2) 自白の証拠能力の限界

自白の証拠能力が否定される場合
@強制・拷問・脅迫による自白
A不当に長い抑留・拘禁後の自白
B任意性に疑いのある自白

q 偽計による自白は排除されるか?
a 肯定
∵偽計(特に切り替え尋問)によって被疑者が心理的圧迫を受け、その結果虚偽の自白を誘発させるおそれがある


2 自白の証明力(p312〜)

(1) 総説

(イ) 自白の証明力の制限

補強法則…被告人を自白だけで有罪とすることはできず(憲法38条3項、法319条2項3項)、自白を補強する証拠(補強証拠)が必要とされること
∵虚偽の自白によって被告人を有罪とする危険

自白の証明力評価についての手続的な制約
自白の取調べは、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ、その請求をすることはできない(301条)

(ロ) 自白の意義

q 憲法上、公判廷自白に補強証拠が要求されるか?
a 肯定


(2) 自白の補強法則

(イ) 補強の範囲

q 自白の補強証拠は、犯罪事実のいかなる範囲について必要となるか?
 反対説 実質説(自白にかかる事実の真実性を担保するに足りるものであればよい)
 批判 補強の範囲を裁判所の自由心証にゆだねるに等しく、補強証拠の趣旨に反する
a 罪体説(犯罪事実の客観的側面の主要部分について補強証拠が必要)
∵補強法則の趣旨(虚偽の自白によって被告人を有罪とする危険を防止)
 →補強の範囲はできるだけ客観化された基準により定められるべき
@覚せい剤所持罪などにおける法定の除外事由がないこと→補強証拠は要しない
A無免許運転の事実を認定するにあたって、運転免許を受けていなかったという点→補強証拠を要する

q 罪体の内容に犯罪行為者と被告人との同一性まで含まれるか?
a 否定
∵肯定するとあまりに有罪が困難となり、偶然に左右される弊害が生じる

q 犯罪の主観的要素について補強は必要か?
a 不要
∵立証の困難性


(ロ) 補強の程度

q 補強証拠にどの程度の証明力が要求されるか?
a 絶対説(補強証拠自体の証明力の程度を問題とする)
∵個々の自白の証明力いかんとはかかわりなく要求される補強法則の本質
∵特に法廷外の自白については、301条により事前取調べの必要がある


(ハ) 補強証拠能力

q 補強証拠能力?
a @証拠能力ある証拠で、A被告人の供述以外の証拠に補強証拠能力が認められる
∵誤判の防止、自白強要の抑止

被告人の日記帳、備忘録、メモ等については、捜査を意識しないで作成されたものであれば補強証拠能力を認めることができる


(3) 自白の証明力

秘密の暴露…捜査官の知りえなかった事実で、捜査の結果事実であることが確認されたもの


3 共犯者の供述(p317〜)

(1) 共犯者の供述の証拠能力

(イ) 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述の証拠能力

q 共犯者たる共同被告人が黙秘権を行使した場合における共犯者の供述の証拠能力?
 反対説 証拠能力肯定説(判例)
 批判 反対質問(311条3項)に対しては黙秘権を行使できる(311条1項)のに、証拠能力を認めるべきでない
a 限定的証拠能力肯定説(被告人の事実上の反対質問が十分に行われたときにかぎり、証拠能力を認める)
∵被告人の反対尋問権の保障(311条3項)と共同被告人の黙秘権の保障(311条1項)との調和

反対質問に対して黙秘権が行使された場合には、その供述は証拠排除(規則207条)される


(ロ) 共犯者たる共同被告人の証人適格

q 共犯者たる共同被告人が公判廷で供述し、被告人の反対質問に対して黙秘権を行使した場合に、共犯者たる共同被告人を証人尋問することができるか?
a 否定
∵黙秘権侵害の疑いがある

q 共同被告人を手続を分離して証人尋問することの可否?
 反対説 肯定(判例)
 批判 有罪判決を受けるおそれがあるという理由で証言を拒否するのは自己の罪を認めるに等しい。しかし、そこで拒否しないで証言すれば、偽証の罪の制裁の下に、反対尋問によって自白が強制されることになる
a 否定(反対尋問権は反対質問(311条3項)の限度で保障する)
=@起訴事実またはこれに関連する事実で被告人に異議のない場合
 A共犯者のみに関係する事実について証言する場合には、手続を分離して証人尋問をすることができる
∵黙秘権は証人尋問権に優先する


(ハ) 共犯者の公判廷外供述の証拠能力

q 共犯者の公判廷外供述の証拠能力?
a 原則→否定(320条1項 伝聞調書)
  例外→伝聞例外(321条1項3号)
   ∵被告人から見れば共犯者も「被告人以外の者」
   ∵共同被告人相互間では利益が相反する


(2) 共犯者の供述の証明力

q 共犯者の供述の証明力(補強法則(憲法38条3項、法319条2項)適用の可否)?
a 補強証拠不要説(判例)
  ただし、引っ張り込みの危険があるので、証明力の評価は慎重になすべき
∵自白に補強証拠を必要とするのは、自白が反対尋問を経ないにもかかわらず証拠能力が認められるからであり、共犯者に対しては被告人は反対尋問をおこないうるのであるから、これを同一視することはできない
∵自白した方が無罪となり、否認した方が有罪となるのも、自白が反対尋問を経た供述より証明力が弱い以上、当然であり、不合理ではない

q 共犯者の自白は相互に補強証拠となり得るか?
a 共犯者の自白に補強証拠が不要とする以上、当然に、共犯者の供述が補強証拠になり得る



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